自己紹介

自分の写真
オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極症)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2024年3月4日月曜日

それホントの「繊細さん」?「HSP」と言う言葉の独り歩き

 よく耳にするようになりましたよね。『HSP』とか『繊細さん』とか。

最近は書籍もたくさん出ていますし、『HSP専門カウンセラー』なる人もおられるようですが…。ネット上では「HSP セルフチェック」などで検索すると無数のサイトがヒットしてきます。これほどまでに『HSP』と言う言葉が広がりながら、一般化していく中で、ボクが心理カウンセラーとなって、その言葉を改めて勉強した時に『???』と思うことがたくさん出てきたんです。


そもそも、『HSP』という言葉は誰が提唱してそれはどんなな内容のものだったのでしょうか。

まずは、言葉の整理から(笑)ゴメンナサイ。これがボクのスタンスなんです。


HSPとは…
HSP:Highly Sensitive Person。1996年にアメリカの臨床心理学者のエレイン・アーロンが提唱したのが最初で、学術的には「感覚処理感受性」と呼ばれるものです。「中枢神経系の感度の向上と、物理的、社会的、感情的な刺激に対するより深い認知処理」に関わる気質または性格特性です。この特性は、「新しい状況で『確認するために一時停止』する傾向、微妙な刺激に対するより高い感受性、対処行動を採用するためのより深い認知処理戦略の関与によって特徴付けられます。


ここで強調しておきたいのは、「気質・性格特性だ」と言うことです。『疾患の名前や学術的症候群の名前』ではありません!!もっと噛み砕くと「内向的だ・外交的だ」とか「おおらかだ・神経質だ」と同じような並びにこの「HSP・繊細さん」と言う言葉がある、と言うことです。

感覚処理感受性は、いわゆるHSPとして提唱されているような、「生きづらさ」を説明するものでもなければ、「特別な才能」という意味もありません。ただ、ニュートラルに環境に対する感受性を指すものとされます。「感覚処理感受性」は正規分布で表されますからHSPと非HSPと分けられるものでもありません。「〇〇型HSP」というようなタイプ分けも存在しません。


しかし何故か今の日本では「HSP」と言う言葉が独り歩きし始めたのでしょうか?

それは、本来であれば、自分自身の人間関係の築きづらさや生きづらさの原因が「自分自身の歪んだ認知のせい」や「人とは違った物事の捉え方」である筈なのに、それを自分自身の問題点・改善点として、真正面から捉えることができない(したくない)ために、何となく学者が提唱した言葉や定義を歪曲して受け止め、あたかもそこに理由があるようかの様に関連付けることで、本当の問題(認知の歪み・人と違った物事の捉え方)から目を逸らすために利用したのではないか、と推測します。


今、日本で『HSP』と言うと以下のような特徴があると言われています。
・感受性が高い
・環境刺激に敏感に反応する
・情報処理が深い
・感情や環境変化に強く影響を受ける
・共感力が高い
・細部に気づく
・洞察力が鋭い

など

しかし、ボクはこの様に考えます。
・感受性が高い → 自分自身と他人との境界線が曖昧
・環境刺激に敏感に反応する → 周囲の目が気になる、または恐怖心が強い
・情報処理が深い → 考え過ぎる
・感情や環境変化に強く影響を受ける → 適応能力が低い
・共感力が高い → 想像力が豊かで時に過度な妄想になる
・細部に気付く → 目ざとい
・洞察力が鋭い → 思い込みが激しい

など


ごめんなさい。バッサリ切ってます(笑)
けれど…けれどね、何度も言いますが「HSPは性格特性」なんです。病気でも無ければ診断名でもないんです。

先日、とあるSNSで『この世にHSPさんがいなくなったら、誰も人を大切に思わなくなり、戦争が起き、思いやりのない世界になる』みたいなパワーワードで主張される方がおられ、「おいおい!HSPでなくとも思いやりのある人はたくさんおるし、感受性豊かな人は沢山おるで(汗)」と思い、思わずコメントしてしまいました。


じゃあ、今、日本で言われている『HSP・繊細さん』の本当の正体はなんだろうか?そう思った時、ボクはこう思いました。「他人軸で生きている人のことではないだろうか?」と。

以前、ボクが書いたblog『万病の元!!その③「他人軸」』にも書きましたが、『他人軸』とは、自分の考え方を持たず、他人の評価ばかりを気にして行動する人のことを指します。他人軸の考え方を持つ人は、基本的に「他の人から嫌われないようにしよう」という考えばかりになります。そのため、いつまで経っても自分に自信が持てず、他人に合わせて行動してしまうのが特徴です。

どうですか?『HSP・繊細さん』とオーバーラップする部分もかなりあると思うんです。

そう考えると、生きづらさを抱えるのもうなずけます。


以前、心理学者の植木 理恵氏が、とあるテレビ番組でおっしゃられてました。「ネットや雑誌に出ている〝自己診断〟や〝性格診断〟はしない方が良い。それは、それをすればするほど、そこに書かれていたり述べられている〝性格や特性〟に知らず知らず、自分が引っ張られそこに当てはめようとしてしまうから」と。

これを聞いた時、ボクはまさに〝目からウロコ〟でしたね!
そうそう。そうなんです。

心理療法(ここではあえてこの様に表現します)で行われる様々な検査があります。それは深層心理を探ったり、表出されていない感情をあらわにしたりすのですが、検査者は不用意にその結果をクライエントには伝えません。その理由は多岐にわたりますが、その一つに「その結果をクライエントが知ることで、その結果に自分を寄せてしまう」と言うことがあります。


今回は、ちょっと厳しく『HSP・繊細さん』についてボクなりの解釈をお伝えしました。ただ、これだけは覚えておいていただきたいことがあります。


ご自身の生きづらさを「HSPだから」と言う結論で片付けるのではなく、さらにその向う側にある「あなた自身の問題点・改善点」にキチンと向き合い、本気で生きづらさを改善したいと思うのであれば、本来の自分自身(闇の部分も含む)と向き合いそれを受け入れ、そして変化することを恐れてはいけない、と言うことを覚えておいていただきたいと思います。

2024年2月29日木曜日

実は深刻な問題…職場での孤立と孤独感

皆さんは働いていて「孤独感」を感じたことがありますか?実はボクはあります(笑)それは、前職を休職する直前は、本当に孤独でした。もちろんそれは、ボク自身に問題があって、メンタル不調を何度と繰り返し、休職と復職を繰り返していたので、同僚たちからの信頼感は、皆無であったから、と思っています。

正直、その頃は、同僚と職務に関する会話しかしていなかったし、業務が終わって定時になったらとっとと退社していたので、なおさら、ですよね。


日本で、職場における孤独・孤立の問題が注目されたのは、実はCovid-19の感染拡大があり、在宅ワークやフルリモートワークが一般化した、ココ数年のお話です。

職場の孤立・孤独研究の先駆者である松井 豊氏は雑誌『産業カウンセリング』の中でこう述べています。

〝職場内の孤独は家庭内での癒やしでは完全には防げません。ただ職場で孤独を感じている人も、家庭内でサポートがあれば、大きな問題にならないといったデータもあります〟

つまり、職場の孤独は職場で解決するほうが望ましい、ということです。



少しここで、言葉の整理をしましょう(笑)いつものように。

孤独
〘名〙
① みなしごと、年とって子どものないひとりもの。また、身寄りのない者。ひとりぼっち。ひとりびと。
② (形動) 精神的なよりどころとなる人、心の通じあう人などがなく、さびしいこと。また、そのようなさま。

孤立
① 他から離れて一つだけ立っていること。また、仲間がいなく一人ぼっちなこと。他の助けがなくただ一人でいること。
② 対立するもののないこと。対応するものがないこと。主として、「孤立義務」などと法律上の語として用いられる。


一見、同じようなコトを説明しているように思われるでしょうが、決定的に違うことがあります。『孤独』は本人が感じている感情のことで、『孤立』というのは客観的に見た状態、対人関係の状態を示します。

さて、前述の松井氏はこの様に続けます。

〝(日本の)データとしては、男性の非正規労働者のほうが孤独・孤立感が強く、女性の非正規の方はむしろ弱いといったデータも出ています。(中略)つまり職場の孤独・孤立を考える上では、正規と非正規の雇用を分ける必要があるのがわかりました〟

また、この様にも述べています。

〝(前略)孤独・孤立は、何らかの問題が起きる前段階であるため、どの状態で他者が介入できるのか、また会社がどう取り扱うかも難しいのです。〟

例えば、同僚の中に、他者から見たら明らかに『孤立』している人がいたとします。しかし当人にしては『孤独』と感じていないかもしれません。一方で、本人が『孤立して孤独を感じている』場合においても、同僚や上司・人事や総務の人間が、本人にどようにアプローチすればよいのか、非常にセンシティブでその対応は非常に難しいと思います。

ここに今の日本の『働く環境における孤立と孤独感の問題』があるように思います。

これはアメリカのデータなのですが、大変興味深い結果があります。

「職場に親友はいますか?」という質問について「強くそう思う」と回答したのはわずか2割だったのです。英語での調査ですので「親友」と言う言葉の定義が、正しく和訳されているか疑問ではありますが、「職場内に気軽に何でも話せる友人(同僚)がいるかどうか」というのは、職場内の孤立や孤独感に大きく影響するのは、火を見るよりも明らかですよね。


職場内で孤立し孤独感を感じる要因というのは、色々なことが考えられます。
ボクの様に、同僚からの信頼感を得られなくなった、と言うこともあるでしょう。そのバックグラウンドには、(身体的・精神的)不調や、仕事に向き合う姿勢、責任を持って任務を遂行できる能力など、様々な要因があります。

また、家庭内の状況(家庭内不和・家族の体調・介護など)やプライベート(パートナーとの関係・趣味や興味)などが、仕事のパフォーマンスに影響を及ぼし、それが原因で職場内での信頼を失墜させてしまうこともあるかもしれません。


職場内で孤立している人に対して、どう接すればよいのかは、松井氏が述べているように、非常に困難な場合が多いと思います。

しかし、ボクは声を大にして言いたい。


それを見て見ぬふりをするままでいいのですか?
生理的に受付けない人だから、ドライに接していても良いのでしょうか?
管理職にお任せ、でいいのでしょうか?
仕事しない人だから、無視してもいいのでしょうか?
管理職が使えない人材だからそのまま放置していていいのでしょうか?
自分の事で精一杯だから知らんぷりでいいのでしょうか?


職場内での孤立・孤独感というのは、一歩間違えれば、メンタル不調を招きます。そして下手をすれば自死を招きます。



もしかしたら、あなたの行動一つで、何かが変わるかもしれません、よ。
そして、もし迷うことがあれば、産業保健スタッフにぜひ、相談してください。できれば産業カウンセラーに(笑)

2024年2月27日火曜日

記憶…きをく…キヲク

 だんだん年を取ってくると、「認知症」の危惧をするようになりますよね。ボクの父も70歳になる頃に認知症になりました。母は80歳になりますが、まだ、実家で一人暮らししていますし、彼女はその心配はないと思っています(笑)

「認知症」に大きく関わってくるのが『記憶』ですよね。

今回は、『記憶』について、医学的な側面から心理学的な側面について、紐解いていきたいと思います。

まずは、いつもの様に言葉の整理から(笑)

記憶とは…
・ものごとを忘れずに覚えていること。また覚えておくこと。
・(心理学)過去の経験の内容を保持し、後でそれを思い出すこと。
・(心理学)将来に必要な情報をその時まで保持すること。
・(生物学)生物に過去の影響が何らかの形で残ること。

ボクが記憶の話しをする時に、大切だなと思うのは、『記憶というのはただ単に〝覚えておく〟ことだけではなくてそれを思い出すこと(想起)』ってすごくた大事だと思っています。

そして、記憶の話しをすると、ものっすごい膨大な領域の話になるんですよ。というのも、ただ単に「覚える⇒想起する」だけの話ではなく、例えば「行動・行為」にも関係しますし「認知・認識」にも関係してきます。

ですので、少し基本的なところだけお伝えしたいと思います。



「記憶の保持・想起・忘却」に関して言うと、大まかに上の図のようなシステムになっています。

感覚記憶…
目で見たり耳で聞いたり、匂いを嗅いだり肌で触れたりそんな刺激による情報が一時的に“記憶”として取り込まれます。

短期記憶…
感覚記憶で取り込まれた刺激に対して、「この情報は必要ない」とか「この感覚は記憶しておくべき」など自分の中で選別されて、「この刺激・情報は自分に必要だ!」と認知したものが“選択的注意”されたものを、さらにもう一段階、上のレベルで記憶すること。

ここで、短期記憶の中で「リハーサル(ループ)」と呼ばれる、記憶の追体験や想起を繰り返すことをしていると、それが長期記憶へ転送されます。

長期記憶…
その名の通り、長く記憶に残ること。主に「陳述記憶(意味記憶・エピソード記憶)」と「非陳述記憶(手続き記憶・プライミング)」に分類されます。


上の図は「暗記の種類」となっていますが、記憶に関する分類を分かりやすく図説しているので引用しました。

と、話が難しくなってきましたが、『認知症』になると短期記憶から障害されて長期記憶は比較的温存される、というのは有名な話。



ここからは、少し、心理学的なお話に移りたいと思います。

上の生物学的お話には触れませんでしたが、「記憶」に関わる脳の箇所にはいくつかあるのですが、特に「長期記憶」に関わるのが『大脳皮質』そして「短期記憶」に関わるのが『海馬』と呼ばれる場所です。


外界からの情報はまず、後頭葉(脳の後ろの方)で処理されて海馬へと取り込まれます。そして海馬は、その情報を「いるいらない」と言う取捨選択・選別する場所でもあるのです。必要であれば。リハーサルなどを行い、長期記憶として大脳皮質へ転送されるんです。

人間の脳には「古い脳」「新しい脳」と呼ばれる分類方法があります。これは、進化の過程で、「人間」になる前から存在していた脳の部分の事を「古い脳(古脳)」人間になってから発達した「新しい脳(新脳)」があり、海馬は「古い脳(古脳)」に分類されます。


さて、心理学的で記憶に関わる話題といえば…
誰もが経験あると思うのですが、学生時代、一夜漬けにしろコツコツ勉強するにしろ、その記憶は徐々に薄れていきます。しかし、どんなに小さな頃に経験したことでも、また、物心がつき始めた頃でも、強烈に記憶に残っている出来事というのは、人間誰しも一つや二つはありますよね?


ボクの話しを一つ。

確か小学1年生の冬だったと思います。クリスマスにサンタさんが、野球のグローブとバット・ボールのセットを贈ってきたことがあるんです。ボクは正直、興味がなかった(笑)。ただ、父が「キャッチボールをしよう!」と言って、自宅前の田んぼ(冬だから空き地みたいなもの)にボクを連れ出し、キャッチボールを始めたのですが…

上手く投げられないのは仕方がない。初めてだから。でも、グローブを使ってボールをキャッチする、と言うことがボクにはとても難しくて、父が投げるボールを掴みそこねて、ボールが胸や顔、頭や足にぶち当たるんです(笑)痛いし嫌だしとにかく早く辞めたかった。

でもボクは、父が一生懸命に教えてくれたりすることを無下に「やりたくない!」と気持ちを伝えられず、言われるがまま黙って黙々と、キャッチボールをしていたのですが、さぞ、楽しそうではなかったでしょう(笑)そのうちボクは「嫌!辞めたい!」と言えずただ、泣き出してしまったんです。

それを父がみて、慌ててその場は終わりました。

以降、そのグローブやバット、ボールが日の目を見ることはありませんでした…



5~6歳の頃の記憶なのですが、ボクには強烈に記憶されています。おそらく「嫌」「つらい」などの強い感情と一緒にその出来事が記憶されているからだと思います。

それはなぜか。


先にも書きました通り、外からの情報はまず「後頭葉」で処理されるのですが、感情を伴う記憶というのは、直接「海馬」へ運ばれる、と言われているんです。

つまり「後頭葉」と言う場所を、一度介すると言う「手順」をすっ飛ばすことができるので、ダイレクトに「海馬」に運ばれることで、強く記憶に残る、と言われています。



実は「海馬」というのは非常に脆くて、破壊されやすい部分と言われています。そして記憶力を鍛えるためには、海馬の破壊を少しでも抑えることも大切なのですが、実は、この様に強烈な感情を伴った体験をする、と言うことも海馬にとって活性化させる要因の一つになっていると言われています。


ただし!
あまりネガティブな感情を伴う刺激というのは、違う意味でメンタルヘルス上、良くないので、ボクがおすすめするのは「感動すること」「喜ぶこと」そんな感情を伴う体験を、沢山経験することをオススメします。



「記憶」と「感情」というのは、切っても切り離せない関係なのです。

2024年2月25日日曜日

都合のよい病名『◯◯不全』

 最近のこのblogの話題は、心理学的なお話が多かったので、ここらで少し、一般医学的なお話を。

時々、マスコミの報道で「俳優の〇〇さんが心不全で◯月◯日亡くなっていたことが分かりました。」「歌手の〇〇さんが呼吸不全のため、本日◯時亡くなられました」こんな文言を聞いたこと、ありませんか?

この〇〇不全と言う表現の仕方なのですが、実は、厳密に言うと「病名」ではないのです!


「〇〇不全」と言う名前のつく病名(?)をいくつか挙げてみますね。

心不全
呼吸不全
肝不全
腎不全
多臓器不全
免疫不全

よく耳にするものとしては、これくらいでしょうか。もっと言うと

慢性心不全
慢性呼吸不全
慢性腎不全
慢性免疫不全

と、『慢性』と言う言葉がくっつくこともあります。


さあ、そろそろ答え合わせしましょうか(笑)
この『不全』と言う言葉がつくのは、「その内臓の機能が低下(または停止)している状態」と言うことを言い表しています。


例を一つ挙げてみましょう。
『心不全』とは…
心臓の機能が低下(または停止)している状態。心臓の機能というのは、心筋(心臓の筋肉)が収縮したり弛緩したりして、血液を全身に送り血流を生み出す、と言うのが心臓の機能です。

では、心臓の機能が低下(停止)してしまう病気というのは具体的に、どんな病気があるのでしょうか?

例えば…
虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症など)
高血圧性心疾患(左心室肥大症など)
弁膜症(大動脈弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症など)
心筋症(拡張型心筋症・たこつぼ型心筋症など)
心筋炎
先天性心疾患(心室中隔欠損・心房中隔欠損など)
不整脈(心室期外収縮など)

など

病気の名前というのは、一見、複雑そうに見えますが、実はある程度の規則性があります。

例えば、弁膜症の一つ『大動脈弁狭窄症』と言う病気を例に上げてみましょう。


上の図の「大動脈弁」と言う箇所がありますよね。見つけてください(笑)
この『弁』というのは、血液の流れが逆流しないように、心臓の鼓動に合わせて、閉じたり開いたりします。しかし、様々な原因(その多くは加齢)によって、この弁が固くなったりカルシウムなどがくっついて、その閉じたり開いたりすることが難しくなることがあります。そうすると、血液が流れる経路が狭まり、なかなか血液が流れにくくなるんです。

『大動脈弁狭窄症』=大動脈弁が固くなって血液の流れる経路が狭くなる(狭窄)病気

と言う事になるんですよ。


さて、随分と話が脱線しました(笑)元に戻します。

『〇〇不全』と言うのはその機能が低下(停止)した状態ですので、先に上げた『心不全』以外の事をまとめると、以下の通りになります。


呼吸不全=呼吸に関係する臓器(主に肺)の機能低下(停止)

『肝不全』=肝臓の機能低下(停止)
肝臓にはいくつかの機能がありますが、例えば体内に入ってきた毒素を解毒する作用や、古くなった血液の細胞を壊して尿として排出する、など。

『腎不全』=腎臓の機能低下(停止)
腎臓は、血液をろ過して尿を作る場所です。

『多臓器不全』=このままです(笑)ありとあらゆる内臓が機能低下(停止)していまう状態で、高エネルギー外傷(交通事故や飛行機事故など)や高度の火傷などで多くの臓器が一度に機能低下(停止)していまう状態です。

『免疫機能不全』=免疫機能と言う、体の外からやって来る、人間の体に害を与えるウィルスや菌を体内で攻撃してやっつける機能の低下(停止)です。


ちなみにボクも罹患している「HIV感染症」ですが、これが進行すると「AIDS」になります。「AIDS」の和名は『後天性免疫不全症候群』と言います。


こうやって見てみると『〇〇不全』というのが「病名ではない!」と言う理由がはっきりわかっていただけましたでしょうか?

ご自身の身内の方が亡くなられた時に、各所に提出しなければならない『死亡診断書』と言う書類がありますよね。もし、機会があったらそれを見てみてください。結構「〇〇不全」と言う言葉で、表現されていることが多いんです。

でも、これはその死亡診断書をかいた医師が悪いとか、知識がないと言うふうに受け止めないでいただきたいです。人間の『死の理由』というのは、厳密にういうと『死体解剖』しなければ分かりません。絶対に。または、『死亡時画像診断』のように、亡くなられてからCTやMRIなどで撮影し、内臓の状態を確認しなければ、ちゃんとした理由は分かりません。


医師で作家の海堂 尊氏はこのような日本の状態を『死因不明社会』と表現されています。そして同名の書籍もあります。

もし、ご興味があれば一度、お読みいただくことをオススメします。



人間の体というのは本当に不思議なものです。医学の進歩は日進月歩ですが、それでもまだまだ。

だから、面白い、と言うのもあるのですが。


2024年2月22日木曜日

人が大切にすべきもの…正解のない答え

 多分、ボクが40歳に近づいた頃からでしょうか。

人の幸せって?
人が大切にすべきものって?
人が人であることって?

と、すごく哲学的な事を考えるようになりました。それはおそらく、自分自身の年齢も関係していた、ユングは『40歳は人生の正午』と比喩したように、まさにこれから人生の後半戦に向かうに当たって、自分自身の価値観をもう一度見直す時期、エリクソンの精神発達課題の言うところの『ミドルエイジ・クライシス』へ突入したから、とも思っています。

カール・グスタフ・ユング


エリク・ホーンブルガー・エリクソン

そしてもう一人、超有名な世界的な偉人も、同じような事を考えたことを、記録に残しています。

その人の名は『ブレーズ・パスカル』です。

パスカルは「パスカルの定理」「パスカルの三角形」「パスカルの原理」など、様々な数学的な発見をした人ですが、みなさんも一度は教科書でその名前を見たことがあるのではないでしょうか?

神童とも呼ばれていた、パスカルは、実は39歳で生涯を閉じたと言われています。そんなパスカル、数学的物理学的な思考だけを持っていたかというと、実はそうではなく『人間は考える葦である』と言う言葉を残したもの、パスカルです。

『人間は考える葦である』と言う言葉など、パスカルの哲学的な思想を集約したのが『パンセ』と呼ばれる遺稿です(これは彼の死後、発表されました)。

ブレーズ・パスカル

そんな彼が「パンセ」に残したいくつかをご紹介したいと思います。


〝世には証明される事物がいかに少ないことか!(中略)習慣こそ、もっとも有力なもっとも信頼すべき証拠となる。(中略)あすはくるだろう、われわれは死ぬだろうということを、だれが証明したであろうか? (中略)だから、それらをわれわれに信じさせているのは、習慣である〟

〝想像力はすべてを左右する。それは美や正義や幸福をつくる。それはこの世のすべてである。神を直感するのは、心情であって、理性ではない。これこそすなわち信仰である。心情に直感される神、理性にではない〟


様々な発見をしていたパスカルですが、『世の中には(数学的に)立証不可能なものの存在』や『神や信仰』とう言う、到底、関係のなさそうなことですら、常に考えていたんですね。

しかも39歳で生涯を終えたパスカルですから、ものすごく若い時にこんな事を考えていたんですよ!もう、早熟すぎ(笑)


10歳になる前に三角形の内角の和が二直角であることを自力で証明したパスカルは、科学者として世界に大きな貢献をしました。19歳で最初の機械式計算機を発明し、先に述べたような様々な数学的な業績を残し、フェルマーの定理で有名なフェルマーとの文通の助けもあって確率論の基礎を考案しました。

機械式計算機


更に彼は、貧民救済の資金をつくるために乗り合い馬車を考案して会社を創り、1662年の春にはパリに乗り合い馬車を開通させました。  


天才であったパスカルの考え方の特徴は、「人間」「時間」「自然」「存在」「神」といった、ふだんよく口にしたり、身近であったりするものを『無定義概念』と見たところです。

つまり、それらはわたしたちにとってまったく何だかわからないものなのです。何だかわからないのだけれども、わたしたちはそれらをいろいろに利用して生きているわけです。むしろ、それらなしでは生きてはいけません。 

この、曖昧な、宙ぶらりんの場所に置かれているのが人間です。そうでありながら、人間は自分の日々の生活の仕方によって、定義されないものに自分なりの概念を与えていくことになるのです。


ボクは根っからの理系人間です。数学・物理、大好き人間です!多分それは、元々の性格「白黒はっきりさせたい」とか「竹を割ったような」とか「0か100思考」とか

←度が過ぎるとメンタルヘルス上、良くないやつばかり(笑)

つまり「ハッキリした答えがある事を好む」性格で、反対に言えば「曖昧さを嫌う」と言う性質でした。ですので「公式に当てはめて考えれば必ず、正しい答えが一つだけ見つかる」と言う数学や物理が好きだったのだともいます。

しかし、理学療法士として働いていく中で、人間と言う「曖昧な」「宙ぶらりんな」対象物を目の前にした時に、それまでの思考では上手く理解できない、もっと言えば思考停止に陥るような状況に出くわし、戸惑いもあったけれども、逆にそんなものだからこそ「答え」を求めるために、心理職・心理カウンセラーになったのだとも言えます。


しかし、この『曖昧さ』に人間らしい部分があるわけで、でもこの『曖昧さ』に振り回されたり悩まされたりもするわけで…



ああ、なんて素晴らしき人間かな!!

最新のblog

 2024年11月28日(木)~30日(土)にかけ、東京において開催された『 第38回日本エイズ学会 』の『POSITIVE TALK 2024』にて、HIV陽性者の当事者としてスピーチをしてきました。まずは、その発表原稿の全文を、こちらでご紹介させて頂きます。 なお、読みやすい...