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オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極性障害)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2024年6月25日火曜日

気をつけて欲しい習慣…“逃げ癖”

 よく、うつ病や適応障害になった時、様々な方が「ゆっくり休んで」「何もしなくていい」「むしろなにかすると余計に悪くなる」「辛ければやめれば良い」などなど、とにかく、『自分がしんどいという物事から離れること』がとても大事なことであると、様々な方が言っておられます。

もちろん、ボクもそのご意見に賛成です!

事実、ボクも何度か経験したメンタルダウンの時、「なにかしたくても何もできない」というのが当事者としての気持ちでした。そして時に『トイレに行くことさえままならない』状態だったり『お風呂に入る、シャワーを浴びることすら億劫になる』というのが事実です。

ですので、ホントにピークの時は「何かをしよう」と思えるようになるまで、ひたすらまち続ける…そう、ホントに待つしかない時期もあります。

問題は、そこから脱し始めた頃のお話。


メンタルダウンから回復し、少しずつでもお仕事ができるようになってきた頃、時々、色んな選択に迫られる事があります。

例えば…
朝の目覚めがとても悪く、なかなか起きれない。けれど、まだ準備して家を出れば始業までには間に合う。どうしよう…

とか

例えば…
新しい仕事を任せられるようになったけど、きっと休職する前だったら何でもないような内容の仕事…でも、今の自分には、仕事を完遂することに自信がない。どうしよう…

など。
思い当たる方はおられませんか?

これね、ホントに迷うんですよ。
どこまで頑張れば良いのか、どこまで無理しない方がいいのか、その境界線って実は自分自身でも判断がつかないことも多く、とても悩ましい(笑)

ボクは経験者ですので、そのお気持ち、非常に分かります。


そもそも、嫌なことから逃げるのは悪いことなのでしょうか? 

逃げ癖というと、逃げること自体が悪いことのように思えますが、何らかのストレスを感じたり困難に直面したりすれば、逃げたいと思うのが自然な反応です。

仕事自体が合わないと感じたときは、辞めて方向転換をするのもいい選択です。過度なストレスで、体調に異変が生じる恐れがある場合も、逃げて自分の身を守ることが大切です。

ただ、逃げることが習慣になると、逃げる選択肢しか見えなくなってしまうことがあります。人間関係がうまくいかない、プレッシャーを感じたくないなど、内面的な理由で嫌なことから逃げていると、問題を先送りしているだけで、環境を変えてもまた同じことが起こってしまう可能性もありますので、状況に応じて適切に対応していきたいものですね。


ここで大事なのは『逃げることが習慣になることによる弊害』を言っています。


じゃあ、どういう心理的要因が『逃げ癖』の原因になっているのでしょうか?


①失敗への恐怖心
逃げ癖の原因となる心理に、失敗への恐怖心があります。失敗したことで自分の評価が下がることを恐れる人もいれば、失敗した自分がかっこ悪くて受け入れられない人もいます。「失敗して傷つきたくない」という強い気持ちが不安を引き起こし、その不安から逃げたくなるのです。

②完璧主義
逃げ癖の原因の1つに、完璧主義があります。「完璧でありたいし周りから良く見られたい」という思いが強いと、少しのミスも許せなくなります。そのため、「ちょっとでもうまくいかない可能性があるのならやらない」という選択になるのです。

③「できるだけ楽をしたい」という気持ち
逃げ癖の背景には、「できるだけ楽をしたい」という気持ちがある場合も。問題を解決するには、考える作業が必要なのですが、それが難しくて面倒に感じてしまうのです。手っ取り早く楽をしたいと思った結果、逃げる選択を取ってしまうのです。

④「問題を先延ばしにしたい」という気持ち
逃げ癖の背景には、「問題を先延ばしにしたい」という心理が隠れていることも。嫌なことに直面した時に生じるネガティブな感情を受け入れられないと、目を背けて問題を先延ばしにしようとする場合があります。逃げることで一時的な安心感を手に入れようとするのです。


「これから逃げよう」とする人にとっては、これらの心理が複雑に絡まって、どれか一つの要因だけで「逃げるかどうかが決まる」訳では無いと、ボクは思っています。色々な原因が濃淡ありながら、『逃げる』と言う決定を下すわけです。

あまりにも『逃げる』事が多くなってしまうと、ご自身の自己肯定感が下がるとともに、下手をすれば、職場内での信頼関係や信用問題にまで発展しかねません。それは特に『逃げ癖』がついてしまうと、自分を正当化する言い訳をする事が多くなるためです。


じゃあ、どうしたらよいのでしょうか?


①感情に向き合う
逃げ癖の背景は、人によっていろいろなパターンがあるため、「自分はどんな感情が嫌で、何を恐れているのか」に向き合ってみるのが改善への第一歩になります。「本当は自分はどうなりたいのか?」についても想いを巡らせてみるのもいいでしょう。

②相談できる人を持つ
自分ひとりで考えていると、ネガティブになりがちですが、話すことで客観的に自分の現状を捉えられるようになります。相談できる人を持つことは、中長期的な視点で自分の人生を見ていくのに効果的です。カウンセラーなど専門家にサポートしてもらうのも良い方法です。

③逃げたときのデメリットを考える
逃げた場合、どんなデメリットがあるのかを考えてみることも大切です。「この仕事を断ったら一時的には楽になるけど、主要メンバーからは外されてしまう」など、具体的にイメージしてみると、今踏ん張った方が良いと思うこともあるかもしれません。

④失敗は受け入れる
逃げ癖のある人は、自分を正当化する言い訳をして、気持ちを誤魔化す傾向があります。うまくいかなかったときに、前向きに気持ちを切り替えていくためには、失敗を素直に受け入れるステップが必要になります。

⑤自分の癖を変えてみる
自分の内面に原因があることは、逃げても問題が先送りになるだけで、また同じことが起こる可能性が高いです。例えば、いつも言いたいことを言えない癖があるのなら、意見を伝えられる自分になるなど、自分の癖を変えていくことが近道です。

⑥自信をつける
日頃から小さな成功体験を積み重ねて、自信をつけていくことも大切です。苦手な人がいるなら、「まずは挨拶から」→「話すときは、少し大きな声で」など、小さな目標を少しずつ実践していくのがポイント。逃げずに向き合えたら、自分をいっぱい褒めてあげてくださいね。


ボクがここで強調したいのは②と③です。

②の様に、「誰かに相談する」ということを、とても苦手としている方が、結構おられる印象です。何を隠そうボクもそうですから(笑)意外に人って他人に寛容で、人間関係を築く事を恐れなくても大丈夫、とボクは今、思っています。それに、職場内に一人ぐらいは、何でも相談できる同僚や上司(ときには後輩)を持つほうが良いでしょう。

③に関しては、「どっちの選択をしたら自分は後悔するだろう?」と自問自答することです。もちろん、もし10回選択をしなければならない場面があったとして、7~8割くらい『逃げない選択』ができれば、万々歳だと思います(笑)。

毎回は…キツイですからね。まずは7~8割くらいから、で。


一度、逃げ癖がつくと、なかなかそこから脱することが難しくなります(経験済み)。もし、これを読んだあなたが「あ!自分、逃げ癖がついてるかも…」と思えたのであれば、今がチャンスです!!!

ご自身を変える努力をしてみてはいかがですか?



2024年5月31日金曜日

身体の不調→メンタルの不調①PMSとPMDD

 これは、ボク自身が生物学的に男(雄)であり、経験したことのないことなので、『実体験に基づいて』と言うお話しではありません。けれど、今まで働いてきた中で、コレに苦しむ女性の姿を見てきました。そして今回、どうしてこの様な記事を書こうかと思ったかというと、「一見して“メンタルが原因”の“メンタルの不調”」が実は「“内蔵や臓器が原因”の“メンタルの不調”」と言うケースがあり、心理カウンセラーとしては、それらをキチンと鑑別する必要がある、と強く感じたためです。

今回取り上げるのはPMS(月経前症候群:premenstrual syndrome)とその中でも特に心の不安定さが際立って強く出てしまうPMDD(月経前不快気分障害:premenstrual dysphoric disorder)についてお伝えしたいと思います。


月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)とは…
月経(生理)が始まる3~10日ほど前から身体や心にいろいろな症状が起こる病気です。これらの症状は月経の開始とともに弱まったりなくなったりします。PMSの詳しい原因はまだ分かっていませんが、女性特有のホルモン(黄体ホルモン)の代謝と関係している、と言われています。

では具体的にどの様な症状があるのか、というと


上の図に示した通り、『精神症状』というものもあります。しかしPMSの場合、心理カウンセリングなどの心理療法が効果的か、と言われるとそうではありません。残念ながら。

餅は餅屋。

まずは婦人科を受診して頂き確定診断していただくことをオススメします。


実はボクが理学療法士の養成校の教員をしていた頃、担当していた女性の学生がイライラ感や気分の浮き沈みを訴えてきたことがありました。ただ、本人も月経と関係していると感じていたのか、他の女性教員に相談したようです。女性教員はその学生の同意を得て、ボクにも情報共有してくださいました。彼女は、婦人科を受診し、低用量経口避妊薬(いわゆるピル)を服薬し始めて、かなり症状が改善し、落ち着いて学生生活を送れるようになった、と言う経緯があります。

やっぱり、女性同士でなければ打ち明けづらいこともありますよね。


一方、月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)とは…
PMSの仲でも心の不安定さが際立って強く出てしまう場合は「月経前不快気分障害(PMDD)」と診断されます。PMDDは抑うつ気分、不安・緊張、情緒不安定、怒り・イライラの4症状が中心で、食行動の変化や睡眠障害などの特徴的な症状が月経前に出現することで社会活動や人間関係に支障をきたします。原因や病態についてはまだ完全には明らかにはなっていません。


ちなみに『DMS-5』というのは『Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders』(精神疾患の診断・統計マニュアル)の第5版、と言うもので、アメリカ精神医学会が発行しているものです。第5版が現在で一番、新しいものです。

PMDDに関しても、かなりたくさんの精神症状があり、また、PMSよりもその症状は重度だと言われています。

しかし…

餅は餅屋(笑)。

やはり婦人科で確定診断していただきたいと思います。

現在、PMDDに関しては以下のような治療法があるようです。


1) 症状を抑える治療
症状が軽い場合は対症療法として、情緒不安定に対して精神安定剤、浮腫(むくみ)に対して利尿剤、頭痛・腹部痛に対して鎮痛剤などが適宜用いられます。

2) 抗うつ薬(SSRI)
症状が中等症以上の場合は抗うつ薬が第一選択となります。連続して投与する方法と月経開始前の2週間のみ投与する方法があります。少量の投薬量で早くから効果が得られます。

3) 経口避妊薬
産婦人科では、頭痛や乳房痛などの体の症状の改善のために経口避妊薬などの低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤を用います。最近では黄体ホルモン薬のドロスピレノンと卵胞ホルモン薬のエチニルエストラジオールからなる新しい低用量ピルが、PMDDの症状を軽くし生活の質も改善するとの報告があり使われています。

4) GnRHアゴニスト
卵巣機能を抑制するため月経はなくなり、最終手段の治療となります。女性ホルモンの分泌がなくなるので、更年期障害(ほてり・発汗・不安・イライラ感)や、同年代の人より前倒しに、脂質異常・動脈硬化・骨粗鬆症の病気が起きるリスクがあります。

5) 漢方薬
漢方療法はPMDDに効く可能性があります。体のバランスそのものに働きかけることを期待し、また副作用も少ないので産婦人科診療で用いられることがよくあります。


冒頭でボクは「内蔵や臓器が原因で起こるメンタル不調を心理カウンセラーとして鑑別必要がある」とお伝えしました。

しかし、皆さんに知っていただきたいのは、同じ職場で働く仲間が、もしかしたらこの様な病気や症状で苦しんでいるかもしれない、ということを、ジェンダー・男女関係なく、知っていただきたい、と言う気持ちもありました。


ぜひ参考にしていただければ、と思います。

2024年5月29日水曜日

問題はあなたではなく職場にあるのです!『バーンアウト』

 良く、医療従事者や高齢者福祉・障がい者福祉・児童福祉といった、対人支援や対人援助の方々が陥ることで知られている『バーンアウト(燃え尽き症候群)』。それはお仕事だけでなく、ボランティアなどの活動をされていてご経験されたことのある方もおられるのでは?

しかしなぜかバーンアウトする人としない人がいます。同じ仕事や活動をしていても…不思議だと思いませんか?ボクはとても不思議に思っていました。ボク自身はバーンアウトした経験はありませんが、しそうになっていたことはあります(笑)ギリギリのトコロで。


バーンアウト(燃え尽き症候群)とは…
それまで人一倍活発に仕事をしていた人が、なんらかのきっかけで、あたかも燃え尽きるように活力を失ったときに示す心身の疲労症状をいいます。主要症状として、心身の疲労消耗感のほか、人と距離をとり感情的接触を避ける、達成感の低下などが認められています。精神医学的にはうつ病と診断されることもあります。

医学的な話しをすると「バーンアウト・燃え尽き症候群」と言う診断名はなくて、おおよその場合『うつ病』と診断されることが多いですよね。ですので、例えば睡眠障害であったり、例えば摂食障害であったり、たとえば抑うつ感であったりと言う症状もあります。しかし、『バーンアウト・燃え尽き症候群』としては、以下のような特徴的な症状もあります。


1. 情緒的消耗感
仕事を通じてエネルギーを使い果たし、何もかも空しく感じてしまう。
仕事から離れていても、仕事のことを考えずにはいられない。
以前は楽しめていた活動も、今はつまらなく感じる。
些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったりする。
人に対して無気力になったり、シニカルな見方をするようになる。

2. 脱人格化
仕事や周囲の人間関係に対して、シニカルな見方をするようになったり、感情が薄くなったりする。
患者さんや利用者さんに対して、冷たく無愛想な態度をとってしまう。
仕事に対する責任感や義務感が薄れてしまう。
仕事以外のことに興味や関心が持てなくなる。

3. 個人的達成感の低下
自分の能力や価値を認められなくなったと感じ、仕事への意欲が低下する。
以前はできていた仕事が、できなくなってしまったと感じる。
ミスが多くなったり、集中力が低下したりする。
昇進や昇給への意欲がなくなる。
将来への希望や展望が持てなくなる。


実は『バーンアウト・燃え尽き症候群』と言うのはWHO(世界保健機関)にも正式に認められた問題なのです!

ただし…WHOがIDC-11(国際疾病分類)と言う『あらゆる病気の種類やその基準に係る世界的な分類』の中に『バーンアウト・燃え尽き症候群』を記載してしまうことに懸念を示した方がいます。

カリフォルニア大学バークレー校のクリスティーナ・マスラック名誉教授(社会心理学)です。彼女は下記のように伝えています。

〝燃え尽きが病気と見なされれば、それは組織の問題というより個人の問題だと位置づけられてしまう。そうなると「あの人を治療しなければ」とか、「あなたには辞めてもらいます。あなたに問題があるからです」「あの人物を取り除かなくてはならない」といった発想になり、組織の責任が問われなくなる。〟

ボクはこれを読んだ時に「!!!!!」と思いました(笑)

や、まさにそのとおりだと思ったからです。


実は2018年に『Employee Burnout, Part 1: The 5 Main Causes』(従業員の燃え尽き症候群、パート 1: 5 つの主な原因)と言う論文が発表されました。そこに書かれていたのは、「人々が燃え尽きる原因が主に5つある」と言っています。

①職場での不公正な扱い
②対処不能なほど過大な業務量
③求められる役割についての明確性の欠如
④マネジャーとのコミュニケーション不足、マネジャーによる支援不足
⑤非合理な時間的プレッシャー

みてわかるように、当事者が原因ではない、と言っているのです!!

少し見方を変えると、①②などはハラスメントとも関係性がありそうですよね。そして③④などは、直属の上司やチームリーダーとの関係性が影響してきそうです。


ボクはこれを読んで思いました。

バーンアウトって「すごく困難で大きな山場を乗り切った」と言う時に起こるものだと思っていたけれど、おそらくソレだけではバーンアウトしないんだって。だって、もしソレだけなら「達成感」や「爽快感」も伴うはずだから。確かに「すごく困難で大きな山場を乗り切った」プラス上記の①~⑤の様な条件が重なった時に、人はバーンアウトするんだって事に気付きました。


もちろん、バーンアウトしてしまって、精神症状や身体症状が出てしまった時は、休養や薬物療法、心理カウンセリングなど、本人が対処できることもたくさんあります。しかし、職場環境や社風や企業風土が改善されない限り、同じ職場に復職できたとしても、また、あなたがバーンアウトする可能性が高い、と言うことを忘れてはいけません。

何度も言います。

これは個人の問題だけではなく、職場環境の問題です。


先日、ネットニュースで『企業風土改革「新設部署で企業文化の変化チェック、腰を据えて取り組む」…〇〇社長』みたいな見出しのニュースを読みました。

ボク、思うんです。

企業風土改革ってボトムアップではダメなんです。トップダウンでなければ。企業風土や社風って、その企業が長年かけて作り上げて築いてしまったもの。それを、一平社員があーだこーだ言って、それをキチンを吸い上げてくれる上長がいるでしょうか?

その上長ですら、その企業に長年在籍しているのであれば、その企業風土や社風に慣れ、それが当たり前と思っているはずです。


だから!

だから、企業風土改革は、もっと上の管理職や社長・CEOがトップダウンで行うべきなのです!!

2024年5月27日月曜日

カウンセリングなんて…と思っている方へ③(リライト版)

 『カウンセリングなんて…と思っている方へ②』からの続きです。



カウンセリングは、クライエント(相談者)と心理カウンセラーの間で行われる“対話”が中心です。“対話”の中には、ただ言葉を交わすことということだけでなく、その空気感を共感することや、ノンバーバル(非言語的:言葉では表されない態度や表情、身振り手振りのこと)な交流を通じたりしておこなうセラピーの事です。

ここで強調したいのは、『運動や作業と違い、カウンセリングではクライエントが抱えている問題を、真正面から取り組む方法である』と言うこと。

運動や作業では、自分自身の中で自問自答したり整理したりしながら「自分なりの」答えを見つけたりするのですが、ちょっと極端な言い方をすると『自分の見たくない自分や目を逸らしたい現実を頭の隅に追いやる』事ができてしまう、と言うのが運動や作業の欠点だと思うんです。

先日、とあるSNSで「カウンセリングとは心の弱い者のための方法」と言うパワーワードを見かけたんですが、実は全く持って逆です。

カウンセリングを行うことで、見たくない自分、認識したくない現実と対峙しなければならないので、クライエントは覚悟を持って臨まなかればなりません。(ボクのblog記事『心理カウンセリングを受ける人に知っていてほしいこと③覚悟を持って(リライト版)』にも書きましたので、一度御覧ください)

けれど安心して下さい。そこには必ず心理カウンセラーがそばで寄り添っています。

心理カウンセリングにおける心理カウンセラーの3つの基本的態度、というのがあります。

①クライエントの感じ方に焦点を当てて無条件の肯定的関心を持つ「受容」
②クライエントの内的世界を共感的に理解しそれを相手に伝える「共感的理解」
③クライエントとの関係に心理的に安定し、心理カウンセラー自身も無理なく自分の言動や態度を受容できる「自己一致」

これらの基本的態度を持ってクライエントに接し、適度な距離感を保ちつつ寄り添うのが心理カウンセラーで、クライエント自身が嫌悪している自分、隠しておきたい自分、適切に表現できない自分を、安心して言葉や態度で表現できるよう、支援してくれます。

これはボクは、産業カウンセラー養成講座の体験学習(心理カウンセリングの練習)の場で、指導していただいた先生からの言葉なのですが、「心理カウンセラーはクライエントの少し先を行ったり、ピッタリと寄り添ったり、すこし後から付いてきたり、その時々のクライエントの状況に応じて絶妙な距離感を保つのが、有能な心理カウンセラーだ」と言っておられました。

そして、運動や作業と違う点は、問題の本質にメスを入れ、精神心理の根本的な問題の解決に取り組む点で大きく違いて、心理カウンセリングを終えた後には「カタルシス効果」を実感できるようになります。

カタルシス効果というのは、自分自身の心の中にあるネガティブな感情を開放することで心を浄化したり、気分をリラックスさせたり、前向きな気持にさせる効果のことです。身近な具体例で言うと、「泣く」ことでしょうか。

悲しくて泣く、悔しくて泣く、映画を見て泣く、感動して泣く。この「泣く」という反応によって、気分がスッキリしたり前向きに思えるようになったりする経験は、誰しも一度や二度は経験していますよね?


そして何より、カウンセリングによって得られるものの中にとても大切なのは「気付き」です。

抑圧していた自分自身の、良くない負の感情に気付く、本当はどうしたいのか自分自身の要望に気付く、周囲の人たちの自分に対する態度の本質に気付く。

嫌悪感や怒り、高すぎる自尊心や強すぎる自我など、「感じてはいけない」「思ってはいけない」と、自然に無意識下に押し込めているような感情や思いに気付き、それを表現することで、解決の糸口が見つかることも往々にしてあります。

ただ、一つ注意していただきたいのは、心理カウンセリングが終わった後、必ずしもスッキリするとは限らない、と言うことです。限られた時間の中で対応できることには限りがあるため、モヤモヤのままその時のカウンセリングが終るかもしれません。しかし、次回のカウンセリングまでの間に、自分なりの答えが見つけ出せたり、他の人からアドバイスが貰えたり、自分の中で“何か”が変化し物事の捉え方が変わったりと、心理カウンセリングが終了した後もその効果が持続することは、実はよくある話なんです!

『良いカウンセラーとは気付きを与えるカウンセラーである』

明確な答えや導線を示してくれるカウンセラーではありません。それは何故か。心理カウンセリングではクライエント自身の自己解決能力や自己修復能力を高め、人生を主体的に歩んでいくための支援であるから、なのです。

『話を聞いてもらう』だけであれば、友人やパートナー、家族や兄弟、上司や同僚などあなたの周りには色々な人がいてくれるかもしれません。けれど、その人達とは多かれ少なかれ『利害関係』にあるため「ここまでは言えるけどこれは言えない」「こんな気持は知られたくない」というフィルターがかかることで、しっくり来なかったり釈然としなかったりと、実は問題解決の糸口とはならなかったりしますよね。

しかし、心理カウンセラーは『絶対なる第三者』なんです。もちろんそのサービスに金銭のやり取りが生じることはありますが、あなた自身にとって「心理カウンセラー+α」となる関係性には、絶対になりません。そう絶対に、です!

「+α」になった時点で、その心理カウンセラーとの『カウンセリング関係』は終了とならざるを得ません。それは何度もお伝えするようにカウンセラーは『絶対なる第三者』でなければならないから、です。


カウンセリングを受けることを躊躇したり迷う人は、大勢いると思います。特に日本ではまだあまり馴染みがなく、また「精神疾患を持った人だけが受けるもの」「特別な病気をもった人のためのもの」という認識がとても強い、とボクは感じています。また「考え方が宗教的」「新興宗教への勧誘」「壺や水を売りつけられる」「洗脳される」などのイメージを持たれる方もいるのではないでしょうか?

それは絶対にありません!!!!


全3回にわたってお伝えした『カウンセリングなんて…と思っている方へ』ですが、やや小難しい事もお伝えしました。しかし、もっと身近にカウンセリングを感じていただき、実際にご自身で体験していただきたい。あわよくばボクの心理カウンセリングを(笑)

百聞は一見に如かず。ですよ。

カウンセリングなんて…と思っている方へ②(リライト版)

(カウンセリングなんて…と思っている方へ①からの続き)


「『運動をする事でうつ病を予防したり抑うつ感を解消したりする』と言う実験研究にはバイアス(データの偏り)がある」と言うボクの理論に、科学的根拠(エビデンス)は、ない(笑)

申し訳ないけれど、全く、ない。です。

ほぼ、実体験でモノを云わせて頂きます。

運動をする事に効果が表れるのは「もともと運動する事に抵抗がない(専門用語で“親和性がある”と言います)」人にのみ有効なのでは?と、ボクはずっと思っていました。と言うのも、実際の患者さんに協力を得て行う『臨床研究』の場合、その患者さんに、必ず研究の説明をし同意を頂いた上でその研究に参加してもらうんです。だから『運動の効果をみるための実験』と言う説明であったとすれば、もともと運動をしたくない、または苦手意識がある人は、そもそもその研究には参加しない可能性が高いから、と言うのがボクの持論。



ただ、運動することによる効果がある事は事実で、大切なのは「なぜ運動に効果があるのか」と言う理由(専門用語で“作用機序”と言います)だと思うんです。


運動中はどんな人でも、その間はその運動の事だけを考えているハズです。少し余裕がある人でも周りの環境や他の人に意識が向く程度で、ほぼ運動に集中しているでしょう。そして運動が終わった後には、なんやかんや言って爽快感があるもの。

爽快感があると言う事は、心の中のモヤモヤや良くない負の感情が軽減したり消失したりしていて、何となく前向きな気持ちになるのでは?

「なんとかなるさ!」
「あんなことに悩んでいたなんて馬鹿らしい!」
「今度はああしてみよう!」

そんな気持ちになるんだと、ボクは思います。
大切なのは、運動をしている最中はそれに集中しているということ。つまり思い悩んでいたことやそれに関連した事を考える隙を与えない、忘れている時間がある、と言うことです。

と言うことは言い換えてみると、それが運動である必要は全く無いのでは?と、ボクは考えます。
極端な話し、何かに集中さえしていれば良いのであって、料理・園芸・手芸・絵画・DIY・畑仕事・映画鑑賞・音楽鑑賞・読書、なんだって良いはずですよね?!
(医学的リハビリテーションで言うところの“精神科領域における作業療法”もこのような効果を狙っている場合もあります!)。

瞑想や呼吸法なども効果があるとされています、これらもその時間の間は『呼吸すること(その運動や感覚)』に意識を向け続ける時間があります。近年、効果が高いと言われている『マインドフルネス(瞑想・呼吸法)』は、まさにこの効果があると感じています(ボクは体験者でそれを実感しています)。



何かに集中することによって、頭の中をグルグルと、言葉にならない負のスパイラルから抜け出せないような考え事を一度リセットし、自分自身で頭の中の考えを再構築(または再構成・再認知かな?)することで、モヤのかかっていた部分がクリアになり、問題解決へのヒントがうまれたり前向きな気持になるのだと、ボクは考えています。

チョー持論ですが(笑)



ボクは運動が大っっっっっっっっっっっっっっっ嫌いです!
だって運動音痴やししんどいし汗かくし。
楽しいと思ったことは本当に数えるほどしかない、と思っています。

ただ、映画鑑賞や音楽鑑賞、読書などは日常的に行っていますよ。特に読書は、寝る前の読書は習慣化しているし、マインドフルネスもアプリの力を借りて継続して行っています。

では、本題。
「カウンセリングにはどのような効果があるのか?」
この運動や作業による効果と心理カウンセリングとでは、どのように違うのかに焦点を当てて、またまたチョー持論を展開します(笑)


カウンセリングなんて…と思っている方へ③へ続く

カウンセリングなんて…と思っている人へ①(リライト版)

 日本人は、「健康に敏感な国民」といっても良いかもしれません。2021年厚生労働省の発表によると、日本人の平均寿命は男性で81.5歳、女性で87.6歳であったとのことでした。

また、2019年の日本人の健康寿命は72.7歳、女性は75.4歳と。


どちらも年々、延伸してきて、これは国の施策はもちろん、医療技術の発展や国民一人ひとりの健康への意識が高くなってきていることがその要因であるのかなぁ~とボクは考えます。

しかし、皆さんの健康意識というのは、どこを向いているのか、一度、考えてみていただきたいのです。

体重?
体脂肪率?
血圧?
血糖値?
尿酸値?
コレステロール値?

どれもこれも、臓器、とりわけ内臓の働きを表す値であって、それらに自然と関心が向いているのではないでしょうか?それは、健康診断や特定健診などで必ず項目として挙がっている血液検査や尿検査などから算出されるもので、それらにばかりに目が行くのも仕方がないと言えば仕方がない、でしょう(笑)

一方でこれはご存知でしょうか?

『労働安全衛生法』という法律が改正されて労働者が50人以上いる事業場では、2015年12月から『ストレスチェック』が毎年1回、全ての労働者に対して実施することが義務付けられることになっています。

つまり、国もやっと「ストレスを管理することが健康に重要である」と認めたわけです。もしかしたらこれをお読みの方の中でも、所属する企業の健康診断でストレスチェックを受けた方もおられるのでは?と思います。

随分前から日本の医療施策の考え方として、「疾患の治療」よりも「疾患の予防」に主眼が置かれるようになりました。その最たるものが健康診断であったり特定健診で合ったりすると思います。【予防+早期発見+早期治療】が最も重要で、健康寿命を延伸させるとしている(一方で国民の医療費削減に効果的であると言う側面も持つ)と言う考え方です。つまり「ストレスを軽減させること」が「疾患の予防や早期発見に繋がる」と法的に認められたことになったのだと、ボクは解釈します。


さて、具体的にストレスが原因で引き起こされる疾患としては、以下の物が挙げられると言われています(ここに挙げたのは一例です)。

<心の病気>
うつ病、不安症、パニック障害、強迫性障害、PTSDなど

<身体の病気>
高血圧、糖尿病、心臓病(狭心症・心筋梗塞など)、脳血管疾患(くも膜下出血・脳梗塞など)、癌、アレルギー、消化器疾患(便秘症・過敏性大腸炎など)、呼吸器疾患(喘息発作など)、皮膚疾患(アトピー性皮膚炎など)、更年期障害など


ストレスというのは、心の病気だけでなく身体の病気にも深く関わる事が多くて、前述した病気以外にも、肩こりや腰痛、頭痛やめまい、倦怠感や胃痛なども関与していると言われています。

しかし皆さんは、それらのサインを「休めば治る」という安易な対処法でなんとかしようと思っていると思っていませんか?

実はその対処法、誤ってるかもしれませんよ!

休んでいるはずなのに休まらない。
何もしていないのに疲れる。
積極的に何かをしたいと思わない。
いつも楽しいと思えていることが鬱陶しいと思えてしまう。
腰が重くて何をするにも億劫である。
日々のルーティン(料理をする・歯を磨く・ひげを剃る・入浴する・洗濯をするなど)が後回しになる。
…そのような症状が出現するようになると、なかなかその状態から抜け出すことが困難になることが多い、とボクは思っていて、事実、ボクもメンタルダウンする直前というのは、まさにこんな感じでした。

これはいわゆる「抑うつ状態」と言う状態です。

もう何年も前から「軽い運動は抑うつ状態を軽減する」「運動はうつ病を予防する効果がある」など言われていて、研究結果としてはキチンとエビデンス(科学的根拠)がある、と言われていますが…

ボクはこれにはバイアス(何らかのデータの偏り)が考慮されていない、と思っています。


次回「カウンセリングなんて…と思っている人へ②」では、この運動をすることがメンタルヘルスに与える影響に関するボクの私見と、本当の意味でのストレス解消とは?ということについてお伝えしたいと思います。

2024年5月25日土曜日

心の声が聞こえない…?!無内言症

 ボクたち人間は、当たり前のことですが、何かを考えるときというのは『自分の母国語を使って頭の中で会話』していますよね?考える事や思う事と言うのは、いわゆる“言語”を駆使して頭の中で情報を処理することです。

だから「言葉」って大切なんですよ!

様々な事が原因で、この「頭の中で言語を使って情報を処理する」事がとても苦手、不得意な方がいます。と言うか、実は「言語的な処理が困難な人がある一定数いる」と言うのです!!



今回紹介する論文は『Not Everybody Has an Inner Voice: Behavioral Consequences of Anendophasia』(誰もが内なる声を持っているわけではない:無内語症の行動的影響)と言うレビューです。

ボク達が日常的に行っている頭の中の会話を『innervoice:内なる声(心の声・内言)』と呼ばれる事が多いのですが、このレビューでは、人口の5〜10パーセントはこの内なる声を持たない「無内言症(anendophasia)」という状態であることが近年の研究で明らかになりつつある、と言っています。

当たり前に僕らが行っているこの「内なる声」と言うのは、認知科学において、計画、問題解決、自己反省、感情の調整など、多くの認知活動に関与し、私たちが日常生活で意思決定を行い、感情を整理し、社会的状況に適応するのを助けてくれていると考えられています。

外国語を習得するとき、多くの人が経験すると思うのですが、例えば英語を例に挙げてみましょう。

英語を耳から聞いてそれを頭の中で日本語に変換し、さらにその意味を理解して日本語で表した後、頭の中で英語に翻訳して口から英語として話す、と言う一連の流れがありますよね。

ま、これは英語学習の初歩では、この様な事が頭の中で起こっています。ただ、本当の意味で英語を習得できた後というのは、英語を耳から聞いて頭の中でも英語で理解し、英語として話す、と言う過程に変わります。

無内言症の人というのは、この様な学習過程がとても難しいと言われているんです。

じゃあ、その様な人たちはどのようにして理解・解決してるのか。これはまだハッキリとは分かっていないようですが、恐らく「イメージ」で処理している、とのこと。「ビジュアル」で考えているっていうことですね。


実はここで困ったことが起こるんです。

ボクは常々、事あるごとに「カウンセリングは日本語の勉強です」とお伝えしてきました。実はソレは、心理カウンセラーだけに当てはまることではなくて、心理カウンセリングを受ける、クライエント側にも当てはまるんです。

blog記事『心理カウンセリングを受ける人に知っていてほしいこと①答えはクライエントが持っている(リライト版)』でもお伝えしていますが、クライエントはまず、心理カウンセラーに対し、言葉を使ったり身振り手振りを使って、ご自身の「ツラい」「困った」「悲しい」「怒っている」様々な感情を説明します。それは、“感情”だけではなくて、その感情が沸き起こった“背景(バックグラウンド)”も含めて、です。

と言うことは、無内言症の人と言うのは、このような過程すら、難しくなると言う事です。


今、思い起こしてみると、ボクが理学療法士養成校の教員をしている時、担当してる学生が無断欠席ばかりするので、呼び出して面談をしたことがあります。しかし、彼は、何も言葉にできずただただ、泣いてばかりでした。

何がそんなにツラいのか、何に苦しんでいるのか、全くキチンと言葉にすることができず、結局ボクも、彼の「困った」「ツラい」の気持ちを察したり、理解し共感することができないまま、面談を終え、彼はそのまま退学してしまいました。

彼はもしかしたら無内言症、だったのかもしれません。


ここで誤った理解をしていけないのは「思考や感情を言葉で表現することが苦手」と言うレベルではなく「思考や感情を言葉で表現“できない”」と言うことです。

認知行動療法に取り組んだことがある方はご存知だと思いますが、認知行動療法を行う時、辛かったことや苦しかったことなどネガティブな感情を抱いた出来事を後から振り返り、その出来事をどのように受け止め、理解したか、を想起したりします。それは言語的な思考過程がうまく言っているからできることであって、無内言症の様な方には、非常に困難を伴う方法である、と言わざるを得ません。


もしあなたが、心理カウンセリングを受ける時(または日常生活を送る時)、感情や状況をうまく説明できない、と感じたり考えたりしたのであれば、その時はぜひ、勇気を持って「言葉ではうまく説明できません」「伝えたいのに言葉が見つかりません」と相手に伝えてほしいと思います。



一番困ってしまうのは、『何も言わないと言う選択をする』事です。

何も言わないと言う選択をしてしまうと、本当の意味で相手に何も伝わりません。

それは、「言葉にできなくて困っている」と言うことすらも、です。

2024年5月20日月曜日

正しい自己主張の仕方!!アサーションスキルとは(リライト版)

あなたは、きちんと自己主張できていますか?
あなたが自己主張すると、なぜかうまく意見が通らないといった経験はありませんか?

職場などで会議や話し合い、ディスカッションの場でいつも喧嘩腰になったり、逆に何も言えなくなったり…せっかくの話し合いの場で、建設的な意見を出し合える事ができないのは、時間のムダ…ですよね~?

これは、以前のblog「職場環境の見直しを!!心理的安全性と言う環境評価」にも関わってくることですが、「人と上手く交渉したり建設的な意見交換をするために必要なスキル」と言うのが『アサーションスキル』です。


アサーション(スキル)とは…
お互いを大切にしながら、自分の意見や気持ちを率直・誠実・対等に伝えるためのコミュニケーションスキルのことである。


少し余談を…
実はボク、人との交渉事が大の苦手(笑)。グイグイ押されると「嫌と言えない」タイプで、大きな買い物、例えば車の購入で値段交渉などをすることも、本当に苦手でした。そんな時は友人やパートナーと一緒に連れていき、その人に代弁してもらうと言う(笑)なんとも、気の小さな人間でした。これマジで。
しかし、このアサーションスキル、と言うものを勉強し始めてから、「なんであんなに苦手意識をもってたんやろ…」って思いました。


コミュニケーションにおけるアサーションの意味は、少しややこしいのですが、「自分と相手、双方を大切にして円滑にコミュニケーションをとるためのスキル」と考えてもらい、「自分の主張を上手く突き通すスキル」でもなければ「相手の主張を優先させるスキル」ではありません!

重要なのは「相手の気持ちをしっかり考えながら、自分の気持や信念を、いかに“その場にふさわしい方法で”表現するか」であって、相手をコントロールするような方法ではないことを強調しておきます。


アサーションスキルの話をする前に、自己主張をする際、このアサーションの視点から3つのパターンに分けられると言われています。まずはそれについて説明し、ご自身がどのパターンか、また相手がどのパターンなのかを把握すると良い、と言われていますので、ご説明しますね。

①アグレッシブ(攻撃タイプ・ジャイアンタイプ)
●思ったことをズバズバ言ったり大声を張り上げたりと主張が強い。
●自分の意志を全うするためであれば、明確な悪意が伴うこともある。
●勝ち負けで物事を決める(いわゆるマウンティングを好み、常に優位に立とうとする)。
●精神的に幼い。
おそらく、職場・部署・チームに一人はいそうなタイプ(笑)ディスカッションの場では、その場をかき乱すため、この手のタイプをいかに手懐ける(てなずける)かは、腕の見せどころでしょう(笑)。


②ノン・アサーティブ(非主張タイプ・のび太くんタイプ)
●自己主張が控えめ、もしくは苦手。
●物静かな性格といった印象。
●曖昧な言い方でかわすことを好む。
●言い訳が口癖になっている。
以前のボクです(笑)。アグレッシブとは違って、その場での扱いづらさは感じない反面、いてもいなくても同じ、と言う印象を与えます。しかし組織単位で考えると、このような人材はやや扱いづらい印象もあるでしょう。


③アサーティブタイプ(グレッシブとノン・アサーティブの黄金比・しずかちゃんタイプ)
●自分の気持ちを率直に伝えつつ、なおかつ相手の気持ちも考えられる。
●場の空気感まで重んじる。
●適宜表現をチョイスできる。
●アサーティブ型を人に薦められる。
このタイプが理想形!!。



まずは、ご自身がどのタイプに当てはまるかを考える必要がありますが、以下に簡単な分類診断法があるので、一度、試していただきたいと思います。

以下の質問に◯か✕をつけてその数を数えておきましょう(ABCそれぞれに質問項目数が違うが、それは気にせず)。

A項目
①人前で弱さをさらけだすのが苦手である。
②人の悪いところを指摘することがよくある。
③自分の思い通りにならないとイライラしてしまう。
④他人のミスについつい厳しくなってしまう。

B項目
①引っ込み思案なところがある。
②自分に自信がない。
③相手の意見に合わせて行動するところがある。
④相手に認められたいと期待することがある。
⑤相手に反論されると言い返せなくなる。

C項目
①他人に正直な気持ちを打ち明けることができる。
②常に積極的に行動することができる。
③人が多い場でも自己主張ができる
④苦手な人との会話も柔軟にこなせる。
⑤相手に避難されても、自分を卑下せず、さらに相手の意見も尊重できる。

結果
Aの項目の◯が一番多い → アグレッシブ
Bの項目の◯が一番多い → ノン・アサーティブ
Cの項目の◯が一番多い → アサーティブ


この診断テストの項目を見れば、自分自身がそのタイプに属しているのか、また、何に気をつければ良いのかは、一目瞭然ですね。AとBで◯をつける項目を少なくし、Cの項目が多くなるようなコミュニケーションタイプを目指すことになるのですが…人間の特性というのは怖いもので、いざその場面になって、理想的な態度で向き合えるかと言うと、それは一筋縄でいくものではありません。

ディスカッションの場面を想定したトレーニングを何度か行う必要がありますが、根幹は「自分も自分で受け入れる。相手のことも受け入れる」と言う考え方が必要で、そのためには、自分も相手も俯瞰で観察して客観的になって、かつ相手に共感意識をもちつつ自分の信念や主義主張をしたり、かつ相手の意見を受け入れたりしていくことです。


以前、ボクは「論破する」と言う言葉が好きで、かつ「論破する事」が好きでした。
しかし、これは、仕事の現場や人間関係を構築する上では、実はあまり良くない方法であると気付きました。

「論破する」=「相手を打ち負かす」=「相手に勝つ」
と言う、「勝ち負け」の判断になってしまい、結局、その後の双方の人間関係が気まずくなったり交流が途絶えたりして、建設的な関係性、気軽な関係性にはならなくなってしまったことを経験しています。

ボクの場合、病(やまい)だけのせいにはしたくないのですが、事実、双極性障害であると、躁期にはアグレッシブに鬱期にはノン・アサーティブになりやすくて、寛解期になるとその両方の時期にしてしまった自分の対応の仕方に後悔し、またそれがストレスになるという悪循環をたどってしまうことも、結構、ありました。


「自分も受け入れる」かつ「相手も受け入れる」と言う、一見すると相反することのようではあるし、非常に難しい印象を与えますが、やってみるだけの価値はあると、ボクは思っています。

2024年5月16日木曜日

健康に老いる?!③人は差別を受けると老化が進む

 今回、この話題を取り上げようと思った経緯はいくつかあるのですが…先日、SNS上でボクが投げかけた(ボクにとっては)素朴な疑問が、思わぬ形で反応があり、恐らくそれはボクがHIV陽性者であることを開示したうえでの投げかけだったために、強い拒否反応を示された、とボクは考えていて。

いや、別にその拒否反応を示した人を非難しようとか攻撃しようとは思ってなくて、むしろ、HIV陽性者に対する“世間の目”を改めて感じたという事と、どうやったらHIV陽性者に向けられる偏見や差別を解消するには…と考えさせられました。

ここでは、HIV陽性者や障がい者への偏見と言う狭いお話しではなく、少し広い意味での「差別」について扱っていますので、ご了承ください。


今回、ご紹介するのは『Discrimination and systemic inflammation: A critical review and synthesis』(差別と全身性炎症: 批判的なレビューと総合)

実はこの論文は、アメリカで行われた研究の論文で、アメリカの背景として「根強い人種差別」がありますので、その点はご了承ください。そしてこの論文は「研究論文」ではなくて「論文調査」です。『差別と疾患(生理学的反応)』について研究された論文を集めて、様々な観点から結論を出す、と言う手法を取っています。


ヒトが差別されたり差別行動を受けたりすると、抑うつ的になったりそれが進行してうつ病になったり。もっと言うとそう言うストレスが原因で、心臓病になりやすかったりします。

ここのblog記事『カウンセリングなんて…と思っている人へ①(リライト版)』でもお伝えしましたが、ストレスが原因で引き起こされる病気というのは、本当にたくさんあります!ただ、これまで、ストレスがどうしてこの様な疾患を引き起こすのか、はっきりした要因というのはあまり解明されてきませんでした。

そこで、上記の論文の著者であるAdolfo Cuevas氏は、いくつかの論文を調べるうちに、いくつかの答えにたどり着きました。


差別を日常的に受けている人というのは…

①慢性的な睡眠不足である。
②炎症反応、炎症マーカーが高い。
③コルチゾールと言うホルモンの分泌量が多くなる。

ということが明らかになりました。


①慢性的な睡眠不足である
まぁ、これがどの様に健康に影響するかは、何となくご理解いただけるかと思います。身体的な影響として挙げられるのは、免疫力の低下・ホルモンバランスの乱れ・心臓病や脳梗塞のリスクの増加・高血圧などがあります。

②炎症反応、炎症マーカーが高い
これにつきましてはblog記事『慢性感染症に注意?!微小炎症とフレイル・サルコペニア』でお伝えしたとおりです。炎症という体の反応は、人間が生きていくうえで必ず必要なものではあるのですが、常に炎症が起こっていると、細胞の生まれ変わりの周期が早まるため、老化が進む原因と言われています。

③コルチゾールと言うホルモンの分泌量が多くなる。
コルチゾールというのはいわゆる「ストレスホルモン」と呼ばれるものです。このホルモンは、人間がストレスを感じると分泌され、一時的なものであれば、炎症の抑制・免疫力を高める・血圧を高める・覚醒させる、などの効果があると言われています。が、慢性的なストレスによって、コルチゾールが分泌され続けると…免疫力の低下・肥満(体重の増加)・糖尿病や高血圧のリスクの増加、などがあると言われています。


この様な反応を総合的に判断すると「老化が進む」と言う事につながるのです。


ここ数年、SDGsの意識の高まりとともに、障がい者やあらゆるマイノリティへの差別行動や偏見に対する対策というものが、盛んに取り上げられるようになっている、と個人的には思います。

「差別はダメだ!」「偏見は良くない!」と言う考え方は、どちらかと言うと哲学的であったり道徳的であったり倫理的であったりと、どちらかと言うと人間の精神・心理的なものに近いお話しだと捉えたる方も多いと思います。

しかし、差別を受けた人というのは、精神・心理的なダメージだけでなく、老化や寿命といった身体的なダメージを受けてしまう事、もっと強い言い方をすると、偏見や差別をする人というのは、その対象である人の「命を縮める行為をしている」と言う自覚を持つべきだ、とボクは思います。



そんな大げさな?!

と、思っている人ほど、ボクは声を大にして言いたい。

「その一言、その行為がその人の命を縮めていますよ!」と。

2024年5月9日木曜日

健康に老いる?!②…寿命・健康寿命・貢献寿命

 どんどん、寿命が伸びていく日本…もちろん、世界中を見てもヒトの寿命が伸びていますよね。以前『健康に老いる!?①社会的なつながりと老いてからのウェルビーイング』の記事の中でもお伝えしましたが、昔の日本だと「どうすれば寿命がのびるか?」と言う視点で“健康”を捉えていたけれど、今は「どうすれば健康に老いることができるか?」に興味・関心が集まっていると思います。

こうやって文章にするとなんだか“ちぐはぐ”ですが(笑)


そもそも皆さんは、『健康』ってなんだと思いますか?『健康』って何をもって『健康』って言うんでしょうか?こういう疑問って、普段、あまり意識しないので、いざ、問われるとキチンと答えられないヒトが多いのでは?と思います。

かく言うボクもそうです。

そして、ボクの師の教えで「当たり前だと思うことを疑ってみなさい」と言う言葉があり、今回も『健康』と言うものを、今一度考えてみたいと思います。


健康とは?と言う疑問にAIに訪ねたところ、以下の様な答えがかえってきました。

WHO憲章における定義
健康とは、「肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」と定義されています。つまり、単に病気をしていないだけでなく、心身ともに充実した状態であることが重要です。

健康の3つの要素
健康は、以下の3つの要素から成り立っています。
・身体的健康: 病気やケガがなく、身体機能が正常に働いている状態
・精神的健康: ストレスにうまく対処でき、幸福感や充実感を感じられる状態
・社会的健康: 良好な人間関係を築き、社会の一員として貢献できる状態

健康は、心身ともに充実した状態であり、単に病気をしていないことではありません。日々の生活の中で、健康の3つの要素を意識しながら、健康的な生活習慣を心がけましょう。


まぁ~優等生な答えですよね(笑)ま、AIなんでこんなもんでしょう。

色々と突っ込みたいところはあるのですが(笑)ただ、『3つの側面を持つ』というのはとても良く理解できるところではあります。


今回お伝えするのは、この健康の3側面のうち、『社会的健康』に大きく関わるところのお話しです。


今回のお話しの元となっているのは、アメリカの『Science』と言う雑誌に掲載された〝Does happiness promote longevity?〟(幸せは長寿を促進するのか?)と言う原著論文です。

幸せな人が長生きする、と言うのはもう色んな人が色んなところで研究しており、それは周知の事実となりました。ただ、問題なのは「幸せ」と言うものがどんなふうに定義づけられて、どんな尺度で測定して、どのような方法で数値化または表現されるのかは、色々な方法があるので、ここでは割愛します。

この研究ではその「幸福度」と「健康」の関係性、さらに「幸福度」と「生活の満足度」「楽観主義」「社会貢献」などとの関係性についても研究しています。そこで明らかになったのは以下の通り。

〝生きていることの幸せを感じながら歳を重ねていくためには、身体的・金銭的な意味での健康だけでは不十分で、社会と接点を持ち、誰かの役に立っていると感じられる『貢献感』が大切なことがわかってきた〟

貢献感を得られる期間を『貢献寿命』と定義し、この寿命を伸ばすことが幸せな晩年を送るために必要だと考えられるようになったそうです。


みなさんは社会貢献していますか?(笑)

日本人は「社会貢献」と言う言葉のイメージに「ボランティア活動」「募金活動」といったことを真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか?そうすると、一気にハードルが上がるというか、「時間がない!」とか「お金がない!」などと拒絶反応が出るかもしれません。

ただ、「仕事」や「労働」も広い意味での社会貢献です。そして、人を相手にした「対人援助職」や「対人支援」と言った仕事だけが『社会貢献している仕事』ではありませんよ!どんな仕事だって、社会の為になっている仕事ばかりです。

それにこの論文では『貢献度』が幸福感に繋がり、それが健康寿命に関係する、と言っているので、なにも『社会貢献』だけが『貢献』ではありません。

問題は、定年退職してからですよね。

多くの日本の「家族」では例えば子供世帯の家事や孫の世話する、なども『貢献』ですよね。少し田舎へ行くと、その土地ならではの習わしがあり、例えば神社のお祭であったり、お寺の行事ごとであったりと、それらに参加するのも『貢献』でしょう。

そうすると、今の日本では結婚を認められていない「同性カップル」や「同性愛者」などのセクシャルマイノリティの人たちは、どうでしょうか?

ボク自身もそうですが、20~30代の頃は、同じセクシャリティの友人や知人に囲まれ、そのコミュニティに属していたり、遊びを通じて人と接することが多かったと思います。しかしそれが40代・50代となってくると、ポートナーのいないセクシャルマイノリティは、どんどん『お一人様』であったり『一人上手』になってしまいます(笑)

また、長年一緒にいるパートナーがいたとしても、『パートナーとの生活だけ』になってしまい、地域社会やある特定のコミュニティから離れてしまうこともあるでしょう。

すると、どんどん、仕事以外のコミュニティから遠ざかることになってしまいます。

コミュニティから離れるということは『貢献する場』や『貢献する機会』を失ってしまいます。


ボクは現時点、このblog記事を書いている時は、残念ながらお一人様です(笑)だから、と言う訳ではないのですが、ボクが「勇者の部屋」を立ち上げた時から考えていた構想があって、それが『メンタル不調を抱えるゲイ・バイセクシャル男性のためのオンラインPGM』の開催です。

ある意味、この活動はボクの『貢献』とりわけ『社会貢献の場』であると思い、始めました。今では、ボクのこの活動に賛同してくれ、手伝ってくれる仲間も出来ました。また、1回きりではなく何度か参加してくれる当事者の方もおられます。

それを思う時、ボクは仕事での場面の時とは違う「人から必要とされている感」を強く実感し、何とも言葉では表現しづらい「幸福感」に包まれるのです!



何も、ご自身で何かを立ち上げる必要はありません。
ご自分のできる範囲で、何かを始めてみませんか?

貢献寿命が伸び、より長く幸福感を味わいながら天寿を全うできるのではないでしょうか。

2024年5月3日金曜日

もしかしたらその行為、依存かも…『叱る』こと

 皆さんの周りにも一人くらいはいませんか?ナンンダカンダと理由をつけて、怒ったり怒鳴ったり時には叱ったりする人。

または、いつもイライラしているような感じで、自分のお子さんを叱ってばかりの親御さん。

厳密に言うと『叱る』『怒る』『怒鳴る』というのはややニュアンスが違うのですが、今回は『叱る』に焦点を当てて少し考えてみたいと思います。


ではまず、言葉の整理から。

叱る…
[動ラ五(四)]
目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる。

怒る…
[動ラ五(四)]《「起こる」と同語源。感情が高まるところから》
①不満・不快なことがあって、がまんできない気持ちを表す。腹を立てる。いかる。
②よくない言動を強くとがめる。しかる。

怒鳴る…
[動ラ五(四)]《「ど」は擬声語》
①大きな声を出して呼ぶ。
②声高にしかりつける。

スゴく似ている言葉ですが、微妙にニュアンスに違いがあることにお気づきになりますか?

一番、大きな違いは『叱る』場合、叱る人と叱られる人の両者間には立場の差があります。一方『怒る』には必ずしも両者間に立場の差があるとは限らず、『怒鳴る』というのは『叱る』『怒る』の方法論、と言えるでしょう。


さて、『叱る』には両者間に立場の差がある、と前述しましたが、どのようなことかと言いますと、叱るには「親や上司など指導する立場の人が、未熟な人を注意する」というニュアンスがあって『叱る』という言葉には「人を育てる」というような意味を含んでいたりもしますよね。そして先程もお伝えしました通り、『叱る』と『怒る』のふたつの言葉にあるこの差は大きい、とボクは思っています。「叱る」の持つ意味には、叱る人は悪くなく、叱られる人が悪いという響きがあったり「わかっている人」が「わかっていない人」に教えるものだ、という雰囲気もあったりしますよね。


著:村中 直人「〈叱る依存〉がとまらない」には、『叱る』ことをこう書かれています。

言葉を用いてネガティブな感情体験(恐怖、不安、苦痛、悲しみなど)を与えることで、相手の行動や認識の変化を引き起こし、思うようにコントロールしようとする行為。

つまり『叱る』ことは相手を支配することだと言っていて、しかも、その行為には“快感を伴う”と言うのです!!


これは『怒る』と言う行為とも共通する部分ではあるのですが、『叱る』『怒る』と交感神経が賦活(活発)になります。心臓がドキドキしたり顔が赤らんだり血圧が上がったり、と言うのは全て、交感神経が頑張っているからなのですが、交感神経が活発になる時というのは、ノルアドレナリンやドーパミンと言う物質が、脳内や神経に放出されます。

さて、ここで出てくるのが『ドーパミン(ドパミン)』と言う物質です。

皆さんもどこかで一度は見聞きしたことがあるかと思いますが、このドーパミンと言う物質は、“快感や多幸感を得る、意欲を作ったり感じたりする”機能に大変重要な役割をする物質です。

そう考えると、いつも怒っている人、いつも叱っている人が、なぜ“いつも”なのかが理解できますよね。だって本人は『快』を味わっているのですから(笑)


少し、言い方を変えると『叱っている』『怒っている』本人は、一見、ネガティブな感情に支配されているように思われますが、脳内ではドーパミンと言う快楽物質が出ており『快』の感覚を味わっていることになるんです。




上の3つの図は、主に依存症を説明する時に使われる図のひとつなんだけど、依存症を形成する過程は、例えば薬物依存であったりアルコール依存と言うような『物質依存』でも、窃盗依存やギャンブル依存と行った『行為依存』でも、脳内ではこの様な事が起こっていると考えられています。

まあ言ってみれば『サルの脳』と『ヒトの脳』の攻防戦!といったところでしょうか。


実は『叱る』と言う行為には、『快』の感覚を強化してしまう、もう1つの側面があります。

それは、前述しました通り、「指導する人が未熟な人を注意する」であったり「知ってる人が知らない人に指導する」と言った側面というのは、心理的に『叱る人』には「正義感」であったり「正当性」であったりする『後ろ盾』があるので、『叱る人』が叱ると「良いことをした」とか「正義を貫いた」と言うような、自己認識をしてしまいます。

満足感、とでもいいましょうか。

そこにドーパミンの作用が重なるわけですから…もう、想像できますよね?『叱る人』が『快』におぼれてしまうその理由が。


もし、ご自身が「いつも叱っている(起こっている)」とか「気づいたら叱っている(怒っている)」ようでしたら、『叱る依存』かもしれません。

一度、依存が形成されると、そこから抜け出すのは非常に困難が伴います。海外ではよく「アンガーマネジメント」と言う手法を用いられることがありますが、これは一人では行えません。


もし、こんな自分自身に気づいたら、心理カウンセリングの門を叩いてみて下さい。ご一緒に解決に向け、取り組んでみませんか?

2024年4月30日火曜日

心理カウンセリングを受ける人に知っていてほしいこと④陽性転移と陰性転移(リライト版)

 『転移』と言ってもガンや腫瘍の話ではありません(笑)
心理カウンセリングは、いわゆる「心理療法」と言う手法を使って、クライエント(利用者)の精神・心理に働きかけることで、身体的な症状が軽減したり、気分が楽になったり、気持ちが前向きになったりと、『良い影響を与えるために行う事』なのは、何となく理解いただけると思います。しかし、それが思わぬ方向へ行ってしまうことがあります。



心理カウンセリングを行っていると、クライエントの過去に生じた感情や対人関係のパターンが、クライエントとセラピストとの間で現れてくることがあって、これを「転移」といいます。これは、精神分析の創始者であるフロイト(Freud, S)がクライエントの治療を通して発見した現象です。

この「転移」という現象によって、過去、クライエントによって両親やそれに近しい人物に向けられた感情が思い出されたり、その相手との関係性が反復されたりすることが多くあります。


心理カウンセラーというのはクライエントにとって、基本的に『心地の良い関係を提供してくれる人』です。クライエントが様々な悩みや、時にはあまり望ましくない感情を表現しても、心理カウンセラーはそれをキチンと受け止め、共感しくれる存在です。ボク自身もよく使う「一緒に考えてきましょう」とか「一緒にやってみましょう」などの言葉かけが象徴するように、クライエントにとってみると心理カウンセラーと言うのは『共に戦う同志』と受け止めることができ、心理カウンセラーに対してポジティブな、肯定的な印象を持つようになります。

コレが『陽性転移』と呼ばれる現象です。


この陽性転移は、一見、望ましい感情と関係性の様に思われますが、実は注意が必要です。

例えば、治療開始早期に陽性転移が起こると、「早く良くなって心理カウンセラーに褒めてもらいたい」などの心理が働き、表面的に精神症状が治ったかのように見えてしまうこともあります(転移性治癒)。ですが、本質的に問題が解決しているわけではないため、そうした場合は、治療を終えてもすぐに問題が再燃してしまうことも多くあります。

また、心理カウンセラーへの愛情が高まり、恋愛感情を抱いてしまうこともあります(恋愛性転移)。

エスカレートすると場合によっては、クライエントの恋愛感情に歯止めが利かなくなってしまい治療関係を越えようとする行動に移してしまうこともあります(行動化)。


心理カウンセラーは、比較的早期にこのような『陽性転移』に気づくことができます。それは何故かというは、心理カウンセラーはあくまで客観的にカウンセリングを遂行し、両者(心理カウンセラーとクライエント)の関係性に気付けるからです。しかしクライエントは、自分自身の主観にどっぷり浸かってしまいますので『本物の恋愛感情』と勘違いしてしまうこともあるのです!


一方『陰性転移』とはどのようなものでしょうか。
端的に言ってしまえは『陽性転移』の逆ですので、クライエントが心理カウンセラーに対し、ネガティブで否定的な感情を持つことです。

例えば、カウンセリングセッションを重ねるにつれ、クライエントが心理カウンセラーに対して「自分のことを大事にしてくれていない」「理解しようとしてくれていない」などといった不信感や怒り、憎しみの感情が湧いてきたりします。

こうした陰性転移による感情は、クライエントの過去の両親(またはそれに近しい人物)との関係のパターンや葛藤を反復していることが多く、クライエントが幼少の頃に両親に抱いていた感情であったり(「大事にされていない」「理解してくれない」など)、欲求が十分に満たされていなかったりした可能性があると考えられます。


この陰性転移については、エスカレートするとクライエントから一方的に心理カウンセリングを終了してしまうといった行動に出てしまい、それまでの心理カウンセリングが無に帰すこともありますが、実は心理カウンセラーはこの陰性転移をとても大切にします。

というのも、どの様な状況や言葉かけなどで陰性転移が起こっているかと言う分析をすることで、クライエントの問題の本質が見えてくるからです。


クライエントが陰性転移を起こしている時、心理カウンセラーが自己一致(※)しており、カウンセリングセッションを俯瞰で観察することができていれば、クライエントの抱える問題の、本質や課題の根本へと結びつけることができ、解決への糸口が見つかることが多くあります。

※自己一致
「純粋性」とも呼ばれ、「自分自身のありのままの感情を体験し、受容していること」ともいえます。心理カウンセラーは、カウンセリングセッションにおいては、ありのままの自己・自分であり、現実に経験していることが自分自身の気づきとして正確に表現されていなければならないとされます。


では、クライエントの皆さんはどうしたら良いのか。
心理カウンセラーと過ごす時間(カウンセリングセッション中)の自分自身の感情を『快』『不快』の感覚だけで判断しないようにしていただきたいと思います。クライエントが感じていることは、おおよそ心理カウンセラーはそれを見抜いていることが多くて(笑)『快』『不快』のその先にある【本当の問題】について考えています。

ただもし、クライエント自身が「陽性転移している」「陰性転移している」と感じた時、もっと言うと「恋愛感情を抱いているかも」「すごくキライだと思っているかも」と気付いたのであれば、それはキチンと心理カウンセラーに伝えるべきです。

クライエントが転移を経験している時、それを心理カウンセラーに伝えることで、心理カウンセラーは今後、両者の関係性をより良くする方法を考え、それらに対処します。

一番やってはいけいのは、自己判断により『陽性転移 → 恋愛感情 → 金品を贈る(自宅まで押しかける)』などや、『陰性転移 → 憎悪 → 無断キャンセル』などのように、行動をエスカレートしてしまうことです。



心理カウンセラーは「精神・心理の専門家」です。
ですので、心理カウンセラーは自分自身の心理に敏感に反応すると共にそれを観察し、クライエントとの関係性の中でなぜそうなったのかを分析します。

ただ、ニコニコとクライエントを受容し共感しているだけではありません。


そういう意味では、心理カウンセラーはとても腹黒いとも言えるでしょう(笑)

心理カウンセリングを受ける人に知っていてほしいこと③覚悟を持って(リライト版)

 心理カウンセリングを受けたいと思っている人、受けようと思っている人に知っておいてほしいことの第3弾です。


『覚悟を持って』


とても重いタイトルですが(笑)なぜ「覚悟を持つ」必要があるのか?できるだけ詳細にご説明致します。


①心理カウンセリングは自分自身と向き合うこと

このブログ記事『心理カウンセリングを受ける人に知っていてほしいこと①答えはクライエントが持っている』にもお伝えしておりますが、答えはクライエントが持っています。心理カウンセラーは、その答えを様々な手法を用いて“気付き”を与えて、クライエントの認知や行動の変容を起こし、問題解決を目指します。

その過程の中で、クライエントが悩んだ時、不快に思った時、つらい気持ちになった時、そのシチュエーションを思い出して貰う事があります。

思い出すということは、その時の感情も一緒に思い出すことに繋がり、セッションの間、またはその後までその感情を引きずることもあります。

実はボクもこのblogで自分が経験した体験を記事としてUPする時、書きながら当時の感情を思い出したりシチュエーションを思い出したりすることで、思いがけずメンタル不調に陥った経験もあります。感情を“反芻(はんすう)”してしまうんですよね。ですので、過去の経験を記事にする時は、十分に時間が経ち自分の中で落とし込めている事から書くようにしています。

話しを元に戻します。
本来ならば、あまり思い出したくないことを思い出すこともありますので『覚悟をもって』受けていただきたいと思います。


②嫌な自分が顔を出す

セッションの中で過去を振り返ったり感情を想起したりする時、何故その様な状況になってしまったのか、どうしてそれが苦痛と感じてしまうのか等、その事実を俯瞰で見たり客観的に観察することがあります。そうするとその時のクライエント自身の対応の仕方や受け止め方において『メンタルヘルス上好ましくない事』が見えてきたりします。つまりクライエント自身の苦手なこと・欠点・改善点などが、自分自身で見えてきます。それを『受け入れ改善すべきこと』として受容できるかどうか、が鍵になることがあります。

ボクも過去、心理カウンセリングを受けていた時、心理カウンセラーとの信頼関係が十分築けていていても、心理カウンセラーから提案されたことなどを「そうは言っても…」「今の自分には無理」「変えたくても変えられない」と言う言い訳をして(笑)、表面上は受け入れた様な風で(笑)やり過ごしていたこともあり、後々から後悔することもありました。

話しを元に戻します。
自分の嫌な面、望ましくない面が見えてくることもあるため『覚悟をもって』受けていただきたいと思います。


③自分自身の信じてきたモノや価値観を否定することもある

例えば『人間関係の築き方』や『正義や悪の判断基準』『価値基準となる優先順位』など、クライエントが長年培ってきたモノを、根底からひっくり返さなければならない事も出てくるのです。それは、クライエントが人生という長い旅路を歩んできて自分自身で取捨選択してきたり、時には両親や血縁者または近親者の助言などを信じて貫いてきたモノなど、それらを一度、見直す必要が出てくることがあります。するとそれまで信じていた物事を“変化させる”必要性が出てくるのです。

それは、正しいと思っていたりベストだと思っていた方法が、実はクライエント自身を傷つけたり本来の自分を抑圧したりしていることであったりするからです。

古い価値観を新しい価値観にアップデートすると言うのは、非常に苦痛を伴うこともあります。それは、新しい価値観が絶対的に今の自分自身に必要だと分かっているけれど、古い価値観を否定するはそれまでの自分自身の信じてきた物事を否定することに繋がり、大げさに言ってしまうと、今までの『自分の存在意義』みたいなものが揺らいでしまう可能性もあるからです。




今回は少し怖いことばかりをお伝えしました。

誤解のないようにお伝えしたいのは、これらの事全てがご自身の中で起きるかもしれないし、起きないかもしれない、と言うことです。それに起きたとしてもその程度に大小の差があります。それは理由は、カウンセリングセッション次第のところもありますし、抱える問題の本質がどこに(何に)あるのかにもよります。

だけれども、いちばんお伝えしたいのは、必ず『そばに心理カウンセラーが寄り添っている』と言うことです。


変わること、変われることは、怖いことではありません。喜ばしいことだと思って頂きたいと思います。

心理カウンセリングを受ける人に知っていてほしいこと②主観的から客観的に(リライト版)

 心理カウンセリングを受ける際、ぜひ知っておいて欲しいことの第2弾。今回は、クライエントである利用者様が、心理カウンセラーと対話をする時に、どんな視点をもってお話していただくと良いか、コツみたいなものをお伝えしたいと思います。



①最初は主観的に自分の感情に正直に

クライエントである利用者の方は、おそらく何らかの問題や悩み事を抱えて心理カウンセラーの元を訪れると思います(一部例外あり※)。その時、心理カウンセラーは何を知りたいかと言うと「どのような状況で」「それをどの様に受け止めていて」「どのような感情を抱いて」「何に困っているのか」を知りたいと思ってお話を聞きます。

※ご自身では問題がないと思っていても、周囲の方たちが問題があると考え、心理カウンセリングを受けるよう勧められる場合もあります。


例えば…
「仕事上の人間関係が」「上手く行っていなくて」「それがつらくて」「会社に行けない」とか
「パートナーと破局した事を」「とても悔やんでいて」「悲しくて」「夜も眠れない」とか
「仕事を休職していて」「上司に申し訳なく思って」「苦しくて」「何もしたくない」とか

まあ、こんなに理路整然と説明できる人はいないと思います(笑)


一度でも心理カウンセリングを受けたことがある方は分かると思うのですが、話しをしているうちに「これも関係しているかも」「あれも考えられるのかも」と、話しが飛んだりしてとっちらかってしまうことが往々にしてありますが(笑)それは問題ではありません。

心理カウンセラーは、クライエントから伝えられた事実や感情を、傾聴し共感しながら客観的に交通整理をしていきます。


お話を聞いていると、クライエントは「どのような状況で」「何に困っているのか」はキチンと説明できたり、最初から言葉にすることが出来たりするのですが「それをどの様に受け止めていて」「どのような感情を抱いて」と言う部分が欠落していることがよくあります。

「欠落」と言っても「何も考えていない」「何も感じていない」のではなく、クライエント自身はそこに注目していないことがよくあります。そのため心理カウンセラーは「その時どんな感じがしましたか?」とか「どんな感情になりましたか?」と質問を投げかけることもありますので、よく思い出して言葉にしていただけると良いと思います。


実は、ココまでの過程で、心理カウンセリングの時間の7~8割くらいを占めると思います(笑)過去のブログ「心理カウンセリングを受ける人に知っていてほしいこと①答えはクライエントが持っている」でも少しお伝えしましたが、この様な対話をしているだけでも、クライエント自身に気づきが得られることがあります。


ここまでの過程というのは、クライエントの主観の部分にフォーカスしたお話だったのはご理解いただけましたでしょうか?


②深まるにつれ客観的な視点へと

初回の心理カウンセリングではあまりないことかもしれませんが、クライエントが問題だと思っていることに対して、心理カウンセラーは「どの様に受け止めて」の部分と「どのような感情を抱いて」に少しずつ焦点を当てていきます。

例えば…
「仕事上の人間関係が」「上手くいっていなくて」「それがつらくて」「会社に行けない」
を例にとってみると

「上手くいっていなくて」と言う部分に、どういう時に「上手くいっていない」と受け止めるのか、そのシチュエーションやエピソードを探っていきます。それをクライエントが思い出す時というのは「上手くいっていないと受け止めているシチュエーション」を、自然に客観的に思い出していることが多いと思います。それは時間の経過とともに、自然に湧き上がってきた「感情」を一歩引いた立場で思い出す事ができるからです。

すると、クライエントにもよりますが、それを思い出したことで「何かの気付き」がある場合があります。「あの時、あんなふうに感じたけど少し違うかも」「あれはもしかして別の意味があったのかも」と。

もちろん、クライエント自身が気づいていなくても心理カウンセラーが気付いており、クライエントがそこに気付きが得られるよう“仕掛け”をする場合があります。

さりげなく(笑)

その時に、クライエントはムリに勘ぐったり話し続けたりする必要はありません。沈黙があっても全く問題ありません。心理カウンセラーは根気よく、待ちます。そして心理カウンセラー自身も「この気付きは本当に大切な気付きだろうか」と自問自答しながら、またクライエントの様子を観察しながらクライエントの応答を待ちます。


「上手くいっていなくて」をより詳しくより鮮明に思いがしながらその後に続く「それがつらくて」へと、今度は思考を切り替えていきます。

「上手くいっていない」シチュエーションやエピソードを思い起こした時に、「じゃあどうしてそれが“つらい”と言う気持ちに結びつくか」と言うところへ焦点を当てていきます。「それがつらくて」が解決できれば「仕事にいけなくて」の解決への糸口が見つかっていくことでしょう。


これらの過程というのは、「感情」や「気持ち」などの主観の部分から徐々に離れていき、「なぜ」「どうして」と言う理由をさぐるために、嫌でも自分自身を客観視するようになっていきます。


人は感情の波が大きければ大きいほど、その時の事実やシチュエーションを客観的に受け止めることが出来ず、その感情に飲み込まれ様々な体の不調や行動の障害の原因へと発展していきます。しかし、その感情の原因となったシチュエーションやエピソードを紐解いていくことで、行動の仕方が変わったり、出来事の受け止め方が変わったりすることで、沸き起こる感情そのものが変わり、感情が変わることで体の不調や行動の障害が改善されていくことへと繋がっていきます。


よく「俯瞰で見る」と言う言葉を使いますが、心理カウンセリングを進めていくうちに、ご自身の事を俯瞰で見られるようになります。そうなると、自分で自分の事をよく理解できるようになり、考え方のクセや物事の受け止め方のクセなどに気付き、今、抱えている問題だけでなく、これから起こるであろう出来事に対しても、それまでとは違った考え方や受け止め方ができるようになります。そうすると沸き起こる感情にも変化が起こってきます。


と、簡単に書きましたが、これが難しい(笑)。そもそも、心理カウンセリングに懐疑的に思っている方にとってみたら、こんなプロセス自体が受け入れられないと思います。そして時には、自分自身の「負の部分」「闇の部分」「見せたくない部分」をさらけ出す必要がありますので、そこそこエネルギーを使います。

そして同じ様に心理カウンセラーもエネルギーを使います。



しかし、エネルギーを使ったからこそ得られるものも大きいと思いますので、ぜひ、一度、取り組み始めたのであれば、ある程度の成果が見えるまでは、根気よく続けることをおすすめします。

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