だんだん年を取ってくると、「認知症」の危惧をするようになりますよね。ボクの父も70歳になる頃に認知症になりました。母は80歳になりますが、まだ、実家で一人暮らししていますし、彼女はその心配はないと思っています(笑)
「認知症」に大きく関わってくるのが『記憶』ですよね。
今回は、『記憶』について、医学的な側面から心理学的な側面について、紐解いていきたいと思います。
まずは、いつもの様に言葉の整理から(笑)
記憶とは…
・ものごとを忘れずに覚えていること。また覚えておくこと。
・(心理学)過去の経験の内容を保持し、後でそれを思い出すこと。
・(心理学)将来に必要な情報をその時まで保持すること。
・(生物学)生物に過去の影響が何らかの形で残ること。
ボクが記憶の話しをする時に、大切だなと思うのは、『記憶というのはただ単に〝覚えておく〟ことだけではなくてそれを思い出すこと(想起)』ってすごくた大事だと思っています。
そして、記憶の話しをすると、ものっすごい膨大な領域の話になるんですよ。というのも、ただ単に「覚える⇒想起する」だけの話ではなく、例えば「行動・行為」にも関係しますし「認知・認識」にも関係してきます。
ですので、少し基本的なところだけお伝えしたいと思います。
「記憶の保持・想起・忘却」に関して言うと、大まかに上の図のようなシステムになっています。
感覚記憶…
目で見たり耳で聞いたり、匂いを嗅いだり肌で触れたりそんな刺激による情報が一時的に“記憶”として取り込まれます。
短期記憶…
感覚記憶で取り込まれた刺激に対して、「この情報は必要ない」とか「この感覚は記憶しておくべき」など自分の中で選別されて、「この刺激・情報は自分に必要だ!」と認知したものが“選択的注意”されたものを、さらにもう一段階、上のレベルで記憶すること。
ここで、短期記憶の中で「リハーサル(ループ)」と呼ばれる、記憶の追体験や想起を繰り返すことをしていると、それが長期記憶へ転送されます。
長期記憶…
その名の通り、長く記憶に残ること。主に「陳述記憶(意味記憶・エピソード記憶)」と「非陳述記憶(手続き記憶・プライミング)」に分類されます。
上の図は「暗記の種類」となっていますが、記憶に関する分類を分かりやすく図説しているので引用しました。
と、話が難しくなってきましたが、『認知症』になると短期記憶から障害されて長期記憶は比較的温存される、というのは有名な話。
ここからは、少し、心理学的なお話に移りたいと思います。
上の生物学的お話には触れませんでしたが、「記憶」に関わる脳の箇所にはいくつかあるのですが、特に「長期記憶」に関わるのが『大脳皮質』そして「短期記憶」に関わるのが『海馬』と呼ばれる場所です。
外界からの情報はまず、後頭葉(脳の後ろの方)で処理されて海馬へと取り込まれます。そして海馬は、その情報を「いるいらない」と言う取捨選択・選別する場所でもあるのです。必要であれば。リハーサルなどを行い、長期記憶として大脳皮質へ転送されるんです。
人間の脳には「古い脳」「新しい脳」と呼ばれる分類方法があります。これは、進化の過程で、「人間」になる前から存在していた脳の部分の事を「古い脳(古脳)」人間になってから発達した「新しい脳(新脳)」があり、海馬は「古い脳(古脳)」に分類されます。
さて、心理学的で記憶に関わる話題といえば…
誰もが経験あると思うのですが、学生時代、一夜漬けにしろコツコツ勉強するにしろ、その記憶は徐々に薄れていきます。しかし、どんなに小さな頃に経験したことでも、また、物心がつき始めた頃でも、強烈に記憶に残っている出来事というのは、人間誰しも一つや二つはありますよね?
ボクの話しを一つ。
確か小学1年生の冬だったと思います。クリスマスにサンタさんが、野球のグローブとバット・ボールのセットを贈ってきたことがあるんです。ボクは正直、興味がなかった(笑)。ただ、父が「キャッチボールをしよう!」と言って、自宅前の田んぼ(冬だから空き地みたいなもの)にボクを連れ出し、キャッチボールを始めたのですが…
上手く投げられないのは仕方がない。初めてだから。でも、グローブを使ってボールをキャッチする、と言うことがボクにはとても難しくて、父が投げるボールを掴みそこねて、ボールが胸や顔、頭や足にぶち当たるんです(笑)痛いし嫌だしとにかく早く辞めたかった。
でもボクは、父が一生懸命に教えてくれたりすることを無下に「やりたくない!」と気持ちを伝えられず、言われるがまま黙って黙々と、キャッチボールをしていたのですが、さぞ、楽しそうではなかったでしょう(笑)そのうちボクは「嫌!辞めたい!」と言えずただ、泣き出してしまったんです。
それを父がみて、慌ててその場は終わりました。
以降、そのグローブやバット、ボールが日の目を見ることはありませんでした…
5~6歳の頃の記憶なのですが、ボクには強烈に記憶されています。おそらく「嫌」「つらい」などの強い感情と一緒にその出来事が記憶されているからだと思います。
それはなぜか。
先にも書きました通り、外からの情報はまず「後頭葉」で処理されるのですが、感情を伴う記憶というのは、直接「海馬」へ運ばれる、と言われているんです。
つまり「後頭葉」と言う場所を、一度介すると言う「手順」をすっ飛ばすことができるので、ダイレクトに「海馬」に運ばれることで、強く記憶に残る、と言われています。
実は「海馬」というのは非常に脆くて、破壊されやすい部分と言われています。そして記憶力を鍛えるためには、海馬の破壊を少しでも抑えることも大切なのですが、実は、この様に強烈な感情を伴った体験をする、と言うことも海馬にとって活性化させる要因の一つになっていると言われています。
ただし!
あまりネガティブな感情を伴う刺激というのは、違う意味でメンタルヘルス上、良くないので、ボクがおすすめするのは「感動すること」「喜ぶこと」そんな感情を伴う体験を、沢山経験することをオススメします。
「記憶」と「感情」というのは、切っても切り離せない関係なのです。
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