自己紹介

自分の写真
オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極症)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2024年2月19日月曜日

嘘!うそ!ウソ!~人が嘘をつくワケ

 人は誰しも、嘘をついて生きてきています。一生のうちで一度も嘘をつかなかったという人はおそらくこの世にいないでしょう。

「嘘をついてはいけない」と言う逸話や教訓というのはそこら中に転がっていますが、有名なのは「オオカミ少年」とか「ジョージ・ワシントンと桜の木」でしょうか。

オオカミ少年とは…
イソップ物語の「オオカミ少年」は、嘘をつき続けると信頼されなくなるという教訓を説いた寓話です。この寓話は、羊飼いの少年が「狼が来た」と嘘をついて周囲の大人を惑わせ、本当に狼が襲って来たときに大人に信じてもらえず、羊を食べられてしまうという内容です。


一方、ジョージ・ワシントンと桜の木とは…
アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンは、少年時代に父親が大切にしていた桜の木を折ってしまいました。父親に問い詰められたジョージ少年は、素直に「自分がやりました」と白状して謝ったのです。それを聞いて父親は、息子を叱らずに、「お前の正直な言葉は千本の桜の木よりも価値がある」と言って、逆にジョージ少年を褒めたということです。


実はこのお話は作り話と言われているんですって!ボクも初めて知りました。


2018年に発表された論文「Differentiating everyday lies: A typology of lies based on beneficiary and motivation」(日常の嘘の区別:受益者と動機に基づく嘘の類型学)では
『受益者』と『動機』と言う二つの要素で、嘘の背景にあるそのプロセスを説明しています。つまり、嘘をつくという決断は、受益者、つまり、その嘘で得をする人によって影響される、と言っているのです。

そこでこの研究者は、人が不誠実になる理由に基づいて、6タイプの嘘を提示しました。以下にその6つを簡単にご説明します。


①利益を得るための自己志向的な嘘
このタイプの嘘は、自分が良い結果や利益を得ることを目的にしています。例えば、拾ったお金を自分のものだと主張する、など。

②損失を避けるための自己志向的な嘘
このタイプの嘘は、自分にとって悪い結果や損失を避けることを目的にしています。例えば、駐車する時に他人の車にぶつけたのに、それを否定する、など。

③他者の利益を得るための他者志向的な嘘
このタイプの嘘は、他者にとって良い結果や利益が得られることを目的としています。例えば、「仮病で欠勤している同僚」を擁護するために上司に嘘をつく、など。

④他者の損失を避けるための他者志向的な嘘
このタイプの嘘は、他者を損失や悪い結果から守ることを目的にしています。例えば、両親に心配させないように「自分は元気でやっている」と嘘をつく、など。

⑤共に利益を得るための互恵的な嘘
このタイプの嘘は、嘘をつく本人だけでなく他者も利益を得ることを目的としています。例えば、良い成績を取るためにグループプロジェクトの結果を偽る、など。

⑥共に損失を避けるための互恵的な嘘
このタイプの嘘は、自分と他者の損失を避けることを目的としています。例えば、重要な締め切りを守れなかった際に、チームマネージャーが職場の上司に対し、タスクを完了できなかったチームが責められたり個人で責任を引き受けることにならないように、技術的な問題が原因だったと偽りの説明する、など。



確かに、人を傷つけたり他人の不利益を画策するような嘘は、道徳的に良くないとは思いますよね。「嘘も方便」と言うくらいなので、「ついてもいい嘘」があるのではないかと思います。

しかし、どんな嘘をつくにせよ、メンタルヘルスに大なり小なり影響を及ぼすのは事実です。2023年に発表された「The costs of lying: Consequences of telling lies on liar's self-esteem and affect」(嘘の代償:嘘をつくと嘘をつく人の自尊心と感情に与える影響)では、嘘をつく事の心理的な影響が研究されました。それには以下の3つが挙げられるといいます。


①自己肯定感の低下
嘘をついた人は、真実を話した人よりも自己肯定感が低下した。また、嘘をついた日のその人の自己肯定感は、前日や平均的な自己肯定感の水準に比べて低くなった。

②ネガティブな感情の増加
嘘をついた人は、真実を話した人に比べて、いら立ち、後悔、不安、みじめさ、罪悪感、きまりの悪さ、恥、怒りといったネガティブな感情を強く感じることがわかった。

③ポジティブな感情の減少
この研究では、ネガティブな感情の評価に加えて、嘘をついた人のポジティブな感情も検証された。その結果、嘘をついた人は、真実を話した人に比べて、心地よさ、幸福感、安心感、誇りといった感情が少なかった。



「嘘も方便」的な意味合いで嘘をついたとしても、それは、嘘をついた本人のメンタルヘルスにはあまり良くない、と言うことだそうです。

でもこれって、ホントは皆さん、日頃から感覚的に分かっていることですよ…ね。ボクもそうです。

できれば嘘をつきたくない。

それは道徳的にもそう思うし、自分が苦しい思いや嫌な思いをすることが分かっているから。

ボクはHIV陽性者です。
自分自身もそうですし、よく同じ境遇の人から相談されることもあるのですが、「職場に病気の事を開示したほうが良いのか」と言う問題です。ボクは陽性告知を受けて20年以上経ちましたので、この問題に対して自分なりの答えを持っています。それは「開示するメリット・デメリットと開示しないメリットとデメリットを天秤にかけて選択すれば良い」と言うことです。

この「メリット」「デメリット」の中には「嘘をつく罪悪感」と言うのも入れて考えて良いのかな、と思います。

また「嘘をつく」と考えると大変心苦しいので「聞かれなければあえて言わない」と言う捉え方もあると思います。

なんだか言葉遊びのようでアレなんですけど(笑)
でも「嘘をつく」と「あえて言わない」では、随分と自分の心の持ちようが変わってくると思うんですよね。


これからのアナタの人生に何かのお役に立てれれば、と思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿

最新のblog

 2024年11月28日(木)~30日(土)にかけ、東京において開催された『 第38回日本エイズ学会 』の『POSITIVE TALK 2024』にて、HIV陽性者の当事者としてスピーチをしてきました。まずは、その発表原稿の全文を、こちらでご紹介させて頂きます。 なお、読みやすい...