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オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極症)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2023年10月13日金曜日

うつ病や双極性障害の自殺(“死”に関する記述あり要注意)

 今回は、少しセンシティブな話題に触れたいと思います。

※現在メンタル不調を感じておられる方の閲覧はおやめ下さい。




 

ボクは双極性障害です。以前は「うつ病」の診断名でしたが、抗うつ薬の変更に伴い躁転したことをきっかけに「双極性障害」と診断されました。その間、何度かメンタルダウンを経験し、仕事を休職する事が何度もありました。

うつ病(抑うつ感)の気分とは、どのような気分なのかと言うと次のような事が言われています。

・絶望感
・孤独感
・無価値感
・無力感
・絶望感
・ふさぎ込み
・悲観的
・懐疑的


ボクもやはりこの様な気分になり、とてもつらい経験をしました。実はそれまでは「消えてしまいたい」と思う事はあっても、具体的にいつ、どういう手段で自死するか、と言う事を考えたことはありませんでした。しかし2年前に大きくメンタルダウンをした時は「自死したい」と心の底から考えた事があります。これは体験した方でしか分からないのですが「消えてしまいたい」と言う気分と「自死したい」とは全く別物です。


「消えてしまいたい」というのは必ずしも自死することではなく、今、この時に自分の存在が消えてしまえれば良いのであって、それはイコール「死」ではないということです。

「自死したい」というのはまさに「生物学的に生命活動を、自ら断つ」と言うことを意味します。そのため、具体的にどうやって、何を使って、どこで、などを考えます。


世界保健機関(WHO)「Preventing Suicide: a global imperative」(2014)では、自殺で亡くなった人のうち精神障害のある人は90%であり、自殺の生涯リスクは気分障害(適応障害・うつ病)4%、アルコール依存症7%、双極性障害8%、統合失調症5%と推定され、精神障害が2つ以上ある人は自殺の危険が有意に高いと記されています。


ここからはボクの『ちょー持論』です。

うつ病(抑うつ状態)の方が「死にたい」と思うののは「希死念慮」ではないかと思います。希死念慮はどのようにして生まれてくるのか…どちらかと言うと「生きている意味がない」「死んだら楽になれる」と言うどちらかと言うと「ボヤッ」とした理由からである事が多いように思います。

双極性障害の方の「死にたい」はどちらかと言うと「自殺企図」に近いと思います。「自殺企図」というのは先に書きました通り「どんな方法で」「いつ」「どこで」など具体性をもって考えることです。


双極性障害の特徴として、躁とうつの時期を反復することが知られていますが、躁の時期に後先考えない行動をとったり攻撃的になったりします。具体的には多額の借金をして必用度の低い買い物をしてしまう、とうてい現実不可能なプロジェクトを立ち上げ押し付ける、口論をするなどの行動があり、周囲の人を振り回すことで信頼を失っていきます。

そしてうつ期に入ると、それまでの自分自身の行動を省みることで、強い自己嫌悪感や自責の念が襲ってきます。「大切な人を傷つけてしまった」「皆から見放された」「返済できない借金をしてしまった」など強い絶望感に襲われます。つまり、うつ病のそれとは少し違い、自分のした行いに対して取り返しのつかない事態になったと強く認識することで、「生きることが困難になった」と感じるよりも「社会生活を送ることができなくなった」と考えてしまいます。

自死に対する思考というのは、一度それにとらわれるとなかなかそこから脱する事が困難なことが多く、支援してくれる機関やサービスがあるのに、それを客観的に考えることができず、「これ以上、周囲に迷惑はかけられない」「他人に迷惑をかける自分は、この世に存在しないほうが良い」など「死以外の選択肢はない」と強く考えてしまいます。


そして、ここからは僕の実体験です。

約1年前、ボクは絶不調で、仕事を休職したり復職したりの繰り返しでした。休職していたある日、朝からソファに寝転がりずっと「どうやって死ぬか」ばかりを考えていました。多分、2~3日続いたと思います。朝も夜もなく、時間的な感覚も薄れていたので記憶が曖昧なのですが、きっかけはやはり「大切な職場の理解者を傷つけてしまった(に違いない)」「ボクは今の職場に必用な存在ではない(に違いない)」「これ以上、生きていては迷惑をかけるだけ(に違いない)」と考え、とにかくどうやって死のうか考えていました。

ただ、その方法を考えれば考えるほど、「死んだ後、誰かに迷惑をかけてしまう」と言う結論になるんです。①血をたくさん出す方法②息ができなくなる方法③薬をつかう方法④車や電車に立ち向かう方法、どれをとっても誰か彼かに迷惑がかかります。

ボクは一人暮らしですので、①~③を実行するのはもちろん一人暮らしのマンションの部屋。まずは大家さんの顔が浮かびました。大家さんとは何度も顔を合わせたこともありましたし、そのお人柄も知っていたので、その大家さんに迷惑はかけられないから却下。④は例えば電車に乗っている人とか鉄道会社、車の運転手さんや巻き添えになった歩行者など多くの人に迷惑をかけるから却下。

最終的に思ったのは、失踪。今、この場所じゃないところへ行って①~③の方法をとると言うこと。けれど、今の部屋をどうするか。解約するにしても荷物がたくさんあるし、それをきれいに運び出したとしてもそれをどこで処分するか。そんな面倒な事は却下。

それよりなにより、ボクが自死することで悲しむであろう母や姉、義兄や甥や姪がいる。


「これ以上、人に迷惑をかけたくない」から自死を選ぶのに「死んだら迷惑がかかるから」と言う思考のパラドックスがあったのと、大切な人の存在があった。



厚生労働省のサイト「こころの耳」にはこう書かれています。

自殺の危機にある人は、生死に関して両価的であることが多い

つまり「死にたい」と考えながらも同時に同じくらいの熱量で「生きたい」とも思っているということです。まあ、ボクの場合は「死ぬことを諦めた」と言う感覚に近いのですが(笑)

そして、自死を選択しようとしているひとには予兆があることが多いと言われています。その予兆を感じ取った時に、どのような行動を取ればよいのか、それを上記サイトでは下記のように伝えています。


サインを感じ取ったら「TALKの原則」で対応することが必要です。
TALKとは、Tell、Ask、Listen、Keep safeの頭文字をとったものです。

Tell:あなたの様子をみていると、とても心配になるという点をはっきりと言葉に出して伝える。

Ask:自殺のことをうすうす感じているならば、はっきりとその点について尋ねる。誠実な態度で対応するなら、それを話題にしても危険ではなく、むしろ自殺予防の第一歩になる。

Listen:傾聴する。徹底的に聞き役に回り、相手の絶望的な気持ちを真剣に聴く。

Keep safe:少しでも危険を感じたならば、安全を確保する。その人を決してひとりにしないで、医療機関につなげる。


  

   

  


本日、お伝えしたのはボク自身の体験が主ですので、同じような精神疾患をもっているからと言って、同じ様な思考をするとは限りません。個々人での感じ方、考え方、もっと言ってしまえば人生観や倫理観、哲学など、その人が「生きる軸・芯」みたいなものがベースにあるので、全ての人に当てはまるわけではない、と言うことは強く強調しておきます。



ただ、自死することは勿体ない。

非常に勿体ない。

と、これだけはお伝えしておきます。

2023年10月12日木曜日

ふとした時に思い出す人①場面緘黙(かんもく)の同級生

 皆さん、ふとした瞬間に思い出す人、一人や二人いますよね?
初恋の人、同級生、元職場の同僚、祖父母などなど…すごく近しい存在だった人の場合もあるしそうでない場合もありますが。
今日は、ボクがふと思い出した小学校の同級生についてお話したいと思います。



ボクの通っていた小学校というのは、本当に田舎の学校で、1学年1クラス。ボクの学年は、全員で27人でした。

そのうち男子が9人。

ボクが今日、ふと思い出したのは女子Aさんです。

原因は分かりませんが、彼女は「話せない」人でした。言葉は理解できていて、指示された動作や行動もでき、運動機能などはなんら問題はないのですが「話せない人」だったんです。

ボクが住んでいた地区とは離れて住んでいたので、放課後とか休日とかに会うこともなく、学校でも一緒に遊んだ記憶もないのですが、彼女の声をボクは知りません。しかし噂では「自宅やごく親しい人であれば話せる」とは聞いたことがありました。

おそらく知的障害でも発達障害でもなかったと思います。むしろ、心の病気…だったのでしょう。


せっかくの機会と思い、そのような心の病気の事を何と言うのか、調べてみました。

場面緘黙(かんもく)』というそうです。

ボクは子どもながらに、彼女の事をとても不思議に思っていました。「耳で聞こえているのに、先生の言うことは聞けるのに、どうしてしゃべれないんだろう?」と。ボクは、自分自身との違いを持つその彼女を遠巻きにみていました。そして何だか“簡単に触れてはいけない何か”を感じ取っていて、ボク自身から彼女に話しかけたり遊びに誘ったりした記憶はありません。

日本場面緘黙研究会の公式サイトによると「不安症(不安障害)の一種」との見解がありました。


不安症(不安障害)とは…
不安は本来、脅威や精神的ストレスに対する正常な反応です。正常な不安は恐怖に根ざしており、生きのびるための重要な機能として働いています。しかし、その場面にふさわしくない状況で不安が沸き起こったり、日常生活に支障をきたすほどの症状(息切れ・めまい・はっかん・動悸など)が出現すると、『不安症(不安障害)』と診断されます。

代表的なものに
パニック障害
社交不安障害
強迫性障害
全般性不安障害
などがあります。



もう40年ちかく前の話なので、当然スクールカウンセラーなどはおらず、おそらく担任の教諭と養護教諭で何らかの対応をしていたとは思うのですが、なんせ田舎の小さな小学校、特別支援学級などなく、ボクらと同じ教室で机を並べて学校生活を送っていました。

田舎の小学校なので(何度も繰り返しますが)担任の教諭と言うのは、1~2年生、3~4年生、5~6年生と2学年続けて同じ教諭でした。どの学年の教諭も必ず一度は彼女に「皆のまえで口頭で何かを発表させる」と言うチャレンジをさせていた記憶があります。

ボクはそんな場面に遭遇すると「しゃべられないのにどうしても無理にしゃべらそうとするんだろう?」「無理やりやらせるなんてかわいそう」そう思っていました。ただボクもどちらかと言うと気が小さい方なので(笑)それを堂々と口にして大人に立ち向かうだけの勇気を持ち合わせていませんでした。


1990年のWHOが設定したICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)には「選択性緘黙」として疾患名が記載されており、情緒障害に含まれるとされていたようです。そう考えると、ボクが小学生の頃の彼女というのは、ある程度「心の病気」として認識されつつあったのかも知れません。



小学校を卒業して中学校に入学。
中学校は、いくつかの小学校区から児童が集まりますので、1クラス45人の全5クラスだったと思います。ただ、Aさんとは一度も同じクラスになったことがありませんでしたし、高校進学時に彼女の存在すら忘れていたので、その後、彼女がどのような人生を歩んでいったのか、全く分かりません。




ただ今は、場面緘黙に対しての治療方法がある程度確立されていて、「行動療法」特に「段階的エクスポージャー法」や「トークンエコノミー法」「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」なども行われているそうです。

詳しい方法は割愛させていただきますが、キチンと「心の病気」と言う認識がなされていることに、少し安堵しました。彼女のような場合や、最近話題の「大人の発達障害」でもそうですが、「子ども本人のヤル気の問題」「親の躾の問題」など“誰かのせい”にしなくて良いと言うのは1つの安心材料ではないでしょうか。

ただ、ボクのblog「10月10日は世界メンタルヘルスデー!!」でも書きましたが、病気や障害に対する偏見差別というのは後を経ちません。



彼女のその後の人生の中で、偏見差別と言う障壁が少しでも少なくなっていることを祈るばかりです。


2023年10月10日火曜日

錆び付き症候群って?キャリア・アップチェンジから考える心理的レジデンス

 医療従事者やボランティアで活動されている方が陥りやすい心理的状態で『燃え尽き症候群(burnout syndrome)』という名前は、みなさんも一度はどこかで聞いたことがあると思います。今回、取り上げる『錆び付き症候群(rusteout syndrome)』というのは、一見、燃え尽き症候群と同じ状な状況ではあるものの、心理的にはもっと違った問題をはらんでいると言われています。



燃え尽き症候群とは…
それまで意欲を持ってひとつのことに没頭していた人が、あたかも燃え尽きたかのように意欲をなくし、社会的に適応できなくなってしまう状態のことをいいます。

今まででも、自分自身を「あの時は燃え尽き症候群だったかも…」と公言する有名人はたくさんおり、賀来賢人さん、星野源さん、小栗旬さん、山田裕貴さん、窪田正孝さん、そして宇宙飛行士の野口聡一さんもそうであったとのことです。






イメージとしては、「やりたい!」と思っていたことを思いっきりできて、それが自他ともに認めるほどの功績を残し「やり遂げたあとの無力感」とでも言いましょうか、風船が一気に破裂した感じ、とでも言いましょうか。


燃え尽き症候群も、放っておくと良いものでは有りません。慢性的なフラストレーションや自己嫌悪感、最終的には無気力感に襲われてしまいます


今回の話題は、この『燃え尽き症候群』と似ているけれども、その心理的状態に違う状態を示す『錆び付き症候群』について掘り下げていきます。


実はこの『錆び付き症候群』というのは、1970年代頃に言われ始めていたことではあるのですが、近年、仕事におけるキャリア・アップを考える時に、注意しなければいけないこととして取り上げられるようになりました。

錆び付き症候群とは…
日々の業務ややらなければならないことに忙殺されて、やりがいや充足感が欠如しており、“本当に目的が欠如している感覚”の事を言います。

キャリア・アップチェンジ(スカウトなどで引き抜かれたり、自分自身のキャリア・アップのために転職し、その先でそれまでの職位より良い職位になったり給与がアップした時)の際、自分自身が思っていた仕事の内容と違っていたり、自分自身の理想と思っていた職場環境ではなかったりした時、仕事量やその責任は増えたにも関わらず、退屈と感じてしまったりヤル気が起こらなかったりする事があります。

これって実は、ゆっくりとその人を腐食していき、実は自分自身が気づかないうちに「錆びついて」行くわけです。


『燃え尽き症候群』とは違い、ジワリジワリと侵食していくという意味で『錆び付き症候群』というわけです。

燃え尽き症候群とともに錆び付き症候群にもキチンと対処していけるかどうかという、『心理的レジデンス』にも挙げられるようになっています。


心理的レジデンスとは…
「脆弱性(vulnerability)」の反対の概念で、自発的治癒力の意味としても使われていますが、その人自身の不利な状況に自身のライフタスクを対応させる個人の能力と定義されています。

環境が変わらないのであれば自分が変わる・変われる、そんな概念と思っていただければと思います。



仕事をしていく上において、錆びついていかないようにするためには、2つの方法があると僕は考えます。

一つは上記に示した通り心理的レジデンスを高め、その環境に合わせて自分自身を変えていくこと。

もう一つは、退職・転職すること。


正直、後者の方が楽ですよね。ある意味。特に資格職であれば、尚更です。少し、乱暴な言い方をすれば「自分の能力が低いからではなくて、その職場環境が悪いから」という理由を盾にしてしまえば良いわけですから。僕も、そういう人達を何人も見てきました。

これは僕の肌感覚であってちゃんとした統計を取っているわけではないので、根拠はないのですが、こういう考え方をする人って、医療従事者、特にコメディカルスタッフに多いような気がします。もちろんそんな人ばかりではないですよ。

ただ、そういう対処法をする人というのは、そういう対処法でしか対処できなくなり、言葉は悪いのですが“逃げ癖”がついてしまいます。人としてというか、職業人として生活していく上で、果たしてそれは、どうなのでしょうか?


良い悪いの判断ではないかも知れませんし、善悪の判断でもありません。どの方法をとるのかは、その人の人生哲学であったり生活環境であったり、社会的背景であったり生育歴であったり、そういうものに左右されることだと思うので、個々人の価値観だと思います。

ただ、『真の意味でのキャリア・アップ』を望むのであれば、『錆び付き症候群』ともしっかりと向き合う必要があるのではないか、と僕は思います。

僕が臨床で実習生を受け持っていた時、実習生さんによく「どんなところに就職したいの?」と聞くのがルーティンでして、そこから話題を広げることが多かったのですが、よく実習生さんから言われたのは「勉強ができるところ」という答えです。言い方を変えると、その答えの裏には「勉強を教えてくれるところ」「勉強をさせてくれるところ」という意味合いが強いように感じていました。
ですので僕はよく「勉強は自分ですることであって、しようと思えばどんな環境でだって勉強はできるんだよ」と諭していました(ウザいバイザーと思われてたと思います)。


Teena J Clouston氏は『この錆付き症候群』を回避するために必要なこととして以下の3つを挙げています。

①自分の価値を見つめ直す
自分にとって意味のあることは何かを見直して、そのための時間を作ることをする。そのために日々のルーティンを変えるなどの方法をとる。。

②どんな事に満たされるのかを見極める
たいていの人は、自分が満たされていると思う方向に導くコンパスを持っている。そのコンパスに従って行動する。しかし「自分が満たされていると思う方向」というのは流動的で変化するものであるため、それを敏感に感じ取る必要がある。

③“積み荷”のバランスをとる
自分自身を「船」と思い、そこにどんな荷物をどれくらい積むのかをよく検討する事。

つまり、「内観すること」が大切と言っています。


また、ある方はこのように言っています。

「自分の能力を錆びつかせないようにするには、自分自身を磨くしかありません。職場ではやりがいがないのなら、それ以外の場所で自己研鑽することも一つの方法です」
とし、例えば、資格に挑戦する、語学の勉強をする、ボランティア活動をするなどです。

僕は、この方のアドバイスにはもう一つの側面があると思っています。
それは、職場以外での自己研鑽が、実はその後の仕事に活かされる事が往々にしてある、ということです。そして究極の自己研鑽は『生涯学習』です。


ここからは僕の『ちょー持論』なので、ご承知おきを(笑)

『自己研鑽』『生涯学習』というと、「ステップアップ」というニュアンスが強くて、「一つの物事を追求する」という意味合いに取られる事も多いと思います。しかし、僕は違うな~と思っています。


究極の『生涯学習』とは「見聞を広げること」だと思っています。

常にアンテナを張って、色々な事にたいして情報収集し、多様な価値観や倫理観を知り、それを自己の中に取り入れながら「自分」というものをブラッシュアップしていく、そんなイメージだと僕は思っています。

僕はそれを実践し続けている人としてご紹介したいのは『若宮正子』さんです。


「世界最高齢プログラマー」として最近、メディアに出られる機会も増えていますので、ご存知の方も多いと思います。

詳しくは割愛させていただきますが、僕は彼女のような生き方に憧れを抱きます。




僕はHIV感染症という病気を持っていて、平均余命まで生きられるとは言われていますが、果たしてそれが本当なのかどうかは、まだ未知の領域です。AIDSの報告が世界で初めてなされたのが1981年のアメリカからです。まだ40年ちょっとしか経っていません。

ですので、僕自身、何歳ごろにどんな病にかかり、どんな死に方をするのか分かりません(まあ、それは皆さん同じですが(笑))。だからというわけではないのですが、尚更、錆びついていく事は、僕の「信条・信念」ではありません。



自分自身がどう生きていくのかは自分が決めること。誰かが決めてくれることではありません。

2023年10月8日日曜日

医療従事者の言うことは絶対に守るべし?!コンプライアンスとアドヒアランス

 例えば糖尿病・高血圧症・HIV感染症・肝炎・通風などの内科的疾患から、変形性関節症・椎間板ヘルニアなどの整形外科疾患、双極性障害・統合失調症などの精神疾患にいたるまで、「治ることはないけどお薬やリハビリ、食事・運動・睡眠などの生活習慣などで症状を軽減することのできる病気」つまり『慢性疾患』というのは、医師や医療従事者と、長い長いお付き合いが必要ですよね。

僕も、その当事者なので(笑)イチ患者として思うのは、時々、嫌になる(笑)
「薬を飲む」くらいなら良いけれども、食事に気をつけるとか運動を継続するとか、時々、嫌になる(笑)

もちろん、遺伝的要因が大きい疾患もあるので一概には言えないけれど、どうしたらそれらの疾患の進行を遅らせて合併症を防いでいくか、と言うのは、言ってしまえば「当事者である患者さんの気持ちひとつで変わる」と言うのは容易に想像がつくでしょう。



『コンプライアンス』という言葉は、よく耳にすることが多いと思いますが、「compliance」という英語の名詞形で、「従う・命令に応じる」という意味です。現在の日本においては「法令を遵守する」という意味で、一般企業が使う言葉になっています。

医療における『コンプライアンス』というのは、「患者が医療従事者の指示通り治療を受ける」という意味で使われるのですが、例えば以下のようなことです。

・指示通りに薬を服薬する。
・決まった時間に血圧を測定する。
・決まった時間に血糖値を測定する。
・食事の塩分量を規定以内に抑える。
・体重を規定以内にコントロールする。
・指示された方法で運動する。

などでしょうか。
「コンプライアンスが良い」というのは、「医療従事者の指示通りにキチンとそれらが行えている」という意味で、「コンプライアンスが悪い」というのは「指示が守れない」という意味になります。

こうやって書いてみると、「やらされている感」が強いですよね。

患者当人にしてみたら「言う通りにすることが一番良いって分かっている“けど”」という気持ちがあると思います。僕だってそうですもん。面倒だし、食事だって美味しくないし、運動すると疲れるし。


そこで、少し見方を変えて『アドヒアランス』と言う言葉で考えてみたいと思います。「adherence」の名詞形なのですが「固着・執着」という意味なのですが、医療の現場では「患者が医療従事者の提案する治療方針の決定に賛同し、積極的に治療を受ける」という意味合いになります。

先程の『コンプライアンス』と大きく違うのは、患者さん本人が、どれだけ主体性を持って治療に関わるのか、ということに主眼を置いたのが『アドヒアランス』という言葉・考え方なのです。



なぜ、この記事を書こうかと思ったのか…実は先日、僕が体験したことがありまして。

ここ2年位、歯科を受診して口腔内のメンテナンスをしていなかったのです。そこで、自宅近くで通院しやすい開業歯科医を見つけて、行ってみたのですが、とてもすばらしい取り組みをされていまいた。

初診で行って、まず、歯科衛生士さんが口腔内を一通り観察し、歯周ポケットの深さを測り、う歯(虫歯)の状態をチェックすると、「レントゲンとお口の中の写真を撮りますね」と。まあ、レントゲンは普通ですよね。で、再び診察台の上に寝っ転がり、様々な道具を駆使して、正面・正面右・正面左・口腔内下・口腔内上をデジカメで撮影しました。そして、診察台の眼の前にあるディスプレーに、今、撮影した僕の口の中の画像を、デカデカと表示させるんです(汗)


(通院している歯科医の公式サイトから)

正直、めっちゃ恥ずかしかった。

歯並びが悪いとかもあるし、昔、喫煙していたので色が黄ばんでいることに加え、歯肉が腫れているんです。ずぶの素人の僕が見ても分かるくらいに。それを見ながら、歯科衛生士さんが懇切丁寧に、説明してくださったんです。

いや~ショッキングっていうのもあったし、恥ずかしさもあったし、でもそれと同時に、「これはヤバい!!」という気になったんですよ。僕の心に火が付きました!!


とにかく、歯肉の腫れを抑えるためには歯石をしっかり取って、そこに歯垢が溜まらないように、毎日のメンテナンスが大切なんです、と説明を受けました。

確かに、頭では分かっていました。日々のメンテナンスが大事だということは。

少し、話が逸れますが、僕の父は歯周病が酷く、40代で総入れ歯になった人だったので(笑)そうはなりたくない、とは思ってはいたのですが、今までの自分自身のメンテナンスが十分であったか、と言われると自信がありません。唯一、自慢?できるのは、ちゃんとした電動歯ブラシを使っていることくらいで(爆)



歯磨き粉も結構、お高いのを使ってたし。

そこで、初診の時、とりあえずその日のクリーニングが終わった時に、単刀直入に効きました。僕の今やっているメンテナンスに何が足りないのか、を。

それはズバリ「デンタルフロス」「歯間ブラシ」を使うこと。だと。


僕は、普段このタイプの糸ようじを常備はしていたのですが、したりしなかったり。それに、う歯を治療した後の被せ物(クラウン)のところに引っかかってしまい、とても使いづらいと思っていて、正直、嫌気がさしていた。
それを歯科衛生士さんに相談したら、「歯間ブラシ」を勧められました。


どっちでもいいので使ってみて下さい。と。
僕は、その歯科からの帰り道に、すぐ買いに行きましたよ。そして、毎晩、寝る前のブラッシングの後、この歯間ブラシを毎日使うようになりました。

通院しだして2~3回目からでしょうか。歯科衛生士さんは毎回、必ず同じ方(おそらくその歯科ではそういうシステム)ですので、前回の受診の際のお口の中の状況を覚えていらっしゃるので「勝水さん、すごく良くなっていますよ!!」と言っていただけるようになったんです。

その歯科衛生士さんは、何気なくそうされていると思うのですが、称賛の言葉にとても心がこもっていて、それが聞いている僕にも分かるんです。

実はそれって、とっても大切なことなんですよね。

少し話が逸れますが、「スゴク ヨク ナッテ イマスヨ」という言葉ヅラを、ただ言うのと心から言うのとでは、言われた相手への響き方・伝わり方が違うんです(これはある意味テクニックでもあり僕は時々、このテクニックを使います)。

心のこもった称賛というのは、本当に嬉しい(笑)だから、僕も、この歯科衛生士さんに心からの称賛をもらいたいから、また自分で行うメンテナンスを頑張れる(笑)。そうなんです。褒められて嫌な気がする人はいないと思います(逆に褒められると嫌な気になる方は、精神心理的にやや病的であることも…)。


また褒められたい!!!!!


これは人間の正常な反応です。それを利用して「アドヒアランスを良くする」のです。


先日、一通り、メンテナンスが終わったので、初診時のように口腔内の画像を撮って頂きました。そして初診時と並べて見せてもらうと、ズブの素人である僕が見ても、明らかに腫れは引き、歯茎が引き締まっている。もちろん、歯科衛生士さんからも沢山、褒めていただきました(笑)。



この開業歯科医さんの患者さんへの働きかけ方と言うのは、デジカメやディスプレイを使用するというハード面、歯科衛生士さんの効果的な声掛けというソフト面、その両方から僕のセルフメンテナンスのアドヒアランスを向上させた、というお話しでした(笑)。

2023年10月6日金曜日

10月10日は世界メンタルヘルスデー!!

 2023年10月10日は、世界メンタルヘルスデーです!!



世界メンタルヘルスデーとは…
世界精神保健連盟が、1992年より、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定めました。その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)とされています。


シルバーリボン運動とは…
シルバーリボンは脳や心に起因する疾患(障害)およびメンタルヘルスへの理解促進を目的とした運動のシンボルです。シルバーリボン運動は、統合失調症への理解を求める取り組みとして、1993年に米国カリフォルニア州からはじまりました。どんよりとした雲の隙間からこぼれる太陽の光が、銀色に輝き、それが希望の光のようだったことから、シンボルカラーがシルバーとなりました。その取り組みは年月と共に発展し、現在では脳や心に起因する疾患(障害)およびメンタルヘルスへの理解を促進する運動として、脳や心に起因する疾患(障害)に対する誤解や偏見を和らげ、それらを抱えるご本人やそのご家族が前向きに生活することができる社会の実現を目指して、世界規模で展開されています。日本では2002年に福島県の浜通り地方(楢葉町)からはじまり、現在はNPO法人シルバーリボンジャパンが、脳や心に起因する疾患(障害)やメンタルヘルスに関する事柄に対し、多くの方々に目を向けてもらえるよう、毎年10月10日の世界メンタルヘルスデーに合わせて普及啓発イベントを行っています。


今年の『世界メンタルヘルスデー JAPAN 2023』のイベントとして、『#ココロに聞いてみよう!~私たちの日常とメンタルヘルス~』と題したトークイベントが行われます。


当日、会場での観覧申込みはもう、締め切られていました(2023年10月6日時点)が、後日、ホームページにてアーカイブ動画が視聴できるようです。ご興味のある方はぜひ、ご覧いただきたいと思います。



精神疾患をもっと身近に、そしてもしあなたが当事者になったり身近な人が当事者になった時にお役に立つと思うサイトが「こころの情報サイト」です。

比較的、メジャーな?疾患、依存症・うつ病・強迫性障害・摂食障害・双極性障害・てんかん・統合失調症・認知症・パーソナリティ障害・発達障害・不安症・PTSD・不眠症について、病気の特徴や生活する上で発生する困難、治療法についての概要を知ることができます。


もう一つ。
精神障害にも地域包括ケアシステム構築支援情報ポータル」というサイトが厚生労働省から公開されています。こちらのサイトは、どちらかというと「精神障害者支援」に関わっている人向けのサイトですが、今現在、国が精神障害者に対してどのような支援策をとっているのかを知ることができます。



ここで僕から、問題提起させていただきたいと思います。

2017年に「障がい者総合研究所」というところが『障がい者に対する差別・偏見に関する調査』というアンケート調査を行っております。この調査は、身体障害者・精神障害者の方々にインターネットを使った調査で、有効回答数326人という規模の調査結果です。

実はこの調査の前年「障害者差別解消法」が施行されているのですが、それを受けての調査でした。





上の図は、このアンケート結果の一部を抜粋したものです。
そして「身体障害」「精神障害」それぞれの中にも更に細かく分類することができるので、十把一絡げにしてしまうのは、やや乱暴な解釈の仕方だとは思います。いさらに「差別・偏見」に対する基準というのも、各々によって分かれるところだと思いますので、定義が難しいとは思います。そしてどのアンケート調査でもそうなのですが、アンケーとの答えは全て「その人の主観」で答えていて、定量的ではありません。

そのことをある程度念頭に置いてこれらのデータを見ていただきたいのですが、身体障害者・精神障害者ともに約半数の方が「差別や偏見を頻繁に、または時々感じている」と回答しています。

さらに、約半数の方が、偏見や差別を受けているのは「職場だ」と回答されています。

このアンケート調査はやく5年前のものなので、果たしてどこまで変化があったのか、とても知りたいところではありますが、僕が注目したいのは「偏見を受けていると感じているのは職場」というところです。

障がい者であっても、全ての生活を政府が補償しているわけでは有りません。生きていくためのお金が必要です。そして、そのお金を稼ぐためには労働しなければならず、その労働を行う場所が職場です。

職場で偏見・差別を受けていると感じているのであれば、その障がい者にとって、とてもとてもつらい現実であるわけです。お金が必要だから働かなければならない。けれど働く場所である職場で偏見・差別を受ける。辞めることは簡単だけれども、障がい者だから次に働ける場所がすぐ見つかるとも限らない。しかも転職した先の職場でまた同じように偏見や差別を受けるかも知れない。

そう考えると、相当のストレス・ジレンマを感じてしまうのは、容易に想像できることだと思います。


就職先を見つける際、「障害者雇用枠」という雇用条件で就活を行うことができるのですが、大体の企業がこの「障害者雇用枠」での賃金が、一般雇用とは格段に安い。これ、本当です。


この話をしだすと、色々な観点から議論しなければならなくなるので、ここではやめておきますが、障がい者がせめて今働いている職場で、できるだけ長く働けるような環境にしていただきたい。

物理的・金銭的なことだけではなくて、「人間関係」にも焦点をキチンと当てて、社内教育や人材育成を行っていただきたいと思います。

もちろん、障がい者自身も努力し続けなければなりません。「障がい者のキャリア・アップ」という考え方も必要です。



これは僕自身の戒めとしても書かせて頂きました。

最新のblog

 2024年11月28日(木)~30日(土)にかけ、東京において開催された『 第38回日本エイズ学会 』の『POSITIVE TALK 2024』にて、HIV陽性者の当事者としてスピーチをしてきました。まずは、その発表原稿の全文を、こちらでご紹介させて頂きます。 なお、読みやすい...