連日、『〇〇横キッズ』と言う呼ばれ方でマスコミに取り上げられている、若者の問題。そこには、市販薬を中心としたOD(オーバードーズ)を常習化してしまった若者の姿があります。
ボクは最初、これらの事実を耳にする度に、何となく「ただの依存行為ではないかも…」と、ずっと思ってきました。そんな矢先、ボクのクライエントの一人が、自傷行為(リストカット)を経験されておられる方に出会い、前述の『〇〇横キッズによるOD』と『リストカットなどの自傷行為』について、深く考えるようになりました。
※なお、この記事は、ボクのクライエントの許可を得て作成し、掲載しています。
自傷行為とは、〝自殺以外の目的で、死に至らない程度の予測を持って、意図的に自分の体を傷つける行為〟と定義されています。代表的なものとしてはリストカットが挙げられますが、皮膚を焼く、つねる、壁に頭を打ち付けるなど、様々な形態があります。先ほど出てきたODも、自傷行為の一つだという見解のようです。
2.自傷行為の背景
自傷行為は、激しい怒りや不安、緊張、気分の落ち込みといった、つらい感情を軽減するために行われて、こうした感情の背景には、家庭内での虐待、いじめ、人間関係のトラブルなど、様々な問題が潜んでいることが多いようです。
3.なぜ自傷行為で気持ちが楽になるのか?
脳科学的に言われているのは、自傷行為をすることで、脳内麻薬様物質(エンケファリンやβ-エンドルフィン)が分泌され、一時的につらい気持ちが和らぐという効果があることが分かっています。また、自傷行為によって意識の中でつらい記憶や感情を切り離し、「なかったこと」にすることで、心の痛みから逃れようとしているという側面もある、と言われています。
脳内麻薬様物質が分泌される、と言う意味では、いわゆる依存症と同じですよね。依存症には『物質依存』と『行為依存』があって、前者は体内に依存物質を取り込むことで形成される依存症の事で、違法薬物・市販薬や処方薬・アルコールなどの依存があります。後者は、何かの行為をする事で形成される依存の事で、インターネット・セックス・ギャンブル・万引きなどがあります。
この様に考えると、自傷行為というのは『行為依存』に分類されるものの一種かもしれませんね。
4.自傷行為の問題点
①一時しのぎでしかない
自傷行為は、あくまでも一時的な対処法に過ぎないと言われています。根本的な問題解決を先延ばしにすることで、状況がより複雑化・深刻化する可能性があります。
②エスカレートしやすい
自傷行為を繰り返すうちに耐性ができ、より強い刺激を求めるようになる、と言われています。そのため、自傷の頻度や強度が増加し、最終的には「切ってもつらいが、切らなきゃなおつらい」という状態に陥ってしまう可能性もあります。
これらの観点から、まさに「行為依存」であると言えるかもしれません。一時しのぎだと頭で分かっていても、せずにはいられない。さらに「もっと、もっと」と強い刺激を求めてしまう…。
①誤った対応
◯頭ごなしに叱責する
◯自傷行為を禁止する、約束を強要する
◯「誰かの真似」「関心を引こうとしている」などと決めつける
◯過剰に同情する、驚く
②望ましい対応
◯冷静に状況を把握し、必要に応じて傷の手当てをする
◯否定せずに、本人の気持ちに寄り添い、話を聞く
◯自傷行為の原因を探る
◯自傷行為以外の、より健康的な対処法を一緒に考える
6.自傷行為はSOSのサイン
自傷行為は、子どもからのSOSのサインです。「自分を傷つけたいほどつらい」という子どもの心の叫びに耳を傾け、適切なサポートを提供することが重要です。
そして、自傷行為は、子ども時代だけの問題ではありません。
大人になってからも「生きる手段の一つ」として「自傷行為をし続ける」ことをせざるを得ない方もおられます。
この方は気分障害によって休職され、ボクのところへ来られました。そして心理カウンセリングを進めるうち、過去にリストカットをしていた事、また、今でも心の調子が悪いときにはリストカットをする、と言うことを開示してくださいました。
その方からのお言葉です。
「自傷行為をする方へ。自傷行為をすることで一時的に気持ちは楽になるし生きられるようになる。けれど、できれば楽な時に、自傷行為以外の方法で楽になれることを探して欲しい。それは、自傷行為は一時しのぎで根本的な問題解決ではないから。けれど、自傷行為を無理に辞める必要はない(それは生きるためだから)。ただ、それを最終手段の“逃げ場”と捉えてほしい。」
「自傷行為を見つけてしまった方へ。自傷行為は生きるための手段だから、無理に止めさせないで欲しい。それよりも、話しを聞いてそばにいてあげて欲しい。それだけで十分。強く否定したり大げさに捉えられると、当事者も困惑してしまう。それは“死にたいからする行為”ではなくて“生きたいからする行為”だから。」