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オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極症)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2024年5月16日木曜日

健康に老いる?!③人は差別を受けると老化が進む

 今回、この話題を取り上げようと思った経緯はいくつかあるのですが…先日、SNS上でボクが投げかけた(ボクにとっては)素朴な疑問が、思わぬ形で反応があり、恐らくそれはボクがHIV陽性者であることを開示したうえでの投げかけだったために、強い拒否反応を示された、とボクは考えていて。

いや、別にその拒否反応を示した人を非難しようとか攻撃しようとは思ってなくて、むしろ、HIV陽性者に対する“世間の目”を改めて感じたという事と、どうやったらHIV陽性者に向けられる偏見や差別を解消するには…と考えさせられました。

ここでは、HIV陽性者や障がい者への偏見と言う狭いお話しではなく、少し広い意味での「差別」について扱っていますので、ご了承ください。


今回、ご紹介するのは『Discrimination and systemic inflammation: A critical review and synthesis』(差別と全身性炎症: 批判的なレビューと総合)

実はこの論文は、アメリカで行われた研究の論文で、アメリカの背景として「根強い人種差別」がありますので、その点はご了承ください。そしてこの論文は「研究論文」ではなくて「論文調査」です。『差別と疾患(生理学的反応)』について研究された論文を集めて、様々な観点から結論を出す、と言う手法を取っています。


ヒトが差別されたり差別行動を受けたりすると、抑うつ的になったりそれが進行してうつ病になったり。もっと言うとそう言うストレスが原因で、心臓病になりやすかったりします。

ここのblog記事『カウンセリングなんて…と思っている人へ①(リライト版)』でもお伝えしましたが、ストレスが原因で引き起こされる病気というのは、本当にたくさんあります!ただ、これまで、ストレスがどうしてこの様な疾患を引き起こすのか、はっきりした要因というのはあまり解明されてきませんでした。

そこで、上記の論文の著者であるAdolfo Cuevas氏は、いくつかの論文を調べるうちに、いくつかの答えにたどり着きました。


差別を日常的に受けている人というのは…

①慢性的な睡眠不足である。
②炎症反応、炎症マーカーが高い。
③コルチゾールと言うホルモンの分泌量が多くなる。

ということが明らかになりました。


①慢性的な睡眠不足である
まぁ、これがどの様に健康に影響するかは、何となくご理解いただけるかと思います。身体的な影響として挙げられるのは、免疫力の低下・ホルモンバランスの乱れ・心臓病や脳梗塞のリスクの増加・高血圧などがあります。

②炎症反応、炎症マーカーが高い
これにつきましてはblog記事『慢性感染症に注意?!微小炎症とフレイル・サルコペニア』でお伝えしたとおりです。炎症という体の反応は、人間が生きていくうえで必ず必要なものではあるのですが、常に炎症が起こっていると、細胞の生まれ変わりの周期が早まるため、老化が進む原因と言われています。

③コルチゾールと言うホルモンの分泌量が多くなる。
コルチゾールというのはいわゆる「ストレスホルモン」と呼ばれるものです。このホルモンは、人間がストレスを感じると分泌され、一時的なものであれば、炎症の抑制・免疫力を高める・血圧を高める・覚醒させる、などの効果があると言われています。が、慢性的なストレスによって、コルチゾールが分泌され続けると…免疫力の低下・肥満(体重の増加)・糖尿病や高血圧のリスクの増加、などがあると言われています。


この様な反応を総合的に判断すると「老化が進む」と言う事につながるのです。


ここ数年、SDGsの意識の高まりとともに、障がい者やあらゆるマイノリティへの差別行動や偏見に対する対策というものが、盛んに取り上げられるようになっている、と個人的には思います。

「差別はダメだ!」「偏見は良くない!」と言う考え方は、どちらかと言うと哲学的であったり道徳的であったり倫理的であったりと、どちらかと言うと人間の精神・心理的なものに近いお話しだと捉えたる方も多いと思います。

しかし、差別を受けた人というのは、精神・心理的なダメージだけでなく、老化や寿命といった身体的なダメージを受けてしまう事、もっと強い言い方をすると、偏見や差別をする人というのは、その対象である人の「命を縮める行為をしている」と言う自覚を持つべきだ、とボクは思います。



そんな大げさな?!

と、思っている人ほど、ボクは声を大にして言いたい。

「その一言、その行為がその人の命を縮めていますよ!」と。

2024年5月9日木曜日

健康に老いる?!②…寿命・健康寿命・貢献寿命

 どんどん、寿命が伸びていく日本…もちろん、世界中を見てもヒトの寿命が伸びていますよね。以前『健康に老いる!?①社会的なつながりと老いてからのウェルビーイング』の記事の中でもお伝えしましたが、昔の日本だと「どうすれば寿命がのびるか?」と言う視点で“健康”を捉えていたけれど、今は「どうすれば健康に老いることができるか?」に興味・関心が集まっていると思います。

こうやって文章にするとなんだか“ちぐはぐ”ですが(笑)


そもそも皆さんは、『健康』ってなんだと思いますか?『健康』って何をもって『健康』って言うんでしょうか?こういう疑問って、普段、あまり意識しないので、いざ、問われるとキチンと答えられないヒトが多いのでは?と思います。

かく言うボクもそうです。

そして、ボクの師の教えで「当たり前だと思うことを疑ってみなさい」と言う言葉があり、今回も『健康』と言うものを、今一度考えてみたいと思います。


健康とは?と言う疑問にAIに訪ねたところ、以下の様な答えがかえってきました。

WHO憲章における定義
健康とは、「肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」と定義されています。つまり、単に病気をしていないだけでなく、心身ともに充実した状態であることが重要です。

健康の3つの要素
健康は、以下の3つの要素から成り立っています。
・身体的健康: 病気やケガがなく、身体機能が正常に働いている状態
・精神的健康: ストレスにうまく対処でき、幸福感や充実感を感じられる状態
・社会的健康: 良好な人間関係を築き、社会の一員として貢献できる状態

健康は、心身ともに充実した状態であり、単に病気をしていないことではありません。日々の生活の中で、健康の3つの要素を意識しながら、健康的な生活習慣を心がけましょう。


まぁ~優等生な答えですよね(笑)ま、AIなんでこんなもんでしょう。

色々と突っ込みたいところはあるのですが(笑)ただ、『3つの側面を持つ』というのはとても良く理解できるところではあります。


今回お伝えするのは、この健康の3側面のうち、『社会的健康』に大きく関わるところのお話しです。


今回のお話しの元となっているのは、アメリカの『Science』と言う雑誌に掲載された〝Does happiness promote longevity?〟(幸せは長寿を促進するのか?)と言う原著論文です。

幸せな人が長生きする、と言うのはもう色んな人が色んなところで研究しており、それは周知の事実となりました。ただ、問題なのは「幸せ」と言うものがどんなふうに定義づけられて、どんな尺度で測定して、どのような方法で数値化または表現されるのかは、色々な方法があるので、ここでは割愛します。

この研究ではその「幸福度」と「健康」の関係性、さらに「幸福度」と「生活の満足度」「楽観主義」「社会貢献」などとの関係性についても研究しています。そこで明らかになったのは以下の通り。

〝生きていることの幸せを感じながら歳を重ねていくためには、身体的・金銭的な意味での健康だけでは不十分で、社会と接点を持ち、誰かの役に立っていると感じられる『貢献感』が大切なことがわかってきた〟

貢献感を得られる期間を『貢献寿命』と定義し、この寿命を伸ばすことが幸せな晩年を送るために必要だと考えられるようになったそうです。


みなさんは社会貢献していますか?(笑)

日本人は「社会貢献」と言う言葉のイメージに「ボランティア活動」「募金活動」といったことを真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか?そうすると、一気にハードルが上がるというか、「時間がない!」とか「お金がない!」などと拒絶反応が出るかもしれません。

ただ、「仕事」や「労働」も広い意味での社会貢献です。そして、人を相手にした「対人援助職」や「対人支援」と言った仕事だけが『社会貢献している仕事』ではありませんよ!どんな仕事だって、社会の為になっている仕事ばかりです。

それにこの論文では『貢献度』が幸福感に繋がり、それが健康寿命に関係する、と言っているので、なにも『社会貢献』だけが『貢献』ではありません。

問題は、定年退職してからですよね。

多くの日本の「家族」では例えば子供世帯の家事や孫の世話する、なども『貢献』ですよね。少し田舎へ行くと、その土地ならではの習わしがあり、例えば神社のお祭であったり、お寺の行事ごとであったりと、それらに参加するのも『貢献』でしょう。

そうすると、今の日本では結婚を認められていない「同性カップル」や「同性愛者」などのセクシャルマイノリティの人たちは、どうでしょうか?

ボク自身もそうですが、20~30代の頃は、同じセクシャリティの友人や知人に囲まれ、そのコミュニティに属していたり、遊びを通じて人と接することが多かったと思います。しかしそれが40代・50代となってくると、ポートナーのいないセクシャルマイノリティは、どんどん『お一人様』であったり『一人上手』になってしまいます(笑)

また、長年一緒にいるパートナーがいたとしても、『パートナーとの生活だけ』になってしまい、地域社会やある特定のコミュニティから離れてしまうこともあるでしょう。

すると、どんどん、仕事以外のコミュニティから遠ざかることになってしまいます。

コミュニティから離れるということは『貢献する場』や『貢献する機会』を失ってしまいます。


ボクは現時点、このblog記事を書いている時は、残念ながらお一人様です(笑)だから、と言う訳ではないのですが、ボクが「勇者の部屋」を立ち上げた時から考えていた構想があって、それが『メンタル不調を抱えるゲイ・バイセクシャル男性のためのオンラインPGM』の開催です。

ある意味、この活動はボクの『貢献』とりわけ『社会貢献の場』であると思い、始めました。今では、ボクのこの活動に賛同してくれ、手伝ってくれる仲間も出来ました。また、1回きりではなく何度か参加してくれる当事者の方もおられます。

それを思う時、ボクは仕事での場面の時とは違う「人から必要とされている感」を強く実感し、何とも言葉では表現しづらい「幸福感」に包まれるのです!



何も、ご自身で何かを立ち上げる必要はありません。
ご自分のできる範囲で、何かを始めてみませんか?

貢献寿命が伸び、より長く幸福感を味わいながら天寿を全うできるのではないでしょうか。

2024年5月3日金曜日

もしかしたらその行為、依存かも…『叱る』こと

 皆さんの周りにも一人くらいはいませんか?ナンンダカンダと理由をつけて、怒ったり怒鳴ったり時には叱ったりする人。

または、いつもイライラしているような感じで、自分のお子さんを叱ってばかりの親御さん。

厳密に言うと『叱る』『怒る』『怒鳴る』というのはややニュアンスが違うのですが、今回は『叱る』に焦点を当てて少し考えてみたいと思います。


ではまず、言葉の整理から。

叱る…
[動ラ五(四)]
目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる。

怒る…
[動ラ五(四)]《「起こる」と同語源。感情が高まるところから》
①不満・不快なことがあって、がまんできない気持ちを表す。腹を立てる。いかる。
②よくない言動を強くとがめる。しかる。

怒鳴る…
[動ラ五(四)]《「ど」は擬声語》
①大きな声を出して呼ぶ。
②声高にしかりつける。

スゴく似ている言葉ですが、微妙にニュアンスに違いがあることにお気づきになりますか?

一番、大きな違いは『叱る』場合、叱る人と叱られる人の両者間には立場の差があります。一方『怒る』には必ずしも両者間に立場の差があるとは限らず、『怒鳴る』というのは『叱る』『怒る』の方法論、と言えるでしょう。


さて、『叱る』には両者間に立場の差がある、と前述しましたが、どのようなことかと言いますと、叱るには「親や上司など指導する立場の人が、未熟な人を注意する」というニュアンスがあって『叱る』という言葉には「人を育てる」というような意味を含んでいたりもしますよね。そして先程もお伝えしました通り、『叱る』と『怒る』のふたつの言葉にあるこの差は大きい、とボクは思っています。「叱る」の持つ意味には、叱る人は悪くなく、叱られる人が悪いという響きがあったり「わかっている人」が「わかっていない人」に教えるものだ、という雰囲気もあったりしますよね。


著:村中 直人「〈叱る依存〉がとまらない」には、『叱る』ことをこう書かれています。

言葉を用いてネガティブな感情体験(恐怖、不安、苦痛、悲しみなど)を与えることで、相手の行動や認識の変化を引き起こし、思うようにコントロールしようとする行為。

つまり『叱る』ことは相手を支配することだと言っていて、しかも、その行為には“快感を伴う”と言うのです!!


これは『怒る』と言う行為とも共通する部分ではあるのですが、『叱る』『怒る』と交感神経が賦活(活発)になります。心臓がドキドキしたり顔が赤らんだり血圧が上がったり、と言うのは全て、交感神経が頑張っているからなのですが、交感神経が活発になる時というのは、ノルアドレナリンやドーパミンと言う物質が、脳内や神経に放出されます。

さて、ここで出てくるのが『ドーパミン(ドパミン)』と言う物質です。

皆さんもどこかで一度は見聞きしたことがあるかと思いますが、このドーパミンと言う物質は、“快感や多幸感を得る、意欲を作ったり感じたりする”機能に大変重要な役割をする物質です。

そう考えると、いつも怒っている人、いつも叱っている人が、なぜ“いつも”なのかが理解できますよね。だって本人は『快』を味わっているのですから(笑)


少し、言い方を変えると『叱っている』『怒っている』本人は、一見、ネガティブな感情に支配されているように思われますが、脳内ではドーパミンと言う快楽物質が出ており『快』の感覚を味わっていることになるんです。




上の3つの図は、主に依存症を説明する時に使われる図のひとつなんだけど、依存症を形成する過程は、例えば薬物依存であったりアルコール依存と言うような『物質依存』でも、窃盗依存やギャンブル依存と行った『行為依存』でも、脳内ではこの様な事が起こっていると考えられています。

まあ言ってみれば『サルの脳』と『ヒトの脳』の攻防戦!といったところでしょうか。


実は『叱る』と言う行為には、『快』の感覚を強化してしまう、もう1つの側面があります。

それは、前述しました通り、「指導する人が未熟な人を注意する」であったり「知ってる人が知らない人に指導する」と言った側面というのは、心理的に『叱る人』には「正義感」であったり「正当性」であったりする『後ろ盾』があるので、『叱る人』が叱ると「良いことをした」とか「正義を貫いた」と言うような、自己認識をしてしまいます。

満足感、とでもいいましょうか。

そこにドーパミンの作用が重なるわけですから…もう、想像できますよね?『叱る人』が『快』におぼれてしまうその理由が。


もし、ご自身が「いつも叱っている(起こっている)」とか「気づいたら叱っている(怒っている)」ようでしたら、『叱る依存』かもしれません。

一度、依存が形成されると、そこから抜け出すのは非常に困難が伴います。海外ではよく「アンガーマネジメント」と言う手法を用いられることがありますが、これは一人では行えません。


もし、こんな自分自身に気づいたら、心理カウンセリングの門を叩いてみて下さい。ご一緒に解決に向け、取り組んでみませんか?

2024年4月30日火曜日

心理カウンセリングを受ける人に知っていてほしいこと④陽性転移と陰性転移(リライト版)

 『転移』と言ってもガンや腫瘍の話ではありません(笑)
心理カウンセリングは、いわゆる「心理療法」と言う手法を使って、クライエント(利用者)の精神・心理に働きかけることで、身体的な症状が軽減したり、気分が楽になったり、気持ちが前向きになったりと、『良い影響を与えるために行う事』なのは、何となく理解いただけると思います。しかし、それが思わぬ方向へ行ってしまうことがあります。



心理カウンセリングを行っていると、クライエントの過去に生じた感情や対人関係のパターンが、クライエントとセラピストとの間で現れてくることがあって、これを「転移」といいます。これは、精神分析の創始者であるフロイト(Freud, S)がクライエントの治療を通して発見した現象です。

この「転移」という現象によって、過去、クライエントによって両親やそれに近しい人物に向けられた感情が思い出されたり、その相手との関係性が反復されたりすることが多くあります。


心理カウンセラーというのはクライエントにとって、基本的に『心地の良い関係を提供してくれる人』です。クライエントが様々な悩みや、時にはあまり望ましくない感情を表現しても、心理カウンセラーはそれをキチンと受け止め、共感しくれる存在です。ボク自身もよく使う「一緒に考えてきましょう」とか「一緒にやってみましょう」などの言葉かけが象徴するように、クライエントにとってみると心理カウンセラーと言うのは『共に戦う同志』と受け止めることができ、心理カウンセラーに対してポジティブな、肯定的な印象を持つようになります。

コレが『陽性転移』と呼ばれる現象です。


この陽性転移は、一見、望ましい感情と関係性の様に思われますが、実は注意が必要です。

例えば、治療開始早期に陽性転移が起こると、「早く良くなって心理カウンセラーに褒めてもらいたい」などの心理が働き、表面的に精神症状が治ったかのように見えてしまうこともあります(転移性治癒)。ですが、本質的に問題が解決しているわけではないため、そうした場合は、治療を終えてもすぐに問題が再燃してしまうことも多くあります。

また、心理カウンセラーへの愛情が高まり、恋愛感情を抱いてしまうこともあります(恋愛性転移)。

エスカレートすると場合によっては、クライエントの恋愛感情に歯止めが利かなくなってしまい治療関係を越えようとする行動に移してしまうこともあります(行動化)。


心理カウンセラーは、比較的早期にこのような『陽性転移』に気づくことができます。それは何故かというは、心理カウンセラーはあくまで客観的にカウンセリングを遂行し、両者(心理カウンセラーとクライエント)の関係性に気付けるからです。しかしクライエントは、自分自身の主観にどっぷり浸かってしまいますので『本物の恋愛感情』と勘違いしてしまうこともあるのです!


一方『陰性転移』とはどのようなものでしょうか。
端的に言ってしまえは『陽性転移』の逆ですので、クライエントが心理カウンセラーに対し、ネガティブで否定的な感情を持つことです。

例えば、カウンセリングセッションを重ねるにつれ、クライエントが心理カウンセラーに対して「自分のことを大事にしてくれていない」「理解しようとしてくれていない」などといった不信感や怒り、憎しみの感情が湧いてきたりします。

こうした陰性転移による感情は、クライエントの過去の両親(またはそれに近しい人物)との関係のパターンや葛藤を反復していることが多く、クライエントが幼少の頃に両親に抱いていた感情であったり(「大事にされていない」「理解してくれない」など)、欲求が十分に満たされていなかったりした可能性があると考えられます。


この陰性転移については、エスカレートするとクライエントから一方的に心理カウンセリングを終了してしまうといった行動に出てしまい、それまでの心理カウンセリングが無に帰すこともありますが、実は心理カウンセラーはこの陰性転移をとても大切にします。

というのも、どの様な状況や言葉かけなどで陰性転移が起こっているかと言う分析をすることで、クライエントの問題の本質が見えてくるからです。


クライエントが陰性転移を起こしている時、心理カウンセラーが自己一致(※)しており、カウンセリングセッションを俯瞰で観察することができていれば、クライエントの抱える問題の、本質や課題の根本へと結びつけることができ、解決への糸口が見つかることが多くあります。

※自己一致
「純粋性」とも呼ばれ、「自分自身のありのままの感情を体験し、受容していること」ともいえます。心理カウンセラーは、カウンセリングセッションにおいては、ありのままの自己・自分であり、現実に経験していることが自分自身の気づきとして正確に表現されていなければならないとされます。


では、クライエントの皆さんはどうしたら良いのか。
心理カウンセラーと過ごす時間(カウンセリングセッション中)の自分自身の感情を『快』『不快』の感覚だけで判断しないようにしていただきたいと思います。クライエントが感じていることは、おおよそ心理カウンセラーはそれを見抜いていることが多くて(笑)『快』『不快』のその先にある【本当の問題】について考えています。

ただもし、クライエント自身が「陽性転移している」「陰性転移している」と感じた時、もっと言うと「恋愛感情を抱いているかも」「すごくキライだと思っているかも」と気付いたのであれば、それはキチンと心理カウンセラーに伝えるべきです。

クライエントが転移を経験している時、それを心理カウンセラーに伝えることで、心理カウンセラーは今後、両者の関係性をより良くする方法を考え、それらに対処します。

一番やってはいけいのは、自己判断により『陽性転移 → 恋愛感情 → 金品を贈る(自宅まで押しかける)』などや、『陰性転移 → 憎悪 → 無断キャンセル』などのように、行動をエスカレートしてしまうことです。



心理カウンセラーは「精神・心理の専門家」です。
ですので、心理カウンセラーは自分自身の心理に敏感に反応すると共にそれを観察し、クライエントとの関係性の中でなぜそうなったのかを分析します。

ただ、ニコニコとクライエントを受容し共感しているだけではありません。


そういう意味では、心理カウンセラーはとても腹黒いとも言えるでしょう(笑)

心理カウンセリングを受ける人に知っていてほしいこと③覚悟を持って(リライト版)

 心理カウンセリングを受けたいと思っている人、受けようと思っている人に知っておいてほしいことの第3弾です。


『覚悟を持って』


とても重いタイトルですが(笑)なぜ「覚悟を持つ」必要があるのか?できるだけ詳細にご説明致します。


①心理カウンセリングは自分自身と向き合うこと

このブログ記事『心理カウンセリングを受ける人に知っていてほしいこと①答えはクライエントが持っている』にもお伝えしておりますが、答えはクライエントが持っています。心理カウンセラーは、その答えを様々な手法を用いて“気付き”を与えて、クライエントの認知や行動の変容を起こし、問題解決を目指します。

その過程の中で、クライエントが悩んだ時、不快に思った時、つらい気持ちになった時、そのシチュエーションを思い出して貰う事があります。

思い出すということは、その時の感情も一緒に思い出すことに繋がり、セッションの間、またはその後までその感情を引きずることもあります。

実はボクもこのblogで自分が経験した体験を記事としてUPする時、書きながら当時の感情を思い出したりシチュエーションを思い出したりすることで、思いがけずメンタル不調に陥った経験もあります。感情を“反芻(はんすう)”してしまうんですよね。ですので、過去の経験を記事にする時は、十分に時間が経ち自分の中で落とし込めている事から書くようにしています。

話しを元に戻します。
本来ならば、あまり思い出したくないことを思い出すこともありますので『覚悟をもって』受けていただきたいと思います。


②嫌な自分が顔を出す

セッションの中で過去を振り返ったり感情を想起したりする時、何故その様な状況になってしまったのか、どうしてそれが苦痛と感じてしまうのか等、その事実を俯瞰で見たり客観的に観察することがあります。そうするとその時のクライエント自身の対応の仕方や受け止め方において『メンタルヘルス上好ましくない事』が見えてきたりします。つまりクライエント自身の苦手なこと・欠点・改善点などが、自分自身で見えてきます。それを『受け入れ改善すべきこと』として受容できるかどうか、が鍵になることがあります。

ボクも過去、心理カウンセリングを受けていた時、心理カウンセラーとの信頼関係が十分築けていていても、心理カウンセラーから提案されたことなどを「そうは言っても…」「今の自分には無理」「変えたくても変えられない」と言う言い訳をして(笑)、表面上は受け入れた様な風で(笑)やり過ごしていたこともあり、後々から後悔することもありました。

話しを元に戻します。
自分の嫌な面、望ましくない面が見えてくることもあるため『覚悟をもって』受けていただきたいと思います。


③自分自身の信じてきたモノや価値観を否定することもある

例えば『人間関係の築き方』や『正義や悪の判断基準』『価値基準となる優先順位』など、クライエントが長年培ってきたモノを、根底からひっくり返さなければならない事も出てくるのです。それは、クライエントが人生という長い旅路を歩んできて自分自身で取捨選択してきたり、時には両親や血縁者または近親者の助言などを信じて貫いてきたモノなど、それらを一度、見直す必要が出てくることがあります。するとそれまで信じていた物事を“変化させる”必要性が出てくるのです。

それは、正しいと思っていたりベストだと思っていた方法が、実はクライエント自身を傷つけたり本来の自分を抑圧したりしていることであったりするからです。

古い価値観を新しい価値観にアップデートすると言うのは、非常に苦痛を伴うこともあります。それは、新しい価値観が絶対的に今の自分自身に必要だと分かっているけれど、古い価値観を否定するはそれまでの自分自身の信じてきた物事を否定することに繋がり、大げさに言ってしまうと、今までの『自分の存在意義』みたいなものが揺らいでしまう可能性もあるからです。




今回は少し怖いことばかりをお伝えしました。

誤解のないようにお伝えしたいのは、これらの事全てがご自身の中で起きるかもしれないし、起きないかもしれない、と言うことです。それに起きたとしてもその程度に大小の差があります。それは理由は、カウンセリングセッション次第のところもありますし、抱える問題の本質がどこに(何に)あるのかにもよります。

だけれども、いちばんお伝えしたいのは、必ず『そばに心理カウンセラーが寄り添っている』と言うことです。


変わること、変われることは、怖いことではありません。喜ばしいことだと思って頂きたいと思います。

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 2024年11月28日(木)~30日(土)にかけ、東京において開催された『 第38回日本エイズ学会 』の『POSITIVE TALK 2024』にて、HIV陽性者の当事者としてスピーチをしてきました。まずは、その発表原稿の全文を、こちらでご紹介させて頂きます。 なお、読みやすい...