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オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極症)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2023年8月23日水曜日

これでいいの??薬物関連報道とその法律(依存症関連記事のため閲覧注意)

最近、テレビを賑わせている、某大学運動部の薬物関連事件に関する報道。
少し、思うところがあって、筆を執った。


以下、私は法律家ではないため、全てが正しい情報だとは限らないことを前置きしておく。

薬物関連事案の初犯に対する判決というのは、前科がなくよほど悪質でなければ、両親または被告の近しい“法的に”信頼の置ける人が証言台に立ち情状酌量の陳述が行われる。その後「懲役1年6ヶ月、執行猶予3年」に近いニュアンスの判決が言い渡されるが「執行猶予」が付くわけだから、判決とともに釈放される。


実は、実名報道されるとともにその様な判決が言い渡される事にいくつかの問題点がある。


一つ目は、社会的制裁を受けることだ。

彼らは実名報道され、もちろん大学は「逮捕を受けて、より重い」『除籍』や『部全体の無期限活動停止』となる可能性もある。


また、実名報道された余波はないだろうか?いや、ある。
現在は、ネット社会だ。

各報道機関のネット記事として報道され、1~2年は各報道機関のサーバーに残っているだろう。もしくはそれ以上の長い期間。また、それをネタに『正義』と言う仮面を被ったネトウヨなどの餌食になり、元ネタとなる各報道機関のネット記事を、様々なインターネット関連事業者が運営している「掲示板」や「ブログ」に転記し、各報道機関のサーバーよりも、より長い期間、誰もが簡単に閲覧できる状態で保存されてしまう。

これが二つ目の問題『デジタルタトゥー』だ。


三つ目はアフターフォローの無さだ。

釈放後、彼らが身を寄せる場所は3つ。1つは、年齢を考慮すると身元引受人であるご家両親の元で過ごす事が考えられる。しかし果たして、彼らの家族を「護ってあげるべき存在」「ケアの必要な人達」と見る人はいるだろうか?彼らとその家族は、『世間の目』を避けるようにまた、『何かに遠慮するよう』な生活を強いられるであろう。そして「依存症対策総合支援事業」や「ギャンブル等依存症対策基本法」などが制定されているが、その様な支援に、誰が責任を持って繋げてくれるのだろうか?

他に、彼らに薬物依存に対する正しい理解ががなければ、体外的なメンツを保つためにも、『私達は息子にゼッタイに“薬物”を繰り返させません!!』的な態度を示すために、依存症専門病院への入院や民間のリハビリ施設に入所させるのではないだろう。そうなれば、ある意味「薬物依存症患者」として扱われ、少なくとも病院や施設の職員などが擁護してくれる。それらの施設で、どれくらいの時間を過ごすのか分からないが施設なら1~2年だろうか?病院ならもっと早くて数ヶ月だろう。


私は、その様な状況になる可能性が高いことを考えると、非常に胸が痛いのである。

特にデジタルタトゥーについては、本人が必死で社会復帰に取り組んでいたり、家族もそれを温かく見守っていたり、彼らを助けてあげようとしている一方で、そのような記事が、本人の意図しないところに残っていることを知った時に、彼らの心が折れる。それが怖いのである。

もしかしたら、自死を選ぶかもしれない。
もしかしたら、再び、薬物を手にするかも知れない。
もしかしたら、誰かを恨んでしまうかも知れない。
もしかしたら、精神が壊れてしまうかも知れない。

彼らはまだ若い。「若いからやり直しが効く」などという、気楽なものではない。若いからこそその先は長く、その長い人生を『罪』を背負ったまま生きていくのである。どれほどの苦しみがあるだろうか、どれほどの葛藤があるのだろうか。

想像するだけでも、言葉を失う。

『デジタルタトゥー』を残すことが原因で、その社会復帰の道を閉ざされてしまったりしては、あってはならない。

そう、絶対にあってはならない。


各報道機関は、なぜこの『実名報道』にこだわるのかが疑問でならない。

社会的制裁?
知る権利?
正義感?

また、それらの報道で得られた情報を、誰もが簡単に閲覧できる状態で掲示板やブログに転記する人は、なぜその必要性があると考えているのか、私にはその理由が分からない。


もし薬物依存症を、「犯罪ではなく」キチンと「病気」と捉えるのであれば、そもそも報道する必要がなくなるのではないか。

厚生労働省は薬物依存症を「病気」と認めているにもかかわらず、法律としては犯罪として処罰されると言う矛盾があり、それを余計に混乱させていると考える。


この矛盾を法律上で解消することが、デジタルタトゥーを減らすことに繋がり、結果的に薬物依存症患者の未来の選択肢が増える事になると、私は考える。

2023年8月22日火曜日

慢性感染症に注意?!微小炎症とフレイル・サルコペニア

 近年、様々な体調不良の原因になっていると言われているのが『微小炎症』と言う状態である。


『炎症』と言う言葉は医学用語だが、医療従事者でなくとも何となく、耳にしたり多少理解がある方もいるのではないのだろうか。

炎症とは…
生体に対する刺激や侵襲によって生じる局所的な反応の一種で、微生物感染などの生物学的ストレス、温度変化や物理的な細胞・組織破壊などによる物理的ストレス、酸やアルカリなどの化学的ストレスがある。基本的には、細胞や組織を修復するために、一番最初に起こる生体反応で、赤く腫れ上がり発熱や疼痛が出現する。

炎症を分類する際、様々な観点から分類する方法があるが、炎症状態がどれくらいの期間、持続しているかで『急性炎症』と『慢性炎症』に分類される。そのおおよその境目が4週間と言われているが、はっきりとした定義は、現在のところないのが現状である。

急性炎症の例として一番分かりやすいのは、風邪、であろうか。

風邪という病気は、ウィルスが鼻や喉などから体内に侵入し、それらを撃退・体外へ排出するために、炎症反応が起こり、体温が上がったりくしゃみや咳、鼻水などがでる。一般的な風邪であれば、体内の免疫機能が働き、自覚症状としては1~3日で治まり、完治までに2~3週間かかると言われている。


今回、取り上げる『微小炎症』は慢性炎症に分類されると考えられる。

微小炎症とは…
体内の組織に、ほんのわずかな炎症反応が起こっている状態で、通常、体内の自然な防御反応として起こっている。

HIV感染症や肝炎などのウィルス性の感染症で、かつ、そのウィルスを完全に体外から排泄できないような疾患の場合、常に「ウィルス VS 細胞」の戦いが常に行われている状態である。それが微小炎症になっていると言われている。

その他にも、喫煙やアレルギー疾患、糖尿病や高血圧なども微小炎症を引き起こしている可能性が高い。

喫煙は有害物質が口~肺を通るたびに化学的ストレスが、アレルギー疾患もアレルゲンを摂取したり接触するすることで化学的ストレスが、糖尿病や高血圧は主に血管に物理的な負荷がかかり物理ストレスが、それぞれ原因となって微小炎症を引き起こしていると考えられている。


私がHIV陽性者であるため、ここからはHIV感染症に関する文献などから引用するものであるが、おそらく、微小炎症を起こしている疾患をお持ちの方は、少し注意してご覧いただきたい。

HIV陽性者は、加齢によって発症すると言われている糖尿病・高血圧症・慢性腎障害・ガン・骨粗しょう症などの疾患を、非HIV陽性者と比較すると、10~15年ほど早く発症しやすい、と言うデータがある。

言い換えると、HIV陽性者陽性者は、非HIV陽性者と比較すると「10~15年早く老化する」とも言えるのである。


一方、フレイルやサルコペニアとはどのような状態の事を指すのか。
近年、予防医学の分野で使われる様になっている用語である。

フレイルとは…
加齢とともに心身の運動機能や認知機能が低下し、複数の慢性疾患の影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態である。しかし、適切な介入や支援で生活機能が維持向上が可能な状態。

サルコペニアとは…
加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のこと。それに伴い、立つ・歩くなどの日常生活の動作に影響が生じる。

つまり、HIV感染症のような微小炎症を伴う病気に罹ってしまうと、細胞レベルで老化がすすむ。老化が進むということはサルコペニアになり、フレイルの状態になりやすい、というのである。

ここで疑問になるのが『細胞レベルでの老化』というのが、どの様な現象でどような状態を指すのだろうか?

つきつめていくと、『細胞の老化』とは「細胞分裂の回数制限」が引き起こすものと考えられており、先日、このblog「神から与えられた猶予?!ヒトの本当の寿命」にも記載したが、染色体の先端にあると言われる「テロメア」と関与してきそうだ。

前述したように、HIV感染症や肝炎などのように、常に「ウィルス VS 細胞」の戦いが行われているということは、少ないながらもウィルスに負けてしまう細胞があるということで、その死んでしまい機能しなくなった細胞の分を補うため、他の細胞が分裂をしてその機能の代りを担う。つまりそれらのウィルスに感染していないヒトの細胞よりも、多くの細胞分裂をしなければならず、結果的に「老化が進む」状況になるのである。


ただ、(自分自身を安心させるためにお伝えするのではないけれど)HIV陽性者に対する治療法であるART療法が本格的に日本で導入されるようになったのは1996年であるから、やっと30年弱である。まだまだ、未知の世界だ。

それに、「老化」と呼ばれる現象だって、その実、詳細は分かっていない。
「テロメア」に関しても、詳細はまだ研究中の段階である。

そうやって考えてみると、普段、当たり前の様に使っている言葉や現象というものの、科学的根拠のなさというのは、なんとも言えない(笑)


話を戻そう。

HIV感染症だけでなく、前述した微小炎症を引き起こす病気というのは、小さな小さなところで、身体(細胞)を傷つけそれを修復しようと(細胞分裂)しているわけで、それが積もり積もって、身体に負担をかけているのだろうということは、容易に想像ができる。


結論。持病は一つでも少ないほうが良い。

2023年8月20日日曜日

私の中核をなすもの⑤マンガ

以前のblog 「自分自身が持つ価値観へ与える影響(お金の話し)」で少し話がでたけど、僕の子供の頃のお小遣い事情を考慮してもらうと分かる通り、週刊誌なんてものは買えなかった😖

中学に入ると、他の小学区からやってきて新しく友人となった人は、大体、毎週、少年漫画雑誌を買っている子がほとんど。

少年ジャンプ
少年マガジン
コロコロコミック
ヤングジャンプ
ヤングマガジン

中には、マイナーな「月刊Newtype」と言う雑誌を買っている友人もいた!!

月刊Newtypeとは…
連載されていた有名な作品は「新世紀エヴァンゲリオン」「ファイブスター物語」「ロードス島戦記」などがあり、かなりマニアックなマンガが多いことで有名。

僕は、そういう週刊漫画誌を買っている友人に借りて、回し読みをするんだけど、もう1箇所、マンガが自由に読める場所があった。

それは…


床屋さん!!!✂️


僕の行きつけの床屋さん、その店主の息子さんが僕の3つくらい年上で、その息子さんが読み終わった週刊漫画誌とか、読み古した単行本とかが置いてあって、床屋さんに行く楽しみの一つだった😅

そこで読んでハマったのが「聖闘士星矢」で、単行本もプラモデルも買うほど熱烈にハマり、もちろんTVアニメも一話も漏らさず見た。

実は高校を卒業するまで、単行本を買うほどまでハマったマンガはなくて😅

医療短大に入ってから、同じ研究室の女子から紹介されたマンガ「王様はロバ〜はったり帝国の逆襲〜」にハマり全巻買ったかな。

僕ぐらいの年代の人にとって、「ギャグ漫画」といえば「Dr.スランプ」「パタリロ!」「ハイスクール!奇面組」なんかが周りでは流行っていたけど、僕の中ではイマイチ…っていうか、とりあえず話題についていくためだけに見ていた感じだったかな。

あと、このマンガ知っている人、少ないと思うんだけど「」ってのがあるんだよね。実はTVドラマ化もされてるんだけど…もし知ってる人がいたら、ぜひコメント残してほしい(笑)


ごめんなさい。
マンガに関しては、これくらい。

僕は、何でもそうなんだけど、一度ハマると、浮気しせずとことんそれを深掘りするタイプで、マンガにしろ音楽にしろ、映画やドラマにしろ。

ま、そんな感じ💦

2023年8月18日金曜日

忘れられない患者さん①腰椎圧迫骨折のおばあさん

 私が理学療法士として働いていた頃、何人の人に出会ったのか、もう数えることすら出来ないくらい多くの方の人生の一部に関わってきた。

その中でもどうしても忘れられない患者様が何人かいらっしゃって、そのエピソードを紹介したいと思う。


遡ること27年前。
私の最初の就職先である、整形外科と内科の有床診療所(入院設備19床あるクリニック)で、一番、最初に担当した入院患者様(Aさん)。

Aさんは80代の女性で腰椎圧迫骨折と言う怪我で入院されていた。

腰椎圧迫骨折というのは、腰椎という背骨のうち骨盤に一番近い5個のことで、Aさんはその腰椎の一つが潰れるように骨折した状態だった。
この、腰椎圧迫骨折というのは、臨床現場では比較的ポピュラーな疾患で、骨粗鬆症がすすんだ女性が尻もちを突くことがキッカケとなって骨が折れてしまう。人によっては、転んだりうというキッカケがなくとも、自然に潰れてしまう方もいらっしゃるが。

入職してすぐ、先輩理学療法士(以下、PT)から引き継ぐ形で担当となった。が、「とりあえず痛み見ながらこんな感じでベッドサイドから始めて」みたく、かなりざっくりとした申し送りを受け(笑)、痛みで起き上がれないAさんのベッドサイドリハから始まった。


その頃、腰椎圧迫骨折の治療としては、受傷直後に体幹ギプスと言って、腰骨の辺りから胸辺りまで、まずは固定をする事から始める。ギプスも徐々に緩んでくるため、2週間後に巻き直しをするのだが、その際に古いギプスをカットして、硬性コルセット(皆さんが想像するようなコルセットではなく支柱が付いた硬いコルセット)の型取りをしてから、もう一度ギプスを巻いて、さらに2週間後にギプスから硬性コルセットへと替えていく。

当時は、体幹ギプスを巻いている間は、寝起きや排泄がかなり不便であるため入院になることが多く、硬性コルセットになると、コルセットを着脱することで日常生活に自由度が高くなるため、ある程度痛みが抑えられ日常動作が可能となれば退院、というのが一般的だった。


Aさんは、僕が担当した時にはすでに硬性コルセットに変更になっていたが、痛みのために寝起きに介助が必要。もちろん立ったり座ったりも手すりを持ちながら私が両手で介助してやっと立ち上がれる状態。歩くなんてもってのほか。の状態で、引き継いだ。

もちろん今なら、Aさんの一番の問題である痛みに対する理学療法のプログラムを立てて、痛みを軽減させながら筋力の低下を防ぐ運動や立ったり座ったりと言った、日常生活に欠かせない基本的な動作の練習から始め、どうしても日常生活に困難があれば、介護保険を利用して電動ベッドの導入やデイサービスの利用、シルバーカーのレンタル、自宅の廊下やお手洗い・お風呂場などに手すりをつけるなどの住宅改修などを提案し、自宅退院に向けた流れを考えるのだが…27年前にはまだ、介護保険制度はなかった。

Aさんは息子さん夫婦とお子さんで同居している3世代家族だった。確か、その時の息子さんのお話では、身の回りのこと(ベッドから起きてトイレや食堂まで自力で移動する)ができるようになって欲しい、とのご希望があった。ただ、もともとベッドは使っていたとのことだったが、手すりなどはなく、Aさん自身の身体能力の回復へのハードルは、かなり高かった。

その時、私自身が立てたプログラムというのは、もう、ここに書くことすら恥ずかしくて書けないくらい、稚拙なものだった。

Aさん、本当にごめんなさい…

当時、そのクリニックでは、朝一番に院長(整形外科)の回診があり、セラピストが当番制で同行しながら、入院されている方々の現状をお伝えし、院長と情報を共有していたのだが、ある時、回診後に私のところへやってきて「かっちゃん(わたしのあだ名)、Aさんそろそろ退院できんかな?息子さんがそろそろ退院させたがってるんだよ」と。

実は、その時のAさんの状況と言うのは、なんとかシルバーカーで数m歩ける程度、しかも痛みをかなりこらえながらの状態で、ご自宅の状況を考えるととても退院していただくのは難しいと、私の中では考えていた。

さらに院長は「あとどれくらい(何日くらい)で退院できそう?」と尋ねてきたのだ。

焦った。
非常に焦った。

新人の私に、この状況であと何日で退院ができるかという「予後予測」をしろ、と言っているのだ!!酷だった。本当に。悩んだ。迷った。「分かりません」とは言えなかった。
そして私は苦し紛れにこう言ったのだ。

「あと2週間、時間を下さい」

2週間という時間に、なんの根拠もない。


もしあの時、今の私の知識と技術があるか、もしくは神様が奇跡を起こしてくれていたら、本当に2週間で、理想の状態で退院を迎えられたのかも知れない。


2週間後、しびれを切らした息子様から、なんとかシルバーカーで歩けるようになっているAさんを連れて自宅で介護します、と言う連絡が入り、退院となった。

今でも思い出すのは、クリニックを出て、痛いながらもなんとかシルバーカーを押して息子様の車まで歩くAさんの後ろ姿と、横でAさんの介助をしながら歩く息子様の姿を。

その後のAさんの様子を知る由もなく、私はAさんやご家族の方への申し訳無さと、自分への不甲斐なさで心が張り裂けそうだった。


そうあの時、院長が「あとどれくらいで?」と尋ねてきた時に、「今の僕では分からないので他のスタッフと相談してお答えします」と言って先輩PTに相談したり、もしくは担当を変わってもらったり、自分の実力のなさを素直に認めて、救けを乞う事をしていたら、もっと違った結果になっていたのかも知れない。


私のちっちゃなちっちゃなプライドが、邪魔をしたのだ。


本当に後悔した。


けれど、院長始め他のリハスタッフも皆、私の事を責めたり説教をする人は一人もいなかった。

ただ、この経験が私に火を付けた。

実は、私は医療短大在学中の成績は、下の中くらいでお世辞にも優等生ではなかった。1度留年しかかっており、科目担当教授のお情けで進級できたくらいだったし、国家試験も自己採点では合格できるか出来ないかくらいの点数であった。

「夢は歌って踊れるPTです!」と、ほざいていたくらいだから、今思えば舐めきっていたものだ。

私はAさんと言う始めての担当患者様を目の前にして、ほぼほぼ無力だった自分に気付き、そしてただ、打ちひしがれるだけではなく「このままではいけない!」と言う焦燥感と不安とやる気が一気に吹き出した感覚であった。


産業カウンセラーの資格を取って半年。
実際に、カウンセリングを行うようになって約1ヶ月。

今まさに私は、同じ様な状況になろうとしている。
しかし、同じ轍は踏まないと決めた。


最初から、全力だ。

2023年8月17日木曜日

対人援助職者要注意!共依存と言う罠

 「共依存」というのは、心理的な病気の事を指し、アルコール依存症や薬物依存症を悪化させたりすることで、注目された。


共依存とは…
共依存(きょういそん、きょういぞん、英語: Co-dependency)、共嗜癖(きょうしへき、Co-addiction)とは、自分と特定の相手がその関係性に過剰に依存しており、その人間関係に囚われている関係への嗜癖状態(アディクション)を指す。すなわち「人を世話・介護することへの愛情=依存」「愛情という名の支配=自己満足」である。共依存者は、相手から依存されることに無意識のうちに自己の存在価値を見出し、そして相手をコントロールし自分の望む行動を取らせることで、自身の心の平穏を保とうとする。(Wikipedia参照)

共依存関係にある両者は、「ケアする」「ケアされる」と言う関係性に見えるため、一見すると「無償の愛情」や「献身的な介護」の様に“否定されるようなネガティブな関係”には見えない事が多い。

実はここに落とし穴がある。

依存症者がパートナー(共依存者)に依存し、またパートナーが依存症者へのケアに依存するために、その人間関係(環境)が持続する。依存症者が何らかの問題を起こし、周囲の人間に迷惑をかけるが依存症者のパートナーはその問題の尻拭いをすることで“自分自身の存在意義(価値)”を見出してしまう。そのため、無意識のうちにパートナーは依存症者の回復を拒む(イネーブリング、と言う)ようになり、依存症者自身も「依存したい」ためその様なパートナーの振る舞いを拒むことなく受け入れてしまう。結果、依存症者は自立する機会を失うが、パートナーは依存症者が自立してしまうと、自分自身の存在意義を失ってしまうと言う『自己中心性※』を秘めている。

※自己中心性とは…
自分自身の視点や立場からしか物事を捉えることができず、他人の立場や気持ちを理解することができない性格的な特徴の事。

この「共依存」という概念は、元々はアルコール依存症者とそのパートナー(またはその家族)に見られるとして、看護の臨床現場から提唱されていたが、薬物依存症の家族、ギャンブル依存症の家族、ドメスティック・バイオレンス(DV)のある家族、機能不全家族などにも見られる現象であると言われている。

「ある人間関係に囚われ、経済的、精神的、身体的に逃れられない状態にある者」というのが一般的な定義である。

共依存者には以下の様な特徴が見られる。
・相手の気持ちを優先させる(強迫的世話焼き)
・相手の行動をコントロールしようとする
・自分の気持を押し殺す(自分の意見が言えない)
・強迫観念※にとらわれやすい
・自己肯定感が低い
・現実を直視できない
・何かに依存せずにはいられない
・コミュニケーション能力に乏しい
・他人との境界があいまいである
・怒りの感情が正常に働かない
・セックスが楽しめない
…などなど…

※強迫観念とは
頭から離れない考えやイメージの内容が「不合理」だとわかっていても、頭から追い払うことができなくなること。いわゆる「潔癖症」などの様な症状の事。


実はこの様な共依存という関係性、対人援助職者が陥りやすい関係性でもある。

もともと対人援助職者というのは「人の役に立ちたい」「誰かの力になりたい」と言う気持ちが強い人が選びやすい職種であるため、援助者が気を付けていないと共依存関係になりやすい職種とも言える。

被援助者(患者様や利用者様)が「〇〇して」「✕✕やって欲しい」と言うような要求をされた時は、援助者も理性的に「この人の能力は〇〇だから✕✕までは介助しよう」と考え「〇〇はご自身でやっていただけますか」などと対応が可能で、ここでは共依存関係は生まれない。

しかし、被援助者からこの様に言われたらどうだろう。
「あなたがやってくれるからとても助かっているわ」「あなたじゃなきゃやっぱりだめね」「あなたがお休みすると心細いの」などと言われると…悪い気はしないのが人間である。そのような言われ方をすると「仕方ない。やってあげよう」と一見“自然に”そのような行動を起こしてしまう。

それが毎回毎回、毎日毎日、続くとどうだろうか。

次第に「この人は私がいないとダメな人だ」「私はあの人に必要とされている」と思うようになり、その被援助者のことがいつも気になったり、本来その人ができることまで介助してしまったりと、被援助者の抱える問題に巻き込まれていく。

共依存である被援助者は、援助者を「気持ちよく」させて、言葉巧みに「人を操ろう」としてくる。その罠に巻き込まれないようにしなければならない。

もし共依存関係になり巻き込まれたら…
基本的に、本人たちは共依存関係に陥っていることに気づいていない場合が多い。他者が指摘する、もしくは物理的に距離を離す(担当を替えるなど)の対策が必要。援助者への対応は比較的容易だが、むしろ被援助者へのフォローが難しいと思われる。「見捨てられた」「無理やり担当を替えられた」などのクレームに繋がり、信頼関係(ラ・ポール)を一度崩してしまわなければならないからだ。

これは、私の経験則からであるが、この様な関係性に陥った場合、被援助者には根気よく丁寧に説明し、被援助者に「自分自身でできることはやらなければならない」と言う気持ちになるようにしていかなければならない。また、「援助者を自分の言動でコントロールしその人を拘束していた」と言う事実を認めさせなければならない。

これは、労を要し時には時間のかかる事で、共依存関係にある者以外の第三者が積極的に関わらないと、良い方向へ向かわない。


振り返れば、私自身、共依存関係に陥っていたと思われる患者様がいらっしゃった。
今だから冷静に判断できるのであるが、「あなただから言うのだけれど」とか「他の人には内緒で…」と言い、涙を流されながら訴えかけられると、やはり心揺らぐのである。しかし、私はその方に過介助で過干渉的になり、その方が回復しないのは私自身の努力不足、技術不足であると自責の念にかられ、結果的に私自身がメンタルダウンを起こすと言う結果を招いたこともある。

私が産業カウンセラーの養成講座を受けていく中で、私のウィークポイントとして指摘されたのは「その人の感情に流される」と言われたことがある。また、臨床心理士さんとのカウンセリングの中で「鈍感力を身につけて下さい」と言われたことも。


対人援助職であるからこそ、共感力とともに客観性というものを、同時に持ち合わせていなければならない、と今更ながらに強く思う。

どうか、皆さんも注意していただきたい。

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 2024年11月28日(木)~30日(土)にかけ、東京において開催された『 第38回日本エイズ学会 』の『POSITIVE TALK 2024』にて、HIV陽性者の当事者としてスピーチをしてきました。まずは、その発表原稿の全文を、こちらでご紹介させて頂きます。 なお、読みやすい...