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オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極症)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2023年10月24日火曜日

「チーム・バチスタの栄光」田口先生の専門!不定愁訴

 「チーム・バチスタの栄光」シリーズで出てくる田口医師。
彼は、東城大学医学部付属病院の「不定愁訴外来」別名「グチ外来」の精神科医師です。ボクは、このシリーズが好きで、全ての小説を読破しております。

チーム・バチスタの栄光
ナイチンゲールの沈黙
ジェネラル・ルージュの凱旋
イノセント・ゲリラの祝祭
アリアドネの弾丸
ケロベロスの肖像
カレイドスコープの箱庭
コロナ黙示録
コロナ狂騒録

その他にも「桜宮市」や「東城大学医学部付属病院」に関連する海堂尊さんの作品はいっぱいあり、その作品一つ一つが、実はそれぞれに繋がりをもって物語が広がる面白さがあります。もちろん、医療ミステリーと言う意味でもボクの好きな分野なのですが。


さて、今日のテーマである「不定愁訴」とはなにか

不定愁訴とは…
患者からの様々な訴え、例えば「頭が重い」「肩がこる」「なんとなく食欲がない」「寝た気がしない」「疲労が取れない」などの訴えがあるものの、様々な検査をしてもその原因は見つからず、また、訴えがコロコロとその都度変わり、症状が安定しないことを指し示します。


精神医学や心理学に明るい方であれば「心身症(身体症状症)」と言う言葉を思い浮かべる方もいらっしゃると思います。

心身症(身体症状症)とは…
慢性的な身体症状がみられることに加えて、その症状に関連して不釣り合いに大きな苦痛、心配、日常的な役割遂行の問題がみられることを特徴とします。身体的な病気が否定されてからも依然として症状にとらわれ、心配が続く場合、または身体的な病気に対する反応が異常に強い場合、この病気の診断が下されます。

ただ、上記の図のように心身症の場合は何らかの「診断名」がつくことが殆どですが、不定愁訴にしろ心身症にしろ、原因は「ストレスからくる自律神経系の乱れ」が原因であるだろうと言われています。

つまり、症状としては「身体的な訴え」なのですが、その原因は「心」にあることがとても多く、身体的な症状の訴えばかり注目していても改善していかない特徴を持っています。

心身症と不定愁訴の違いをあえて言うならば、「心身症」はある一定の同じ症状の訴えをするのに対し、「不定愁訴」は症状の訴えそのものに一貫したものがない、と言う特徴の違いがあります。


上記の図のように、心身症には4つの側面から影響を受けているとされており、そのどれか1つが解決しても症状は軽くなりません。言い換えると、自律神経の働きというのは、様々な要因に左右されるため、一筋縄ではいかなんですね。


※ここからのストーリーはあくまでもボクの経験をもとにしたフィクションです。
そしてここでは「心身症」としての一例を挙げますが「不定愁訴」の場合も同じ様な経過をたどることが多いとボクは感じています。


例えば「ひどい肩こり」と言う症状で病院を受診したとします。

みなさんならまず「何科」を受診されますか?

恐らく多くの方が「整形外科」と考えるのではないでしょうか。


整形外科医からは「では首と肩のレントゲンを撮りましょう」となります。しかし、レントゲン上、首にも肩にも異常は見つからなかったとしましょう。整形外科医はとりあえず「痛み止め・湿布・胃薬を2週間続けてみましょう」となると思います。

しかし、症状は改善されず、2週間後、整形外科を受診します。「そうですか…それならば神経の可能性もあるので首のMRIを撮ってみましょう」となります。MRIで首の神経の状態を見ても、たしかになんとなく神経に触っているような所見があったとします。すると整形外科医は「では今までのお薬に加えて神経の通いを良くするお薬を追加で2週間出して見ますね」となり、ビタミン剤などが追加になります。


しかし2週間後、症状は改善しません。むしろ悪化したり症状の範囲が広がっている事も出てくるかも知れません。ここでやっと整形外科医は「もしかしたら心臓の病気の可能性もあります。循環器内科へ紹介状を書きますね」と言う事になり、今度は循環器科へ受診となります。

ここで1つ付け加えておきます。
実は狭心症や心筋梗塞などの病気で、特に左首~左肩~左背中にかけて痛みが出ることがあるんです。


さて、循環器科へ受診しました。「まずは血液検査と心電図を撮りましょう。お時間があれば胸部のCTもお願いします」となることが一般的です。循環器科医は検査結果をひと通り見て「心臓や心臓の血管には問題なさそうですね」「ではもう少し神経の病気を見てもらうために神経内科を紹介します」となり、今度は神経内科を受診することになりました。


神経内科では、今までの整形外科医や循環器科医の検査結果や診断を一通りみて、「じゃあとりあえず脳のMRIとCTを撮りましょう。そしてもう一度血液検査をお願いします」となります。

ここで1つ。
一言で「血液検査」と言っても検査する項目は非常に多くあり、「循環器疾患に関係する項目」「脳神経疾患に関係する項目」などあるため、何度も血液検査をすることも珍しくありません。

神経内科の医師はMRI・CT・血液検査の結果を一通りみて「どうやら神経の病気ではなさそうですね」「もう一度、整形外科の先生と相談してもらってリハビリしてみてもらってはどうでしょうか」となります。


“となります”で締めくくっていますが、最終的に原因は分からないまま「とりあえずリハビリ」と言う処方が出来上がることもあります。

このお話しは「フィクション」と書きましたが、実際にこういうやり取りがなされることもあり、本当は社会・環境面や心理・性格傾向など、いわゆる「検査」ではあぶり出すことのできないことが根底にあるにもかかわらず、そこに着目した治療がなされないため、「とりあえずリハビリ」が「なんとなくリハビリ」になり「ずーっとリハビリ」になっていくことも有りうるんです。

そして、「ひどい肩こり」だけであれば「心身症」と言う診断も納得がいくのですが、そのうちに「頭が痛い」「いつも吐き気がする」「腰まで痛くなってきた」などと症状に広がりをみせてくると、まさに『不定愁訴』となります。

こんな時、精神科や心療内科など、心の問題に着目してくれる医師がいてくださりうまくリファー(紹介)していただけると「ひどい肩こり」の裏に隠された精神心理的な原因が見えてくることもあると思います。

しかし患者さんからしてみると「肩こりなのに精神科?!」と驚かれる方、また受け入れてもらえない方もいらっしゃいます。

また、リハビリで患部を温めたり電気治療を行ったり徒手療法(マッサージ)などしながらセラピストが、温かくその方の他愛のないお話しに耳を傾けてくれる事が、心理的な癒やしになり症状としては軽くなっていく事もあるかと思います。しかし、根本的な原因の治療にはなりません。何度となく通院し、良くなったり悪くなったり他の症状を訴えたりと『リハビリに依存』するようにもなります。

リハビリセラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)は心の専門家ではありません。しかし、いつの間にやらリハビリセラピストが「メンタルフォロー」を担ってしまうことも、実は臨床ではよくある話なんです。



最近ではこのような「患者のたらい回し」や「不適切な検査や治療」をできるだけ避けるために「総合診療科」と言う標榜を掲げている病院も多くなりました。

総合診療科とは…
総合診療科は、特定の臓器や疾患に限定せず、患者さんの健康問題を幅広く対応する診療科です。総合診療科は、次のような診療を行っています:

・頭痛や発熱などのよくある症状
・複数の健康問題を抱える患者さんに対する包括的なアプローチ
・受診科が判り難い各種症状の診療
・生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症など)などの一般的な疾患
・感染症(肺炎やウイルス感染症、C型・B型肝炎、HIV/AIDSなど)
・漢方外来、渡航外来、禁煙外来



今は医療において、専門分野が細分化されてそれぞれのスペシャリストが増えています。しかし、「病(やまい)」と言うものを“まずは大きくとらえてあらゆる可能性を考えましょう”と言う考え方をしなければ、本当の原因を突き止めることが困難であるとボクは思います。

そのためには、患者さんご自身もあらゆる可能性を視野に入れてご自身の健康状態を把握し、医療従事者には正直な態度で接していただきたいと思います。

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