今回のblogは、【情報を正しく扱う】をキーワードに、HIV感染症およびエイズ患者・HIV陽性者に対する偏見・差別(行動)がなくならないのか、今の日本における現状を、ボクが日常的に感じている事をご説明しました。次回からは3回に分け、もう少し詳しくお伝えしていきます。
以前ボクが書いたblog記事「HIV/AIDSの偏見差別に思う・RED RIBBON LIVE NAGOYA 2023に参加して」で少しお伝えした、HIV陽性者に対する偏見や差別が起こる要因。ボクはその一つに「HIV陽性者が身近にいると感じられないから」と一つの提案をしました。しかし、それ以外にも、いくつもいくつも要因があり、それらが複雑に絡み合って今の状態があると思います。
今回はまず、今の日本に於いて、HIV/AIDSに対する偏見や差別(行動)がなくならないのは何故か、【情報を正しく扱う】をキーワードに順を追ってご説明したいと思います。また、次回以降、今回のblogでお伝えした事を【医学的側面】【社会福祉学的側面】【心理学的側面】の3つに分けて、詳細をお伝えしていきますね。
1.偏見・差別(行動)をなくすには「正しい情報を知る」事が大事と言うけれど…
今の世の中、行政や医療機関など、HIV感染症やAIDSに関する知識というのは、非常に新しくそして正しい情報が溢れています。しかもネット社会ですので、誰もが簡単にその情報を手に入れることができます。それなのに「偏見・差別(行動)」がなくならないのはなぜでしょうか?それは、【情報を正しく扱う】事に関係します。
2.『情報を正しく扱う』とはどういうことか
今の世の中、情報が溢れている事は事実です。しかし、その情報をキチンと「受け取りに行く」「情報収集する」と言う行動を起こさなければ、その人に正しい情報は伝わりません。情報を発信する側が、様々な手段を使って色んなタイミングで発信していたとしても、受け取る側にそれを「受け取ろう」とする意志がなければ、それは“情報がない” ということと同じことです。
つまり情報というのは【発信する側の問題】と【受け取る側の問題】があるわけです。
HIV感染症というのは、外見からでは判断がつかない病気で、免疫機能障害というのは目に見えない障害です。つまり本人が「私はHIV感染症です」「私は免疫機能障害です」と開示(何らかの方法で周知してもらうこと)しなければ分かりません。もしHIV陽性者自身が周囲の人に開示しなければ、誰もそれを知ることなく、一緒に生活したり仕事したりすることになります。
4.リアリティがない
3で述べたようにHIV陽性者が身近にいることを知らなければ、また、大切な人がHIV陽性者であることを知らなければ、おそらくHIV陽性者の周囲の人はあえて「HIV感染症ってどんな病気?」「免疫機能障害ってどんな障害?」と知ろうとしないでしょう。つまり2に述べていることに関係してくるわけです。HIV陽性者自身が「私はHIV陽性者です!」「私は免疫機能障害です!」と声を挙げなければ、誰もその病気や障害について、“あえて知ろう”としない、つまり【自分たちの周囲にHIV陽性者がいるとは思っていないから、正しい情報を手に入れない】と言う事になってしまうのです。
5.『HIV陽性者であることを開示する事』のリスク
しかし今の世の中、HIV/AIDSに対する偏見や差別(行動)はなくなっていません。ですので、当事者は余計に声を挙げにくい。つまり「開示することで不利益を被るかもしれない」「差別行動を受けるかもしれない」と言う恐れがあるわけです。そうなるとドンドン、当事者は開示しづらくなるわけです。
6.HIV感染症はSTI(性感染症)であるという事実
現在の日本において、HIVの感染経路のほとんどがSTI(性感染症)です。つまり性行為で感染します。そしてそれが、男性間の性行為で感染することが多いのが現状です。それがまた、大きな偏見を生む原因となっています。「不特定多数の相手と関係を持つ人」「アンセイフなセックスをする人」「男性と性行為する男性(セクシャルマイノリティ)」と言う別のスティグマがあり、尚更、自分自身の病気や障害を開示しづらくなっていると言う現状があります。
※スティグマとは… 社会的な偏見や差別の対象となる特徴や属性を指す言葉です。例えば、身体的な特徴、疾病、障害、人種、宗教、性別、性的指向など、多岐にわたる特徴や属性を指します。
今回のblogでは、【情報を正しく扱う】をキーワードに、HIV感染症およびエイズ患者・HIV陽性者に対する偏見・差別(行動)がなくならないのか、今の日本における現状を、ボクが日常的に感じている事をご説明しました。次回からは3回に分け、もう少し詳しくお伝えしていきます。