これは、ボク自身が生物学的に男(雄)であり、経験したことのないことなので、『実体験に基づいて』と言うお話しではありません。けれど、今まで働いてきた中で、コレに苦しむ女性の姿を見てきました。そして今回、どうしてこの様な記事を書こうかと思ったかというと、「一見して“メンタルが原因”の“メンタルの不調”」が実は「“内蔵や臓器が原因”の“メンタルの不調”」と言うケースがあり、心理カウンセラーとしては、それらをキチンと鑑別する必要がある、と強く感じたためです。
今回取り上げるのはPMS(月経前症候群:premenstrual syndrome)とその中でも特に心の不安定さが際立って強く出てしまうPMDD(月経前不快気分障害:premenstrual dysphoric disorder)についてお伝えしたいと思います。
月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)とは…
月経(生理)が始まる3~10日ほど前から身体や心にいろいろな症状が起こる病気です。これらの症状は月経の開始とともに弱まったりなくなったりします。PMSの詳しい原因はまだ分かっていませんが、女性特有のホルモン(黄体ホルモン)の代謝と関係している、と言われています。
では具体的にどの様な症状があるのか、というと
上の図に示した通り、『精神症状』というものもあります。しかしPMSの場合、心理カウンセリングなどの心理療法が効果的か、と言われるとそうではありません。残念ながら。
餅は餅屋。
まずは婦人科を受診して頂き確定診断していただくことをオススメします。
実はボクが理学療法士の養成校の教員をしていた頃、担当していた女性の学生がイライラ感や気分の浮き沈みを訴えてきたことがありました。ただ、本人も月経と関係していると感じていたのか、他の女性教員に相談したようです。女性教員はその学生の同意を得て、ボクにも情報共有してくださいました。彼女は、婦人科を受診し、低用量経口避妊薬(いわゆるピル)を服薬し始めて、かなり症状が改善し、落ち着いて学生生活を送れるようになった、と言う経緯があります。
やっぱり、女性同士でなければ打ち明けづらいこともありますよね。
一方、月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)とは…
PMSの仲でも心の不安定さが際立って強く出てしまう場合は「月経前不快気分障害(PMDD)」と診断されます。PMDDは抑うつ気分、不安・緊張、情緒不安定、怒り・イライラの4症状が中心で、食行動の変化や睡眠障害などの特徴的な症状が月経前に出現することで社会活動や人間関係に支障をきたします。原因や病態についてはまだ完全には明らかにはなっていません。
ちなみに『DMS-5』というのは『Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders』(精神疾患の診断・統計マニュアル)の第5版、と言うもので、アメリカ精神医学会が発行しているものです。第5版が現在で一番、新しいものです。
PMDDに関しても、かなりたくさんの精神症状があり、また、PMSよりもその症状は重度だと言われています。
しかし…
餅は餅屋(笑)。
やはり婦人科で確定診断していただきたいと思います。
現在、PMDDに関しては以下のような治療法があるようです。
1) 症状を抑える治療
症状が軽い場合は対症療法として、情緒不安定に対して精神安定剤、浮腫(むくみ)に対して利尿剤、頭痛・腹部痛に対して鎮痛剤などが適宜用いられます。
2) 抗うつ薬(SSRI)
症状が中等症以上の場合は抗うつ薬が第一選択となります。連続して投与する方法と月経開始前の2週間のみ投与する方法があります。少量の投薬量で早くから効果が得られます。
3) 経口避妊薬
産婦人科では、頭痛や乳房痛などの体の症状の改善のために経口避妊薬などの低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤を用います。最近では黄体ホルモン薬のドロスピレノンと卵胞ホルモン薬のエチニルエストラジオールからなる新しい低用量ピルが、PMDDの症状を軽くし生活の質も改善するとの報告があり使われています。
4) GnRHアゴニスト
卵巣機能を抑制するため月経はなくなり、最終手段の治療となります。女性ホルモンの分泌がなくなるので、更年期障害(ほてり・発汗・不安・イライラ感)や、同年代の人より前倒しに、脂質異常・動脈硬化・骨粗鬆症の病気が起きるリスクがあります。
5) 漢方薬
漢方療法はPMDDに効く可能性があります。体のバランスそのものに働きかけることを期待し、また副作用も少ないので産婦人科診療で用いられることがよくあります。
冒頭でボクは「内蔵や臓器が原因で起こるメンタル不調を心理カウンセラーとして鑑別必要がある」とお伝えしました。
しかし、皆さんに知っていただきたいのは、同じ職場で働く仲間が、もしかしたらこの様な病気や症状で苦しんでいるかもしれない、ということを、ジェンダー・男女関係なく、知っていただきたい、と言う気持ちもありました。
ぜひ参考にしていただければ、と思います。
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