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オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極性障害)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2023年8月23日水曜日

これでいいの??薬物関連報道とその法律(依存症関連記事のため閲覧注意)

最近、テレビを賑わせている、某大学運動部の薬物関連事件に関する報道。
少し、思うところがあって、筆を執った。


以下、私は法律家ではないため、全てが正しい情報だとは限らないことを前置きしておく。

薬物関連事案の初犯に対する判決というのは、前科がなくよほど悪質でなければ、両親または被告の近しい“法的に”信頼の置ける人が証言台に立ち情状酌量の陳述が行われる。その後「懲役1年6ヶ月、執行猶予3年」に近いニュアンスの判決が言い渡されるが「執行猶予」が付くわけだから、判決とともに釈放される。


実は、実名報道されるとともにその様な判決が言い渡される事にいくつかの問題点がある。


一つ目は、社会的制裁を受けることだ。

彼らは実名報道され、もちろん大学は「逮捕を受けて、より重い」『除籍』や『部全体の無期限活動停止』となる可能性もある。


また、実名報道された余波はないだろうか?いや、ある。
現在は、ネット社会だ。

各報道機関のネット記事として報道され、1~2年は各報道機関のサーバーに残っているだろう。もしくはそれ以上の長い期間。また、それをネタに『正義』と言う仮面を被ったネトウヨなどの餌食になり、元ネタとなる各報道機関のネット記事を、様々なインターネット関連事業者が運営している「掲示板」や「ブログ」に転記し、各報道機関のサーバーよりも、より長い期間、誰もが簡単に閲覧できる状態で保存されてしまう。

これが二つ目の問題『デジタルタトゥー』だ。


三つ目はアフターフォローの無さだ。

釈放後、彼らが身を寄せる場所は3つ。1つは、年齢を考慮すると身元引受人であるご家両親の元で過ごす事が考えられる。しかし果たして、彼らの家族を「護ってあげるべき存在」「ケアの必要な人達」と見る人はいるだろうか?彼らとその家族は、『世間の目』を避けるようにまた、『何かに遠慮するよう』な生活を強いられるであろう。そして「依存症対策総合支援事業」や「ギャンブル等依存症対策基本法」などが制定されているが、その様な支援に、誰が責任を持って繋げてくれるのだろうか?

他に、彼らに薬物依存に対する正しい理解ががなければ、体外的なメンツを保つためにも、『私達は息子にゼッタイに“薬物”を繰り返させません!!』的な態度を示すために、依存症専門病院への入院や民間のリハビリ施設に入所させるのではないだろう。そうなれば、ある意味「薬物依存症患者」として扱われ、少なくとも病院や施設の職員などが擁護してくれる。それらの施設で、どれくらいの時間を過ごすのか分からないが施設なら1~2年だろうか?病院ならもっと早くて数ヶ月だろう。


私は、その様な状況になる可能性が高いことを考えると、非常に胸が痛いのである。

特にデジタルタトゥーについては、本人が必死で社会復帰に取り組んでいたり、家族もそれを温かく見守っていたり、彼らを助けてあげようとしている一方で、そのような記事が、本人の意図しないところに残っていることを知った時に、彼らの心が折れる。それが怖いのである。

もしかしたら、自死を選ぶかもしれない。
もしかしたら、再び、薬物を手にするかも知れない。
もしかしたら、誰かを恨んでしまうかも知れない。
もしかしたら、精神が壊れてしまうかも知れない。

彼らはまだ若い。「若いからやり直しが効く」などという、気楽なものではない。若いからこそその先は長く、その長い人生を『罪』を背負ったまま生きていくのである。どれほどの苦しみがあるだろうか、どれほどの葛藤があるのだろうか。

想像するだけでも、言葉を失う。

『デジタルタトゥー』を残すことが原因で、その社会復帰の道を閉ざされてしまったりしては、あってはならない。

そう、絶対にあってはならない。


各報道機関は、なぜこの『実名報道』にこだわるのかが疑問でならない。

社会的制裁?
知る権利?
正義感?

また、それらの報道で得られた情報を、誰もが簡単に閲覧できる状態で掲示板やブログに転記する人は、なぜその必要性があると考えているのか、私にはその理由が分からない。


もし薬物依存症を、「犯罪ではなく」キチンと「病気」と捉えるのであれば、そもそも報道する必要がなくなるのではないか。

厚生労働省は薬物依存症を「病気」と認めているにもかかわらず、法律としては犯罪として処罰されると言う矛盾があり、それを余計に混乱させていると考える。


この矛盾を法律上で解消することが、デジタルタトゥーを減らすことに繋がり、結果的に薬物依存症患者の未来の選択肢が増える事になると、私は考える。

2 件のコメント:

  1. コメント失礼致します。薬物依存症患者の復帰を考えた場合一つの考え方ではあります。
    ただし違法行為を行なった現実があります。既に薬物依存にある者ではなく軽い気持ちで新たに薬物に手を出してしまう人が大勢います。
    最初に手を出さないことで薬物依存を防ぐことが可能です。抑止力として厳罰化は必要だと考えます。
    国によっては重罪に問われる国もあります。

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    1. ご意見、ありがとうございます。もちろん最初の1回に手を出さなければいいことなのですが、このブログでの論点は厳罰化というよりむしろ「実名報道への警鐘」と考えていただきたいと思います。記事の中でもお伝えしましたが、実名報道や処罰を受けることで起こる精神的負担や孤立感がどの様な弊害を生むのかを、もう一度考えていただきたいのです。そして「デジタルタトゥー」として「気軽に・誰もが・簡単に」閲覧できる様に記録する必要性を考えていただきたいと思っています。

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