自己紹介

自分の写真
オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極症)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2024年10月29日火曜日

苦しんでいるのは若者だけではない…自傷行為の理解と対応

連日、『〇〇横キッズ』と言う呼ばれ方でマスコミに取り上げられている、若者の問題。そこには、市販薬を中心としたOD(オーバードーズ)を常習化してしまった若者の姿があります。


ボクは最初、これらの事実を耳にする度に、何となく「ただの依存行為ではないかも…」と、ずっと思ってきました。そんな矢先、ボクのクライエントの一人が、自傷行為(リストカット)を経験されておられる方に出会い、前述の『〇〇横キッズによるOD』と『リストカットなどの自傷行為』について、深く考えるようになりました。


※なお、この記事は、ボクのクライエントの許可を得て作成し、掲載しています。



1.自傷行為とは?


自傷行為とは、〝自殺以外の目的で、死に至らない程度の予測を持って、意図的に自分の体を傷つける行為〟と定義されています。代表的なものとしてはリストカットが挙げられますが、皮膚を焼く、つねる、壁に頭を打ち付けるなど、様々な形態があります。先ほど出てきたODも、自傷行為の一つだという見解のようです。



2.自傷行為の背景


自傷行為は、激しい怒りや不安、緊張、気分の落ち込みといった、つらい感情を軽減するために行われて、こうした感情の背景には、家庭内での虐待、いじめ、人間関係のトラブルなど、様々な問題が潜んでいることが多いようです。



3.なぜ自傷行為で気持ちが楽になるのか?


脳科学的に言われているのは、自傷行為をすることで、脳内麻薬様物質(エンケファリンやβ-エンドルフィン)が分泌され、一時的につらい気持ちが和らぐという効果があることが分かっています。また、自傷行為によって意識の中でつらい記憶や感情を切り離し、「なかったこと」にすることで、心の痛みから逃れようとしているという側面もある、と言われています。


脳内麻薬様物質が分泌される、と言う意味では、いわゆる依存症と同じですよね。依存症には『物質依存』と『行為依存』があって、前者は体内に依存物質を取り込むことで形成される依存症の事で、違法薬物・市販薬や処方薬・アルコールなどの依存があります。後者は、何かの行為をする事で形成される依存の事で、インターネット・セックス・ギャンブル・万引きなどがあります。


この様に考えると、自傷行為というのは『行為依存』に分類されるものの一種かもしれませんね。



4.自傷行為の問題点


①一時しのぎでしかない

自傷行為は、あくまでも一時的な対処法に過ぎないと言われています。根本的な問題解決を先延ばしにすることで、状況がより複雑化・深刻化する可能性があります。


②エスカレートしやすい

自傷行為を繰り返すうちに耐性ができ、より強い刺激を求めるようになる、と言われています。そのため、自傷の頻度や強度が増加し、最終的には「切ってもつらいが、切らなきゃなおつらい」という状態に陥ってしまう可能性もあります。


これらの観点から、まさに「行為依存」であると言えるかもしれません。一時しのぎだと頭で分かっていても、せずにはいられない。さらに「もっと、もっと」と強い刺激を求めてしまう…。




5.自傷行為への対応


①誤った対応

 ◯頭ごなしに叱責する

 ◯自傷行為を禁止する、約束を強要する

 ◯「誰かの真似」「関心を引こうとしている」などと決めつける

 ◯過剰に同情する、驚く


②望ましい対応

 ◯冷静に状況を把握し、必要に応じて傷の手当てをする

 ◯否定せずに、本人の気持ちに寄り添い、話を聞く

 ◯自傷行為の原因を探る

 ◯自傷行為以外の、より健康的な対処法を一緒に考える

 


6.自傷行為はSOSのサイン

自傷行為は、子どもからのSOSのサインです。「自分を傷つけたいほどつらい」という子どもの心の叫びに耳を傾け、適切なサポートを提供することが重要です。


そして、自傷行為は、子ども時代だけの問題ではありません。


大人になってからも「生きる手段の一つ」として「自傷行為をし続ける」ことをせざるを得ない方もおられます。




このブログ記事を締めくくるに当たり、最初にご紹介しました、ボクのクライエントをご紹介致します。


この方は気分障害によって休職され、ボクのところへ来られました。そして心理カウンセリングを進めるうち、過去にリストカットをしていた事、また、今でも心の調子が悪いときにはリストカットをする、と言うことを開示してくださいました。


その方からのお言葉です。


「自傷行為をする方へ。自傷行為をすることで一時的に気持ちは楽になるし生きられるようになる。けれど、できれば楽な時に、自傷行為以外の方法で楽になれることを探して欲しい。それは、自傷行為は一時しのぎで根本的な問題解決ではないから。けれど、自傷行為を無理に辞める必要はない(それは生きるためだから)。ただ、それを最終手段の“逃げ場”と捉えてほしい。」


「自傷行為を見つけてしまった方へ。自傷行為は生きるための手段だから、無理に止めさせないで欲しい。それよりも、話しを聞いてそばにいてあげて欲しい。それだけで十分。強く否定したり大げさに捉えられると、当事者も困惑してしまう。それは“死にたいからする行為”ではなくて“生きたいからする行為”だから。」




2024年10月19日土曜日

過剰適応~日本社会特有の落とし穴?

 現代社会において、ストレスや精神的な健康は重要なテーマとなっています。特に日本では、周囲の期待に応えようとするあまり、自分自身を犠牲にしてしまう「過剰適応」が問題視されています。

過剰適応は、職場や学校、家庭など、あらゆる場面で起こりうるものであり、一見すると真面目で周囲に気を遣う「良い人」に見えながらも、内面では大きなストレスを抱え込み、心身のバランスを崩してしまう可能性を秘めています。

もう、ここまで読んで「あ!自分の事かも…」とお思いの方もおられるのでは?


1.過剰適応とは?

過剰適応とは、周囲の環境に過度に適応しすぎてしまい、自分自身の内的欲求や感情を抑制してしまう状態を指します。具体的には、以下のような特徴が挙げられます。

○周囲の人の評価を過度に気にする
○他人に嫌われたり、拒否されたりするのを極端に恐れる
○自分よりも他人を優先し、自己犠牲的な行動をとってしまう
○断ることが苦手で、無理な要求にも応じてしまう
○自分の意見や感情を抑圧し、常に「いい子」であろうとする

2.過剰適応の背景

過剰適応は、日本の文化や社会構造と深く関連しているのでは?とボクは思っています。 日本では、協調性や同調性が重視される傾向があり、周囲との調和を乱さないように、自分の意見や感情を抑えることが美徳とされてきました。また、他人からの評価を非常に気にする文化で、「人に迷惑をかけてはいけない」「周りの期待に応えなければならない」という意識が強いことも、過剰適応を生み出す要因となっていると言えるのではないでしょうか。

3.過剰適応がもたらす影響

過剰適応は、以下のような深刻な影響をもたらす可能性があります。

ストレス:常に周囲に気を遣い、自分の感情を抑圧することで、心身に大きなストレスがかかります。
精神疾患:過剰なストレスは、うつ病、不安障害、パニック障害などの精神疾患を引き起こすリスクを高めます。
燃え尽き症候群:仕事や人間関係に過剰に適応しようとするあまり、燃え尽きてしまうことがあります。
自己喪失:自分の意見や感情を抑え続けることで、自分らしさを見失い、自己肯定感が低下してしまう可能性があります。


4.じゃあどうする?過剰適応への対策

過剰適応を防ぎ、自分らしく生きるためには、以下の対策が有効だと言われています。

①自分自身の状態を把握する

まずは、自分が過剰適応に陥っていないか、客観的に自分自身を見つめ直すことが重要です。自分の感情や欲求に素直に向き合い、ストレスを感じている場合は、その原因を分析してみることをオススメします。

②アサーションを身につける

勇者ケンゴのblog「正しい自己主張の仕方!!アサーションスキルとは(リライト版)」をご参照下さい。アサーションを身につけることで、相手に配慮しながらも、自分の意見や気持ちを伝えることができるようになり、過剰適応を防ぐことができます。これ、結構大事!!

③自分を大切にする

実はボク「自分を大切にする」と言う言葉は嫌いです。だって、どんなことをすることが「自分を大切にすること」なのか、と言う具体的な方法が思いつかなかったから。でも、一つ言えることは「自分を犠牲にし誰かのため“だけ”に奉仕する」と言うことは、「自分を大切にして“いない”」と言うことだと、今は理解しています。

④周囲に頼る

これが苦手な人が多い!ボクも含め。頼れる先をたくさん持つことが、もちろん過剰適応にも効果的ですし、生きづらさを解消するためにも、とても大切なことだと思います!!

⑤専門家のサポートを受ける

ぜひ、心理カウンセリングを利用して下さい。これは④周囲に頼る、の一つだと思っていただければ結構です。

5.まとめ

過剰適応は、日本社会特有の文化や価値観が背景にある、複雑な問題です。けれど、自分自身の状態を理解し、適切な対策を講じることで、過剰適応を防ぎ、自分らしく生きることができます!そう、できるんです!! 周囲の期待に応えることも大切ですが、自分自身を護り、生きやすく生活するために、ぜひ、たくさん頼れる先を見つけて、十分に頼って下さい(笑)。

そして「勇者の部屋」のオンラインカウンセリングもぜひ、ご活用下さい(笑)

2024年10月10日木曜日

北欧発!自然と調和する生き方「フリルフスリフ」のススメ

現代社会はストレスに溢れ、心身のバランスを崩しやすい環境にあります。そんな中、北欧発のライフスタイル「フリルフスリフ」が注目を集めています。フリルフスリフとは、ノルウェー語で「気ままなアウトドア生活」「野外での暮らし」を意味し、自然の中に身を置き、ありのままに暮らすシンプルな考え方です。自然と調和し、心身を解放することで、真の豊かさを感じることができるライフスタイルと言えるでしょう。


1.フリルフスリフの起源と歴史

フリルフスリフという言葉は、1850年代にノルウェーの劇作家・詩人であるヘンリック・イプセン氏の作品「オン・ザ・ハイツ」の中で初めて使われたと考えられています。イプセン氏は、自然の中で過ごす時間がメンタルヘルスに好影響を与えることを提唱しました。

北欧諸国、特にノルウェーでは、国土の大部分が自然に囲まれ、人々は古くから自然と共存するライフスタイルを送ってきました。厳しい自然環境の中で生き抜く知恵として、フリルフスリフは人々の生活に深く根付いてきたのです。


2.フリルフスリフの具体的な活動

フリルフスリフは、特定の活動や習慣を指す言葉ではありません。むしろ、アウトドアで過ごす時間全体を包括的に表す概念と言えます。

具体的な活動例としては、以下のようなものが挙げられます。

●散歩
●ハイキング
●ピクニック
●スキー
●釣り
●焚き火を囲んでBBQ
●ラフティング
●カヌー
●テントサウナ
●森歩き

重要なのは、年齢や体力レベルに関係なく、誰もが自然と触れ合い、楽しむことができるということです。

3.フリルフスリフがもたらす効果

フリルフスリフは、心身に様々なポジティブな効果をもたらします。

①メンタルヘルスの向上: 自然の中で過ごすことで、ストレスから解放され、心身のリフレッシュを促します。

②ウェルビーイング: 自然と一体になることで、自己肯定感や幸福感が高まります。

③創造性の刺激: 自然の美しさや静けさは、インスピレーションを与え、創造性を刺激します。

④健康増進: 適度な運動は、体力向上や免疫力強化に繋がります。

⑤環境問題への意識向上: 自然と触れ合うことで、環境問題への意識が高まり、持続可能な社会への貢献に繋がります。


4.現代社会におけるフリルフスリフの重要性

現代社会は、デジタル化や都市化が進み、自然と触れ合う機会が減少しています。そのため、ストレスや不安を感じやすい環境に置かれていると言えます。

コロナ禍を経て、人々の価値観やライフスタイルは大きく変化しました。健康やウェルビーイングへの関心が高まり、自然と触れ合うことの重要性が見直されています。

フリルフスリフは、そんな現代人にこそ必要なライフスタイルと言えるでしょう。

フリルフスリフは、心身を癒し、真の豊かさを追求する北欧発のライフスタイルです。自然と調和することで、現代社会のストレスから解放され、心豊かな生活を送ることができるでしょう。

2024年10月8日火曜日

HIV陽性者に対する偏見・差別はなぜ起こる?その①【情報を正しく扱う】(リライト版)

今回のblogは、【情報を正しく扱う】をキーワードに、HIV感染症およびエイズ患者・HIV陽性者に対する偏見・差別(行動)がなくならないのか、今の日本における現状を、ボクが日常的に感じている事をご説明しました。次回からは3回に分け、もう少し詳しくお伝えしていきます。

 以前ボクが書いたblog記事「HIV/AIDSの偏見差別に思う・RED RIBBON LIVE NAGOYA 2023に参加して」で少しお伝えした、HIV陽性者に対する偏見や差別が起こる要因。ボクはその一つに「HIV陽性者が身近にいると感じられないから」と一つの提案をしました。しかし、それ以外にも、いくつもいくつも要因があり、それらが複雑に絡み合って今の状態があると思います。

今回はまず、今の日本に於いて、HIV/AIDSに対する偏見や差別(行動)がなくならないのは何故か、【情報を正しく扱う】をキーワードに順を追ってご説明したいと思います。また、次回以降、今回のblogでお伝えした事を【医学的側面】【社会福祉学的側面】【心理学的側面】の3つに分けて、詳細をお伝えしていきますね。



1.偏見・差別(行動)をなくすには「正しい情報を知る」事が大事と言うけれど…

今の世の中、行政や医療機関など、HIV感染症やAIDSに関する知識というのは、非常に新しくそして正しい情報が溢れています。しかもネット社会ですので、誰もが簡単にその情報を手に入れることができます。それなのに「偏見・差別(行動)」がなくならないのはなぜでしょうか?それは、【情報を正しく扱う】事に関係します。


2.『情報を正しく扱う』とはどういうことか

今の世の中、情報が溢れている事は事実です。しかし、その情報をキチンと「受け取りに行く」「情報収集する」と言う行動を起こさなければ、その人に正しい情報は伝わりません。情報を発信する側が、様々な手段を使って色んなタイミングで発信していたとしても、受け取る側にそれを「受け取ろう」とする意志がなければ、それは“情報がない” ということと同じことです。

つまり情報というのは【発信する側の問題】【受け取る側の問題】があるわけです。


3.HIV感染症・免疫機能障害は目に見えない障害

HIV感染症というのは、外見からでは判断がつかない病気で、免疫機能障害というのは目に見えない障害です。つまり本人が「私はHIV感染症です」「私は免疫機能障害です」と開示(何らかの方法で周知してもらうこと)しなければ分かりません。もしHIV陽性者自身が周囲の人に開示しなければ、誰もそれを知ることなく、一緒に生活したり仕事したりすることになります。


4.リアリティがない


3で述べたようにHIV陽性者が身近にいることを知らなければ、また、大切な人がHIV陽性者であることを知らなければ、おそらくHIV陽性者の周囲の人はあえて「HIV感染症ってどんな病気?」「免疫機能障害ってどんな障害?」と知ろうとしないでしょう。つまり2に述べていることに関係してくるわけです。HIV陽性者自身が「私はHIV陽性者です!」「私は免疫機能障害です!」と声を挙げなければ、誰もその病気や障害について、“あえて知ろう”としない、つまり【自分たちの周囲にHIV陽性者がいるとは思っていないから、正しい情報を手に入れない】と言う事になってしまうのです。


5.『HIV陽性者であることを開示する事』のリスク


しかし今の世の中、HIV/AIDSに対する偏見や差別(行動)はなくなっていません。ですので、当事者は余計に声を挙げにくい。つまり「開示することで不利益を被るかもしれない」「差別行動を受けるかもしれない」と言う恐れがあるわけです。そうなるとドンドン、当事者は開示しづらくなるわけです。


6.HIV感染症はSTI(性感染症)であるという事実


現在の日本において、HIVの感染経路のほとんどがSTI(性感染症)です。つまり性行為で感染します。そしてそれが、男性間の性行為で感染することが多いのが現状です。それがまた、大きな偏見を生む原因となっています。「不特定多数の相手と関係を持つ人」「アンセイフなセックスをする人」「男性と性行為する男性(セクシャルマイノリティ)」と言う別のスティグマがあり、尚更、自分自身の病気や障害を開示しづらくなっていると言う現状があります。


※スティグマとは… 社会的な偏見や差別の対象となる特徴や属性を指す言葉です。例えば、身体的な特徴、疾病、障害、人種、宗教、性別、性的指向など、多岐にわたる特徴や属性を指します。



今回のblogでは、【情報を正しく扱う】をキーワードに、HIV感染症およびエイズ患者・HIV陽性者に対する偏見・差別(行動)がなくならないのか、今の日本における現状を、ボクが日常的に感じている事をご説明しました。次回からは3回に分け、もう少し詳しくお伝えしていきます。

HIV陽性者に対する偏見・差別はなぜ起こる?その②【医学的側面】(リライト版)

 前回は、HIV陽性者に対する偏見・差別(行動)は何故起こるのか、【情報を正しく扱う】をキーワードに大きな流れをご説明しました。今回はそれを【医学的側面】から考えてみたいと思います。

偏見や差別(行動)と言うのは、様々な要因が絡み合います。突き詰めていくと個人個人の価値観や倫理観、哲学や生育歴などが関与してきますので、それはとりあえず脇へ置いておいて(笑)多くの人が当てはまるであろう事実に基づき、ボクの知識と経験を総動員して(笑)それを一つ一つ紐解きながら、できるだけわかりやすくお伝えできれば、と思っております。



1.感染症であるということ

人は目に見えない脅威に恐れを抱きます。逆に言えば目に見えて認識できる脅威に対しては、その脅威を脅威として認識することで、例えばその脅威から遠ざかる(遠ざける)とか、脅威を消滅させる方法がわかっていればその方法で対処するなどの行動を取ることができます。

しかし、目に見えない脅威にはそれが通用しません。

ですので、脅威がそこにあると分かっていても目に見えないことで恐怖心を呼び起こします。

それが人間の健康を脅かすウィルスや菌などに当てはまります。この数年間、Covid-19の感染拡大に伴って、人はその見えない脅威にとても恐怖を感じ、マスクをし、手指消毒を行い、見えない脅威をなんとかして体内に入れないようにしようと躍起になっていました。一時期は街から人が消え、会話のない食事をし、密にならないと言う2mの間隔を空け、ディスプレイや透明なアクリル板越しでしか顔を見ることができなくなりましたよね。

それはHIVも同じことです。


2.性感染症であること

HIV感染症の感染経路は大きく分けて3つ。母子感染、針刺し感染、性感染です。母子感染は母体がHIVに感染している際、胎児が産道を通る時に母体から感染してしまうと言う経路です。針刺し感染は、違法薬物などの注射の回し打ちや医療事故による経路です。そして性感染は、性行為によって伝染る経路です。現在の日本では、母子感染や針刺し感染はほとんどなく、性行為による感染経路がほとんどだと言われます。

皆さんは「性感染症」と言うとどのようなイメージがあるでしょうか?
例えば…
・セックスワーカー
・不道徳
・節操がない
・不義理
・刹那的
・無責任
そんなイメージが湧いてきませんか?

日本はいつの間にか『性』に対して閉鎖的で、何となく『負のイメージ』が植え付けられてしまいました。一説によると戦後、他宗教の影響を受けているとのことですが、詳しい事は割愛します。

そして性行為で伝染る病気であるという事だけで、忌み嫌われる原因になっていると思います。


3.行動免疫システムに従う生物

生き物は『自分の生命に危険を及ぼす可能性のあるウィルスや菌、カビなどに汚染されている(かもしれない)ものに対して“嫌悪感情”を覚える』と言う習性があります。例えば、糞尿などや人の吐瀉物、カビが生えていたり腐っていたりする物などの存在が分かったり目に見える形で認識すると、「触れてはいけない」「口にしてはいけない」など『生物としてのアラーム』が鳴り、自然にそれらを避けるような行動をとります。

つまり『何かに感染している』と言う事実があるだけで、人には『それを嫌悪し避ける』事が当たり前の反応として備わっているのです。この様な行動をとることを『行動免疫システム』と言い、人間だけでなく多くの生物の習性として備わっています。

誤解を恐れずに言うと「差別することは自然な現象」とも言えるわけです。

さて今回は、HIV陽性者に対する偏見や差別がなぜ起こるのか、【医学的側面】から少し考えてみました。次回は、HIV感染者にはどんな特徴があるのか、またその療養生活などの社会福祉学的側面からお伝え致します。

最新のblog

 2024年11月28日(木)~30日(土)にかけ、東京において開催された『 第38回日本エイズ学会 』の『POSITIVE TALK 2024』にて、HIV陽性者の当事者としてスピーチをしてきました。まずは、その発表原稿の全文を、こちらでご紹介させて頂きます。 なお、読みやすい...