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オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極症)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2023年8月8日火曜日

職場環境の見直しを!!心理的安全性と言う環境評価

 近年、働く環境を評価する上で重要視され始めてきているのが「心理的安全性」と言う考え方である。


心理的安全性とは…
ハーバード大学の、アン・マリー・エドモンドソンと言う方がその概念を提唱した。「チームメンバーが、自分の意見やアイディアを自由に言い、リスクを恐れずに行動できる環境」と定義されている。実は1960年代ごろより議論されている古い言葉ではあるが、1999年にアン教授が改めて提唱するようになった。

「心理的安全性が高い」というのは、チームメンバーが自分の失敗や間違いを恐れずに発言することができる状態である。そのため、チーム全体のアイディアやノウハウが共有され、新しい発想や解決策が生まれやすくなり、またメンバーは失敗を恐れずに挑戦できるため、チーム全体の成長やイノベーション(技術革新)が促進される。

この言葉が話題になったのは、2012年に“かの”Google社が、チームの効果性を四半期ごとの売上ノルマ(定量指標)とその要因(定性評価)を組み合わせて調査した結果、『チームの売上に貢献する要素で最も重要なのは心理的安全性であった』と発表したことである。


「心理的安全性が高い・低い」というものは定性的な評価になるので、なかなかご自身の職場や部署がどうであるか、とは言いにくい部分があるかもしれない。また、ある人にとっては心理的安全性が高いと感じていても、ある人にとっては低いというように、評価が分かれる可能性もある。

また、企業や団体で言うと「部署としては心理的安全性が高いけど会社全体では心理的安全性が低い」と言うような、ねじれ現象が起こる可能性がある。部署内では、活発な意見交換や新しいアイディアなどが生まれているが、幹部間ではコミュニケーションがとれておらずせっかく良い提案があっても、そこでは心理的安全性が担保されていないため、結局、企業や団体の成長やイノベーションには結びつかない、などの事例もあるだろう。

部署内のチーム単位
部署単位
組織(企業・会社)単位

それぞれの単位ごとに心理的安全性が高くなければ、効果的ではないと言わざるを得ない。

ではなぜ近年になって「心理的安全性」が注目され始めているかと言うと、その背景には『変化の激しい時代』であり『確実な正確が分からない』と言う現代特有の特徴があるからである、と言う意見がある。

つまり激しく変化し続ける時代に合わせた商品やサービスというのは、同様に変化し続けなければならず、それに呼応するように企業や団体も変化し続けなければならなくなったから、と言うことだ。

面白い例えがある。
「100年間、同じ製法で作られ続けてきたお饅頭屋さんにはその製法を継続して守り続ければ良いのであって、そこには“心理的安全性”は必要なく、職人がその技術を伝え続けばそれで良い」


同じものを同じ様に作り続ける事を継続していくことに心理的安全性は必要なく、ただ、脈々と受け継いでいけば良い。逆に言うと、変化し続けるものに対応するためには、それに見合うアイディアや革新的な技術が必要であり、それを生み出すには個々人の思考や考えだけではなくチームで取り組み、かつそのチームの構成員が各々に意見を持ち寄り、より洗練されたアイディアへと昇華させる必要がある。そのためには「心理的安全性」が必要となる。

しかし、これは医療の現場では、今も昔も、あまり変わらないのではないかと思う。

「医学」の歴史は古く、有名なのは紀元前5世紀頃にギリシアで生まれたヒポクラテスである。彼は“医学の父”とも呼ばれるほどで、医学はかれこれ2500年以上も続いていることになるが、今も昔も、医療に関する技術や理論は日進月歩である。そして、治療技術や診断技術は、いつの時代も研究・議論され、そしてその時代その時代で最先端の知見というものを見出してきている。

その最たるものが『学会』であり『学術集会』『学術大会』である。

私も、お恥ずかしながら医療従事者の末端で、学術集会にはオーディエンスとして参加もしたことあるし、発表者として参加したこともある。そこでは、見知らぬ者同士が、それぞれの知見から意見を出し議論し合う。まさしく「心理的安全性が担保された場」での議論である。

しかしおかしなもので、臨床現場に戻ると途端にその、心理的安全性があやしくなる。

以前、このblog記事「医療の現場で働く事の楽しさと闇」で書いたように、どの医療機関でも「派閥」のようなものがあるのは事実である。そこでは大なり小なり「忖度」があり、本当の意味での「心理的安全性が高い」環境であるとは言い難い。

結局のところ、医療の現場であろうが一般企業であろうが、条件は変わらないのかもしれない。


少し、話題を変えよう。
心理的安全性を構成する要因は4つあると言われており、それは「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」である。

前者3つは容易に想像できる単語だが、「新奇歓迎」とはなんぞや?と言うと、
「新奇歓迎とは新しいアイデアや考え方を受け入れ、歓迎する文化や風土」とのこと。

結局のところ、変わり続ける努力と変わり続けることを恐れない態度、そしてそれを良しとする社風や文化、それらが心理的安全性に大きく寄与しているように思えてくる。

どの業界において、でも。

人間は、年齢を重ねるごとに頭が固くなる。私も、そうならないように気を付けているつもりだが、結局のところ、自分自身の経験してきた「成功体験」や「良くない自己肯定感」が邪魔をして、新しいものを受け入れる余地を与えなくなる。


「心理的安全性」というものは、「働く環境の評価基準」のひとつであるが、そこで働く人々の「柔軟性」と「寛容さ」と「向上心」で成り立っているのではないか、と私は考える。

皆さんは、どの様に捉える?

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