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オンラインカウンセリング「勇者の部屋」の産業カウンセラー勝水のブログです。セクシャルマイノリティ(ゲイ)・身体障害者(HIV陽性者)・精神障害者(双極症)の当事者としての目線と、理学療法士・社会福祉士・産業カウンセラーとしての目線で、今まで経験したことや普段考えていることなど、様々な情報発信をしております。

2023年12月26日火曜日

緊急提言!市販薬をオーバードーズする若者の報道に思う(自死に関する記述あり!閲覧注意!)

最近、テレビのニュースやワイドショー、週刊誌を賑やかしている『市販薬をオーバードーズ(以下、OD)する若者』に関する報道を見聞きし、どうしても看過できないと思い筆を執りました。



つい数日前での報道では、小学生も救急車で搬送されたとか…

この問題の本質はどこにあるだろうか?ボクなりに様々な視点から考察してみた。


①一般的な依存症と一線を引く必要がある。

様々な見解があり、意見の分かれるところかもしれないけど、一般的に『(物質による)依存症』と言うと、違法薬物・アルコール・タバコ・処方薬などが挙げられます。様々な〝依存物質〟を体内に入れ、その薬理効果を体験することになります。

その効果は、精神的依存や身体的依存として表現されますが、例えば普段では得られない快感を味わったり、気分がスッキリしたり、逆に感覚を麻痺させたり、思考を鈍麻させたりする体験をすると思います。

また、その薬理効果が切れた時の反動を、精神的や身体的に味わうとも言われ、それから逃れるために再び摂取する、それを繰り返していくうちにその物質を摂取しなければ生活が成り立たなくなるほどに依存してしまう、と言うものです。

これは依存症者全員に当てはまるかどうかは分かりませんが『死を選ぶためにその手段をとる』と言うよりも『死ぬほどつらいけど死にたいわけじゃない。だけど現実の苦しみを少しでも和らげたい』そんな思いで、依存物質を体内に入れるのではないのかな~と思っているんです。

でも、この市販薬をODする人たちは、『自ら死を選ぼうとしている』ように思えて仕方がないんです。


②市販薬は誰でも手軽に手に入る

『自ら死を選ぶ方法』というのは、日常的に転がっています。

刃物一つあれば良い。
ロープ一つあれば良い。
高いところへ登れば良い。

非常に簡単にその方法を手に入れることが出来ますが、人はできるだけ苦痛を味わいたくない、と言うわがままな生き物です。そのため『より苦しくない方法』を選びがちなのでは、と個人的には思っています。

先日、名古屋大学で開催された「こころの絆創膏セミナー 2023」で基調講演されたピエール・ヴィダイエ先生のお話の中で、「日本では練炭自殺の報道があってから一気に自死者が増えた」と言う、歴史的なお話を聞きました。

ボク自身は体験したことがないので分からないのですが、練炭自殺と言うのはあまり苦しまない方法だと聞きます。また、今はなくなりましたが、睡眠薬を多量に摂取する服毒自殺も、〝眠るように〟と聞いたことがあります。

何が言いたいかと言うと、今の日本ではODに必要な市販薬というのはかなり簡単に手に入り、それほど高価なものではありません。もちろんどれくらいの量を摂取するかにもよりますが。そして、アルコールと違って購入時に年齢制限も関係ない。違法薬物と違って街のいたるところで売っている。そう言う市販薬を使い『一時的にも楽になれる』なら、と思うとその手段を試してみたくなるのは、ある意味、仕方のないことなのかもしれません。


③だからこそODの裏側に隠されたバックグラウンドに目を向けるべき

以下はNHKの公式サイトから引っ張ってきた情報です。

■ODする年齢と性差
平均年齢は25.8歳で、男女別では女性が79.5%と8割近くを占め、男性が20.5%でした。
■職業
職業別では、学生が33.6%と最も多く、次いでフルタイムで働く人が26.2%、アルバイト・パートが16.4%などとなっていて、7割あまりが家族と同居していました。

これはボクの印象なのですが、〝リストカット〟する人や〝食べ吐き〟する人と同じ様な傾向にあると思います。


④報道上の注意。ウェルテル効果を考えて!

ウェルテル効果とは…
マスメディアの報道に影響されて自殺が増える事象を指します。この言葉は、1774年にドイツの文豪ゲーテが発表した代表作「若きウェルテルの悩み」に由来しています。同書の出版後、主人公をまねて同様の方法で自殺する若者が相次いだことに由来し、報道に影響されて自殺者が増える現象を指します。





フロイトは『デストルドー』と言う概念を提唱しています。

これは、精神分析学用語で、死へ向かおうとする欲動のことです。フロイトが1920年代に導入した概念で、死の神であるタナトスの神話に由来する、と言われています。

死というのは、人にとって、ある種の魅惑的な側面を持っていると思います。簡単に言えば「死ねば楽になれる」とか「死ねば何も考えずに済む」など、誰でもその様な感覚というか思想を大なり小なり持っていると思います。

その引き金を引くのは、実はほんの些細なことであったりする人もいますし、そうでない人もいます。けれど「自ら死を選ぶ選択」と言うのは、誰しもが知っている方法で、人によってはその選択肢を選ぶことは『非常に簡単だ』と思っている人もいます。

そこで注意していただきたいのが『ウェルテル効果に配慮した報道の仕方』です。
例えば、『どんなモノを』『どれくらいの量』『どこで手に入れ』『どの様な場所で』など、具体的な自死の方法を明確にして報道しない、と言うことと、自死を称賛するような、また美徳化するような価値観を付け加えることを、絶対にしてほしくないのです。


『自ら死を選ぶ選択』というのは悲劇しか産みません。
「死にたい」と思えるほど苦しい気持ちを抑える必要はありませんし、むしろそれは適切な支援者と共有すべきことですが、必ず誰かが手を差し伸べてくれると信じてほしいのです。



あなたの身代わりにはなれませんが、あなたに寄り添うことはできます。





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